2002.10.17

No.52 自由の代償

ジーコジャパンの初戦ジャマイカ戦、ついにキックオフされました。
注目はなんといってもマスコミが『黄金のカルテット』と騒ぎ立てた中盤ですが、あまりにも本家に失礼なので、ここでは使いません。

それでも、この4人が同時にピッチに立ち、しかもある程度の決まり事はあるものの自由にプレーしていいなんて、トルシエ時代には考えられなかったこと。特に、トルシエ時代には左サイドで窮屈な仕事をさせられていた小野は、やっとその呪縛から解き放たれたかのように、ほんとに楽しそうに伸び伸びとプレーしていました。
小野が日本でもオランダでもファンの心を掴んで離さないのは、楽しそうにプレーしているそのことが見ている方にも一発で伝わってくるところ。しかし、トルシエ時代の彼にはそれが見られませんでした。昨日の楽しそうにプレーする小野をトルシエが見ていたとしたら、果たしてどう思ったでしょうか・・・。

得点も小野。自らのパスカットから、中田、高原と中央を突破し、最後は右サイドでフリーになっていた小野がゲット!W杯でのロナウジーニョ→リバウドを彷彿とさせる素晴らしいゴールでした。
あぁこれで、いろんなことに縛られたトルシエの時のサッカーから解き放たれて、自由に楽しいサッカーで、見ている方も、やっている方も最高のサッカーを見せてくれるのかぁとおおいにワクワクさせられましたが、ここからは“自由”の悪い面が顔を出し始めました。

自由にパスを回すのはいいんですが、それまでなんです。いくら華麗にパスを回しても何の意味もないのがサッカー、サッカーは点を入れるスポーツです。しかし、中盤でパスが回っても、中盤と前線の2人の間には、大きな隔たりがあるように感じられました。

ジャマイカだからこそ中央を突破できましたが、相手のレベルが上がればあんなことは許してくれません。レベルの高い相手から点を取るには、まずはセットプレー。これは世界のトップレベルでも同じことが言えます。近年のサッカーでは、ガチガチに固めてスコアレスドローを狙おうと思えば、それなりのレベルのチームならみんな出来ます。そんな中、得点の大半はセットプレーからです。

流れの中では、まずは圧倒的な個人技。W杯の時にも書きましたが、あのアルゼンチンが圧倒的な攻撃力で攻め続けながらびくともしなかったスウェーデンの鉄壁の守備を破ったのは、たった1人の、アンリ・カマラの個人技でした。
これまたアルゼンチンの猛攻にもびくともしなかったファーディナンド率いるカテナチオ21世紀スペシャルを粉砕したのは、ロナウジーニョという稀有な才能でした。
このように、鉄壁の守備を破るのはまずは個人技、そして中でもドリブルです。いくら、鉄壁の守備を敷いても、1対1で抜かれてはそこに大きな穴が空いてしまうからです。

しかし、どのチームにもロナウジーニョがいるわけではありません。そうなると、アルゼンチンはなぜスウェーデンやイングランドから得点できなかったのでしょうか。ナイジェリア戦にしてもコーナーキックからですので、流れの中では取れてません。
それは、猛攻に見えて、実は中央からのゴリ押しに過ぎなかったからです。いくら中央から力に任せて攻めても、スウェーデンや、ファーディナンド、キャンベルと文字通りの壁が立ちはだかるイングランドの前では全部跳ね返されて終わりです。
一見猛攻に見えるだけで、守っているほうとしては、体力の消耗はするものの、0で抑えることはそう難しいことではありません。

それでは、アルゼンチンに足りなかったものは何なのか。それは、サイドからの攻撃です。セットプレーを封じられ、圧倒的な個人技を持たないチームが得点する最大の武器はサイド攻撃しかありません。
例えば、ネスタやカンナヴァーロなどワールドクラスのDFは正面からの1対1では無敵を誇ります。カンナヴァーロが正面からのハイボールに競り負けるのを見るのは難しいことですし、ネスタがあっさり1対1で抜かれるシーンを探すのも難しいでしょう。

