2008.05.19

『あるスキャンダルの覚え書き』(リチャード・エアー)

あるスキャンダルの覚え書き

「誰もが私に秘密を打ち明ける、私は誰に打ち明ければいい?」

今回は、凄まじい演技の火花が飛び散る、『あるスキャンダルの覚え書き』です。

一発の銃弾も、一滴の血も流れないのに、この圧倒的な緊迫感。

あるスキャンダルの覚え書き ケイト・ブランシェット ジュディ・デンチ

ある学校に新たに赴任してきた美しい美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)。

そんな彼女に目をつけた、定年間近のオールドミスの歴史教師バーバラ(ジュディ・デンチ)。

やっていることは、一言で言ってしまえばストーカー(ちょっと違うか)なわけですが、異常だと思う反面どこか理解もできてしまう。
その根本にあるのは、バーバラの孤独。圧倒的な孤独。

教師という世間的には一目置かれる地位にありながら、仕事への情熱はとうの昔に冷め、心を許せる相手はおらず、その体に触れられたことはただの一度もない。

ジュディ・デンチの、見たくもない入浴シーン(笑)での、「バス運転手の手がたまたま軽く当たっただけで、下腹部が熱く疼く」の台詞の凄み。

一方、シーバもまた孤独を抱えていた。

20歳の時、妻子ある教師と関係を持ち、そのまま結婚。
もはや初老の域に入りかけている夫、わがままな娘に、ダウン症の息子。

この10年、息子の世話だけに全てを捧げてきた。
夫と子供二人、幸せじゃないわけじゃない、でもこれが夢見ていた生活なのか?

「地下鉄のホームと電車の隙間みたい、つまり、埋めがたい空白よ、夢見た人生と、現実の人生とね」

そんなシーバは、若い生徒の誘惑を拒みきれず、一線を越えてしまう。
それを目撃してしまったバーバラ。

ショックを受けつつも、絶好のチャンスだとほくそ笑むバーバラ。

誰にも言わない代わりに、貸しを作り、二人だけの秘密を共有する。

そして、シーバが約束を破った時、バーバラの狂気が炸裂する。

自分の仕業だと気づかれないようにシーバを追いつめ、“頼れるのは自分しかいない”という方向にもっていくバーバラ。

“全て”をシーバが知った時、決戦の火蓋が切って落とされる!

って別に殴り合いが始まるわけではありませんが(ビンタはありますが)、ここまで一方的に押されっぱなしだったケイト・ブランシェットが、ついに反撃を開始する。

イギリス女王同士のガチンコ対決。
その軍配はいかに?
って何の映画かわかりませんね(笑)

むちゃくちゃ怖いジュディ・デンチの上手さは今さら書くまでもないですが、そんな大先輩に真っ向から挑んでいるケイト・ブランシェット。

30代半ばの設定で(実年齢通り)、15歳のガキをイチコロにさせる魅力を振りまきながら、抱えている孤独も見事に滲ませ、いったんスイッチが入れば、あのジュディ・デンチすら圧倒する。
そういう設定なだけで、ジュディ・デンチが本気で凄み返したら一瞬でひれ伏しそうですが(爆)

それに何より、彼女が圧倒的に美しい。
20代の女優が絶対に出せない、大人の女性の美しさ。
あんな先生が赴任してきたら、そりゃ生徒が惚れるのも無理はない(笑)

他では、彼女の夫に、“デイヴィ・ジョーンズ”ことビル・ナイ。

あるスキャンダルの覚え書き ビル・ナイ ケイト・ブランシェット

考える時間が欲しいと、いったんシーバを家から出て行かせた時の、「なぜ、私を頼らなかった?“孤独よ、助けて”と一度も言ってくれなかった。サエない夫だけど、君のそばにいたのに」なんかいいなぁ。

この映画、これだけの濃厚なドラマを描きながら、わずか92分。無駄なシーンは一切ありません。

そして、最後まで観た時気づくのです、実は一番怖いのはタイトルだったんだと。

あるスキャンダルの覚え書き

sはscandalではなくnoteについていたんだと。

この映画、アメリカで実際に起きた事件を元に書かれたベストセラーが原作。
それをイギリスに舞台を移したわけですが、生徒がシーバに言った「“ザ・ストリーツ”は好き?」のたった一言で、もう完全にイギリス。こういう細かいところも巧い。

名優二人を得て、一級品のサスペンス。





[原題]Notes on a Scandal
2006/イギリス/92分
[監督]リチャード・エアー
[撮影]クリス・メンゲス
[出演]ジュディ・デンチ/ケイト・ブランシェット/ビル・ナイ

→予告編 →他の映画の感想も読む

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「Dry Your Eyes」The Streets

 

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*Comment

■>けろにあさん

自分も普段ならあまり食指が動かないタイプの映画ですが、この組み合わせでつまらないはずはないだろうと思ってみてみたら、やっぱり凄かったです。
緊迫感は確かに凄いですが、想像の範囲内に収まるかと思いますが、入浴シーンは、軽く想像の域を超えていると思いますよ(笑)
micchii |  2008.05.22(木) 10:17 |  URL |  【コメント編集】

■すごい組み合わせ

micchiiさん、こんばんは。
うわ~、こんなすごいキャストの作品があったんですね。
女性が主人公の作品には食指が動かぬタチなもので、ぬかっておりましたが、この組み合わせなら別ですね。
見たいですー。
でも、想像するだに凄そう(^^; 入浴シーン…じゃなくて緊迫感が。
けろにあ |  2008.05.20(火) 23:16 |  URL |  【コメント編集】

■>hi-chan

名優同士のガチンコ対決、見応え十分でした。
ケイト・ブランシェット、ほんとに綺麗でした。優ちゃんとはまた違う、大人の魅力にノックアウトされました(笑)
問題の入浴シーン、確かに台詞は重要ですが、必ずしも風呂で言う必要はないですよね。
頼んだ監督も、受けたジュディ・デンチも凄すぎます(笑)
micchii |  2008.05.20(火) 17:26 |  URL |  【コメント編集】

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットの演技が良かったですね~。ちょっと怖かったですが(笑)。
この映画で、ケイトがすんごく綺麗だったことを覚えてます。目立ってました。
ジュディ・デンチの入浴シーン、私は目が点になりました(笑)。
hi-chan |  2008.05.19(月) 16:44 |  URL |  【コメント編集】

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