2007.11.20

『眼下の敵』(ディック・パウエル)

眼下の敵

過去記事をパラパラ見ていたら、もう何ヶ月も痺れる映画をUPしていないことに気づき、これはいかんと。

というわけで今回は、潜水艦映画の大傑作『眼下の敵』です。

Uボートに貨物船を沈められ、目の前で新婚の妻を亡くした男。

息子二人を戦争で亡くしたUボートの艦長。

第二次大戦中、南大西洋上で出会った二人は、己の頭脳と信頼できる部下だけを頼りに、好敵手との出会いを喜ぶかのように死闘を繰り広げる…。

米駆逐艦vs独Uボート。
その方面のマニアの方には、唸る描写も多々あることでしょう。
または、粗もたくさん見つかるでしょうか。

自分は、幸か不幸かその方面はさっぱりなので、単純に人vs人として楽しめるのが幸いなところ。
ただでさえ“人”に焦点を合わせてはいますが。

“人”ということについてはまず、これほど味方と敵を対等に描いた戦争映画もそうはないでしょう。
程度の差こそあれ、ほとんど全ての戦争映画では、敵の描写はひどいものです。
一昔前のアメリカ映画における日本兵が典型的ですが。

その点、この映画におけるアメリカ軍とドイツ軍は全く対等です。
よくあるナチス=極悪人というのとは全く違います。
1957年という製作年を考えると、これはかなり凄い。

そんな対等に描かれた、二人の艦長がこの映画の主役です。

初めは民間人の素人とバカにされながら、魚雷をかわしたことで一発で部下の信頼を得た米駆逐艦の艦長ロバート・ミッチャム。

眼下の敵 ロバート・ミッチャム

一時間置きに続く爆雷に、神経がおかしくなり始めた部下を、「死も任務の一部だが、我々は死なない。信じるか、私を信じるか」と鼓舞する、前大戦からの叩き上げであるUボートの艦長クルト・ユンゲルス。

眼下の敵 クルト・ユンゲルス

1957年の映画なので、『クリムゾン・タイド』あたりと比べると素人目にも装置や兵器はたいしたことなさそうですが、その分ハイテクに頼らない“頭脳戦”をたっぷりと堪能させてくれます。(『クリムゾン・タイド』の出航前の役者当てクイズにこの映画が出てきましたね)

感覚としては、『沈黙の艦隊』の海江田vsベイツ大佐みたいな感じでしょうか。(あれは潜水艦vs潜水艦ですが)
“空城の計”が、相手が自分を認めているからこそ成立するように、相手を“できる奴”と認めた上で、その一歩でも半歩でも先を行こうと知恵の限りを絞る。

それでも前大戦よりは格段に兵器も進化しているようで、ユンゲルスは「人間的な過ちは失せ、戦争から人間味が失せた」と嘆いていました。

『沈黙の艦隊』といえば、海江田はモーツァルトを流しましたが、今回のドイツ軍はレコード+大合唱。
『カサブランカ』の「ラ・マルセイエーズ」にも負けない屈指の名場面。


ニヤリと笑い、「ワルツの伴奏をしよう」と爆雷を浴びせるミッチャム。
いいですね~こういうの。

先ほど兵器はたいしたことなさそうと書きましたが、国防総省と合衆国海軍全面協力の下、駆逐艦も爆雷も本物のようです。

Uボートは海底で、駆逐艦は洋上でエンジンを停止し、我慢比べをしている時の静寂。
駆逐艦の隊員が暇つぶしにしていた釣りの、釣り糸をカメラが追い海中に入ると、真下にUボートがいるシーンなんかたまりませんね。

敵対する者同士に芽生える友情といえば、トーさんの十八番ですが、『ヒーロー・ネバー・ダイ』『暗戦 デッドエンド』を足しても、この映画のラスト10分にはかなわないでしょう。
“敬礼”から後はもう痺れまくり。

痺れる男同士の友情を描いて、“仕草”の最高峰が『さらば友よ』のラストシーン、“笑顔”の最高峰が『ガンマン大連合』のトーマス・ミリアンなら、“会話”の最高峰はこの映画のこのやりとりでしょう。