そんな1対1で無敵を誇る彼等でも、サイドからのクロスボールに対して、味方との連携が乱れ、ちょっとしたポジショニングミスから失点してしまうということは、ない話ではありません。そこでは完全な1対1という勝負にいろんな要素が加わってくるのです。飛び出すかもしれないキーパーとの連携、味方DFとの連携、そしてオフサイドトラップをしかけるか否か、このように、いろんなことをDFに考えさえ、そしてミスを引き起こすのもサイドからのボールです。

世界の強豪チームは、強烈なサイド攻撃を持っています。
まずはマドリー、フィーゴ、ジダンの個人技だけでも十分に突破できるのに、後ろからミチェル・サルガド、ロベルト・カルロスが猛然と上がってきます。
お気に入りマンUにはご存知ベッカムにギグス。
最近よく取り上げていますベティスにはこれまたワールドクラスのサイドアタッカーであるホアキンとデニウソンが両サイドから猛然と襲い掛かります。
さらに、アーセナルには復帰目前のピレスに、今やアーセナルには欠かせない存在となったリュングベリ、そしてヴィルトールまでいます。
バルセロナには、こちらも今は出ていませんが、2、3人は軽く相手にできる左サイドのライン際の仕事人オーフェルマルス、右サイドにはスペインに帰ってきた右サイドの達人メンディエタ。
昨年チャンピオンズリーグで破竹の快進撃を続けたレヴァークーゼンでは、左ゼ・ロベルト、右シュナイダーがこれまた両サイドから猛然と攻めかかりました。

このように、チャンピオンズリーグ優勝を狙えるようなチームにはそれぞれワールドクラスのサイドアタッカーがいます。
そして、フィーゴがいい例ですが、味方は彼が1対1で必ず勝つと信じてゴール前に詰めてきます。フィーゴがサイドでの勝負に勝っていいクロスを上げてくれると信じられるからこそ、前線の2人はもちろんのこと、逆サイドのジダン、そしてカンビアッソあたりまでもがゴール前に雪崩れ込んで来れるのです。これは、フィーゴが1対1ではまず勝つということが前提になっています。
そして、サイドからの攻撃は実際に点が入るかどうかは別として、点が入りそうな“予感”は十二分に感じさせてくれます。先ほど書いたように、サイドからの攻撃に対してはDFはすることが多いため、何が起こるかわからないのです。正面からの攻撃にはハイボールは跳ね返せばいいですし、ドリブルでもワールドクラスのドリブラーでさえ今や正面突破は難しいでしょう。そして、DFラインの前でパスをいくら回されたところで怖くもなんともありません。

このように、サイド攻撃は圧倒的な個人技がないチームにとって、セットプレー以外で唯一といっていいほど得点に結びつくチャンスなんですが、昨日の日本は先ほどの、“怖くもなんともない”攻撃でした。パスは確かに回ります。しかし、それだけでした。

昨日の日本のフォーメーションは、わかりやすくしてしまえば4-2-2-2でしたが、同じフォーメーションなのはマドリーです。しかしこれが可能なのは、中盤の前2人フィーゴにジダンが、1人なら8割方、2人を相手にしても半分くらいの確率で勝てる圧倒的な突破力をもっているからであって、同じことを俊輔と中田に求めるには無理があります。彼等ももちろん日本の中ではずば抜けた才能の持ち主ですが、タイプの問題であって、サイドを個人で突破できるタイプではありません、特に俊輔はそうです。

残念ながら日本には世界に通用するサイドアタッカーは今のところいませんが、唯一その可能性を感じさせるのが三都主です。彼を使わない手はありません。
4バックなら4-2-3-1でダブルボランチに稲本、小野、3のところは右から中田、俊輔、三都主で、中田はFWに近い形でプレーをさせ、そのスペースはボランチがカバー、三都主はボールを持ったらまずは縦勝負、相手のレベルが上がっても5割くらいの確率で勝負になるでしょう。
そして、俊輔にはトップ下で自由にプレーをさせ、彼が前を向いたときには、高原、中田、三都主と、少なくとも3つの選択肢ができるようにするのです。

