2008.04.23

『ザ・ドライバー』(ウォルター・ヒル)

ザ・ドライバー

「仲良くしよう、ここはお前の友達に聞いた」
「友達はない」
「悲しい歌は今年は流行しないぞ」

今回は、ウォルター・ヒル初期の名作『ザ・ドライバー』です。

強盗犯などが現場から逃げる際の、プロの逃がし屋にライアン・オニール。
パトカーが何台も出動し、取り囲んだように見えても、余裕でその上をいき楽々と逃げきる、超一流の腕前。

かなり長い時間が割かれている、カーチェイスシーンも本作品の大きな見所。

しかも、ただぶっ飛ばすだけがカーチェイスだけじゃないとばかりに、終盤の倉庫のような場所でのカーチェイスが秀逸。
西部劇で、向かい合っての早撃ちの決闘ではない、隠れて様子を伺いながらの一騎打ちがありますが、あれの車バージョン。
とはいっても、最後は真っ正面からフルスロットルですが。

何度も彼に痛い目に会わされている警察の中で、逮捕に執念を燃やす一人の刑事にブルース・ダーン。
執念を燃やすと言っても、彼自身が言っているように、ゲーム感覚に近く、いかにして相手の上をいけるか、それを楽しんでいる感じ。
負けるのは何よりも嫌いなので、時に凄みを見せますが。

警察=善、犯罪者=悪という単純な構図で捉えたり、役者の名前から考えるなら、このキャスティングは逆でしょう。
『ある愛の詩』のライアン・オニールと、『ブラック・サンデー』の“あの”ブルース・ダーンですから(笑)

それをあえて逆にした時点で、この映画は半分成功したようなもの。
孤高でクールなライアン・オニールのかっこよさ。
ただの善良な刑事ではない、男と男の戦いに執念を燃やすブルース・ダーン。

ザ・ドライバー ライアン・オニール ブルース・ダーン

ただ、この二人だけではさすがに少し弱い。

そこでもう一人。
二人の対決に絡んでくる、謎の美女にイザベル・アジャーニ。

ザ・ドライバー イザベル・アジャーニ

ここまで揃えば十分。

この映画、3人についての詳しい背景について、細かく説明していないところがいい。
背景どころか、3人には名前すらありません。
エンドクレジットを見ればわかりますが、3人の役名はそれぞれ、“The Driver”“The Detective”“The Player”。

それでいて、3人が生きてきた人生は、それぞれの立ち振る舞いに十二分に滲み出ていて、説明過剰な映画が氾濫する最近のことを思えば、さすが70年代の映画。

ラストの巧い終わり方にもあるように、死力を尽くして腕を競った二人も、ロサンゼルスの夜の闇に生きる一人の人間に過ぎない。
“The Driver”であり“The Detective”である二人ですが、それ以上でもそれ以下でもなく、名前は確かに必要ない。

また別の場所でも、別の“The Driver”と“The Detective”は腕を競い合っていることでしょう。

主役ですら脇役でしかなく、真の主役はロサンゼルスの夜の闇。

ザ・ドライバー ウォルター・ヒル

その闇を見事に切り取ったのは、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』『シンシナティ・キッド』などの、名手フィリップ・H・ラスロップ。

まだ存分に切れ味が残っていた頃のウォルター・ヒルによる、西部劇の香りのする痺れる映画。

“西部劇の香り”って前にもどこかで書いたなぁと思ったら、1978年ということは、同じく西部劇を車でやった、師匠サム・ペキンパーの『コンボイ』もこの年ですね。



[原題]The Driver
1978/アメリカ/91分
[監督・脚本]ウォルター・ヒル
[撮影]フィリップ・H・ラスロップ
[出演]ライアン・オニール/イザベル・アジャーニ/ブルース・ダーン

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
ウォルター・ヒル監督『ザ・ドライバー』の系譜にある映画たち
『ドライヴ』(ニコラス・ウィンディング・レフン)
『ドライヴ』を観て思い浮かんだ映画のサントラ
『コンボイ』(サム・ペキンパー)

 

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*Comment

■>tonboriさん

なるほど、わかる人にはわかる明らかな記号があったんですね。
ピースメーカーという名前はよく聞きますが、見分けはさっぱりつきません(笑)


“Glasses”“Teeth”“Fingers”などなど、確かに誰にも名前はありませんでしたね。
“The Connection”もいい味出してました。
micchii |  2008.04.24(木) 14:03 |  URL |  【コメント編集】

■>りざふぃさん

この前から偶然が続いておりますが、ほんとにびっくりでした・・・。

>「なるほど~」上手いこと言うな~と感心してしまいました。

そう言っていただけて嬉しいです。
もちろんカーチェイスも大きな見せ場ですが、多くを語らない、主役ですら脇役に過ぎない、その空気が何よりも魅力的でした。

ハードボイルド!、その言葉が出てこなかったんです(笑)
だからこそフィルム・ノワールと書いたんですが、フィルム・ノワールとはまたちょっと違いますからね。

イザベル・アジャーニ、実はあまり観ていないんですが、『王妃マルゴ』は強烈でした。
自分の中のアジャーニのイメージはほぼこの映画で固まってます(笑)
micchii |  2008.04.24(木) 13:58 |  URL |  【コメント編集】

■もろ西部劇です

というのも銃オタからすればドライバーの使う銃がコルトSAA、いわゆるピースメーカー(しかもこの人仕事に銃はいらねえ主義なのに!)であるところからも明らかなんですよ(^^;
とオタ話ではありましたが劇場で鑑賞した時かぶりつきで観たのが懐かしいです。
ちなみに他の登場人物も名無しでクレジットが眼鏡(グラス)とか、そこも痺れますねー。
tonbori |  2008.04.24(木) 00:09 |  URL |  【コメント編集】

■TB有難うございます!

こんばんは~^^
こちらからもTBさせて頂きました。

コメントも有難うございます!
読んで私もビックリ(゚O゚;アッ!でした(笑)
なんという偶然…最近公開中やレンタル屋にも沢山並んでいるような比較的新しい映画とか・・・ならまだ分かりますが、この映画は1978年ですよ!
いきなり重なるなんて・・・ホントビックリです(^^;

この映画はカーチェイスがスゴくって間違いなく最大の見所だと思いますが、↑でmicchiiさんがおっしゃってる

>ラストの巧い終わり方にもあるように、死力を尽くして腕を競った二人も、ロサンゼルスの夜の闇に生きる一人の人間に過ぎない。

…というところを読んで、「なるほど~」上手いこと言うな~と感心してしまいました。

やっぱこの映画って、めちゃハードボイルドしてますよね(^0^)

アジャーニさんは、ずっと昔からファンなのですが…やっぱこの方は「魔女」だと思います(笑)
りざふぃ |  2008.04.23(水) 23:06 |  URL |  【コメント編集】

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THE DRIVER 【1978年製作 アメリカ】( 91min ) 監督:ウォ
2008/04/23(水) 22:48:03 | No one\'s perfect

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