「では今度はロープを投げるまい」
「いや、投げるね」

眼下の敵 ロバート・ミッチャム クルト・ユンゲルス

ご覧になったことがある方には通じるかと思いますが、このかっこよさは尋常ではありません。

文字通り女性が一人も出てこない、海の上での男と男の闘い、そして友情。

文句なしの大傑作。



[原題]The Enemy Below
1957/アメリカ/98分
[監督]ディック・パウエル
[出演]ロバート・ミッチャム/クルト・ユンゲルス/セオドア・バイケル

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
“男ならこれを吐け!”BEST10
『クリムゾン・タイド』(トニー・スコット)
『カサブランカ』(マイケル・カーティス)

 

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*Comment

■>samurai-kyousukeさん

恥ずかしながら「Uボート」は未見です。
TSUTAYAで何度か手に取ったものの、「209分」に恐れをなしいまだに踏み出せません(笑)
クルト・ユルゲンスの艦長はほんとに最高でしたね。部下のハイニもいい味出してました。
micchii |  2007.12.04(火) 13:05 |  URL |  【コメント編集】

■傑作

「Uボート」と「眼下の敵」の2作品は潜水艦映画の傑作ですよね。私の戦争映画ベスト10にも顔を出しそうです。クルト・ユルゲンスの艦長は最高です。
samurai-kyousuke |  2007.12.03(月) 09:17 |  URL |  【コメント編集】

■>ゴーシュさん

お久しぶりです、こちらこそご無沙汰しております。

『深く静かに潜行せよ』は未見ですが、これも『クリムゾン・タイド』のクイズに出てきましたね。
潜水艦ものとしては同じく真っ先に名前が挙がるくらい有名ですし、そのうち観てみようと思います。


>男気か,優ちゃんか.

なら迷うことなく優ちゃんですが、それだけでもダメだろと(笑)
micchii |  2007.12.01(土) 18:12 |  URL |  【コメント編集】

■>tonboriさん

フォローありがとうございます。
今まで外れがないといっても、考えてみたら数えるほどしか観ていませんでした。
これから少しくらいは外れに出会っていきそうです。
micchii |  2007.12.01(土) 18:07 |  URL |  【コメント編集】

■男気か,優ちゃんか.

こんばんは.モグラな生活より脱しつつあるゴーシュです.
ご無沙汰しております.

小生は「深く静かに潜行せよ」も好きで,この「眼下の敵」同様,
この時期の潜水艦の戦いは面白いです.
現代と違い,定期的に排気のために浮上しなければならない
この時分の潜水艦は非常に映画的!
もちろんソナー合戦も面白いですが,船のように引き波を立てながら進む
Uボートの雄姿もスリリングでカッコイイっす!!

>> 一応メインカテゴリーですので

男気と優ちゃんの間で揺れるリアルなmicchiiさんの葛藤が既に,
“男ならこれを観ろ!”だと思いますよ.(笑)

ゴーシュ |  2007.11.29(木) 00:04 |  URL |  【コメント編集】

■まあコピーとしては

アリだとは思いますが、それこそ沢山ありますからね。
但し基本的には面白い比率が非常に高いですよ、念のため。
tonbori |  2007.11.28(水) 00:24 |  URL |  【コメント編集】

■>tonboriさん

>潜水艦映画にハズレなし

これ、書こうと思ったんですよ。
自分が今まで観た中に外れはありませんでしたが、やめておいてよかったですかね(笑)
micchii |  2007.11.27(火) 15:04 |  URL |  【コメント編集】

■潜水艦映画にハズレなしとは申しますが

いや、まあそりゃあいろいろあります。
だけどハズレ無しの伝説を作ったのはコレではないのだろうかと密かに思っております。
とりあえず軍モノ、海モノ、潜水艦モノとしても最高傑作、妙に媚びてない姿勢もグーですよね(^^)b
tonbori |  2007.11.21(水) 01:31 |  URL |  【コメント編集】

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