3バックなら3-5-2で、ダブルボランチは同じく稲本、小野。そしてトップ下は同じく俊輔で、サイドハーフは右市川、左三都主。2トップは高原と中田。今の日本には、悲しいかな高原以外に中田に勝るFWはいません。

このように、俊輔をトップ下のプレーに専念させ、三都主に左から果敢に1対1を仕掛けさせ、中田にはもっとシュートを打ってもらう、これが今の日本が得点を取るためには最善の策ではないかと思います。

そして、このチームにあって最重要人物は中田でも、小野でも、俊輔でもなく、間違いなく高原。1対1で勝てるFWがいないチームは勝てません。日本で唯一1対1で勝負を仕掛けていけるFWは高原です。アルゼンチンに行って、「FWは点を取らなければ何の価値もない」という当たり前の真実を身をもって体験してから、人が変わったように強引なまでに点を取りに行くようになった高原。これこそが、これまでの日本のFWに一番欠けていたものでした。
柳沢は「点を取るだけがFWの仕事ではない」と公言していますが、これは何百点も取っているストライカーが初めて口に出していい言葉であって、たいして点も取っていないのにそんなことを言っているようでは彼はそこまででしょう。
現に、W杯前のイタリアとの親善試合の頃は日本のエースは柳沢で決まりといったムードでしたが、今や高原と柳沢の間には歴然とした差があるように思えます。技術は柳沢の方があるかもしれませんが、相手にとって“怖い”のは圧倒的に高原です。

そういう意味で、昨日の高原にはもう少し強引さが欲しかった。確かに中盤がボールを回すことに終始してしまったため、彼が個人で勝負するような局面がなかなかなかったのも事実ですが、彼には、“黄金のカルテット”などと騒いでいるマスコミを黙らせ、スポーツ面の1面に“高原体ごと押し込む!”という見出しをつけさせるくらい、もっともっとわがままになってもらいたいです。

あと、一つ気になっているのは、ジーコが「練習のための召集はしない」と言っている点。先ほど書いたサイド攻撃の精度を上げるにはこのメンバーでの反復練習しかありません。ジャマイカだったからこそ個人技でなんとかなりましたが、相手のレベルが上がった時も、同じように練習もたいしてせず選手に任せるんでしょうか。それでは結果は見えています。
中田や俊輔が個人技で勝てない相手などざらにいます。そういう相手と向き合った時、対抗できるのは反復練習に基づいたチームプレーでのサイド攻撃しかありません。絶好調時のマンUを見ているとよくわかりますが、ベッカムやギグスがサイドでボールを持ったとき、前線の2人、そしてスコールズやキーンやバット、5、6人が連動して見事としかいいようがない動きをしています。これは特に中盤の連中は若い頃からずっと一緒にやってきたのが大きいですが、何千回、何万回と繰り返されて体に染み付いて動きだからこそ。そういう意味で、練習のための召集はしないと言っているジーコには多いに疑問です。
あのブラジルが予選で苦戦したのは、選手がみんなヨーロッパで活躍していて、チームとして練習する時間があまりにも短かったことが原因と言われています。彼等にはそれを補って余りある個人技があったわけですが、それがない日本に同じことはできません。

最後に、初戦、そしてチームとしての練習不足、俊輔を筆頭に欧州組のコンディション不足と、チームとしてのプレーがいまいちだったのは仕方ない面もありますが、個人個人にゴールに対する執念が感じられなかったのが一番残念でした。相変わらずペナルティエリアに入ってもパスを回しますが、なんで打たないんでしょうか・・・。親善試合だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが、年内はこれを含めて2試合しかないわけですし、もっと気持ちを前面に出した試合を見せてほしかったです。

 

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