2007.04.07

『サムライ』(ジャン=ピエール・メルヴィル)

サムライ

今回は、“男ならこれを観ろ!”(まだまだ募集中です!)に投稿していただいた中から、きのこスパ様にじばぶ様ご推薦、フィルム・ノワールの最高峰『サムライ』です。
御二方、ありがとうございます!
ずっと観たかったんですが、ようやく観れました。

孤独な殺し屋、ただ一つ必要とされることを願った愛人、謎めいたピアニスト、主に危険を知らせる唯一の友である小鳥、弾の入っていない拳銃、百戦錬磨の刑事、依頼主の裏切り、そして第二の依頼。

ブルートーンで統一された、孤独を滲ませたあまりに美しいアンリ・ドカエのカメラ、動きに完璧にシンクロした、フランソワ・ド・ルーベの哀しき旋律。

そして何より、アラン・ドロンのかっこよさが尋常ではありません。

サムライ アラン・ドロン

脇を固める、ナタリー・ドロン、フランソワ・ペリエも素晴らしい演技をしていますが、とにかくアラン・ドロン、今まで観た中で(少ししか観てませんが)ダントツにかっこいい。

刑事たちの尾行をまくために、この映画では、アラン・ドロンはひたすら歩きます。
しかも、他の映画ではちょっと考えられないくらい、歩くシーンが凄く長い。
もちろん、その間台詞は一言もありません。

普通ならそんなシーンばかり続いたら飽きちゃいますが、飽きるどころか、上映時間105分全て歩くシーンでもいいくらい、どのシーンを切り取っても絵になるかっこよさですし、足音の一つ一つがどんな言葉よりもジェフの心を雄弁に語っています。

中でも白眉は、鉄橋の上をある男目掛けてジェフが真っ直ぐに歩いてくるシーン。
『第三の男』のラストシーンにも匹敵する、鳥肌ものの極上の名場面。

サムライ メルヴィル

このように、この映画は台詞が極端に少ない。
これはジョニー・トー監督のノワールものにも言えることですが、台詞に頼らず“絵”で見せるこの姿勢が何より素晴らしい。

ビデオで観たんですが、仮にテレビの音を消してサイレント映画として観たとしても、何一つ不自由することはないでしょう。(もちろん、前述の足音と、その足音と見事に調和しているド・ルーベの音楽があればよりいいですが)

『白い花びら』を撮るに際してカウリスマキが言った言葉を思い出しました。
「シネマのエッセンスは言葉のない世界だから、そこに回帰したかった」

もう一つ触れておきたいのが、『あるいは裏切りという名の犬』の時に書いた、フィルムノワールの出来の物差しである“濡れた石畳”、さすがアンリ・ドカエ、絶品でした。

2007年は『放・逐』がぶっちぎりのベストワンだと思ってたのに、ジャン=ピエール・メルヴィル、アラン・ドロン、アンリ・ドカエ、フランソワ・ド・ルーベと揃えば、そりゃ傑作にならない方が嘘でしょうが、『放・逐』に負けず劣らず素晴らしい。
まあトーさんにはかなり贔屓目が入っているので、客観的には『サムライ』の方が断然凄いのかも。

これでますますジョニー・トー×アラン・ドロンが楽しみになってきました。
惜しむらくは、この1967年当時のアラン・ドロンをトーさんに監督して欲しかったなぁ…。



[原題]Le samouraï
1967/フランス/105分
[監督]ジャン=ピエール・メルヴィル
[撮影]アンリ・ドカエ/ジャン・シャルヴァン
[音楽]フランソワ・ド・ルーベ
[出演]アラン・ドロン/ナタリー・ドロン/フランソワ・ペリエ

→予告編 →他の映画の感想も読む

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*Comment

■>にじばぶさん

改めて、お薦めありがとうございます。
これでまた、“にじばぶさんのお薦め映画にハズレはない”神話は続きますね(笑)

小鳥はほんとにいい味出してましたよね。
「友達」として、「臣下」として、「主」を見事に支える「侍」でしたね。

メルヴィル作品、他には『いぬ』を観てますが、自分はこのゆったり感は心地よいです。
『いぬ』のオープニングもひたすら長々と歩きますが、あの時点で、ダメな方はダメでしょうね。

『リスボン特急』、いつもオークションで狙っているんですが、すぐ値が跳ね上がるんですよ・・・。
それでいつも諦めているんです(涙)
micchii |  2007.04.13(金) 13:21 |  URL |  【コメント編集】

■>akiさん

これは落ちますね(笑)
ほんとに尋常じゃないですよこのかっこよさは。
男たるもの、あの100分の1くらいでも、かっこよくなりたいものです(爆)
『冒険者たち』もいいですね~、何度も観ている大好きな映画です。
ラストのあの場所、確か観光名所になっているんですよね、いつか行ってみたいです。
micchii |  2007.04.13(金) 13:15 |  URL |  【コメント編集】

■>トム(Tom5k)さん

最近は、言わなくてもわかることまで台詞にしてしまう映画ばかりですから、余計にこのような姿勢は素晴らしく感じました。

ほんとにそうですよね、現実に接点があるということだけでも凄いことだと思います。
ぜひ歴史的な作品になってほしいです。
最新情報は随時書いていきますね。
micchii |  2007.04.13(金) 13:12 |  URL |  【コメント編集】

オススメ作品をご鑑賞頂きましてありがとうございました。

どうやらお気に召されたようで、推薦した私としても嬉しい限りです。(私自身が“7点採点”なのはさておき。笑)


小鳥がいい味を出していたと思います。
アラン・ドロンの歩きっぷりも良かったですね。

それと確かにこの作品におけるアラン・ドロン、かっこよさが半端じゃないです。


メルヴィル作品は相当数観ましたが、全体的にゆったりとした感じの作品が多かった様な気がします。

ゆったりとした感じの作品は別に嫌いな訳じゃないんですが、どうもメルヴィルのゆったり感には微妙に自分の感性がマッチしなかったような気もします。

メルヴィル作品の中では、『サムライ』と並び『リスボン特急』が7点で双璧を成しています。
機会があれば是非どうぞ。
暗めのトーンですが、なかなか楽しめる作品ですので^^
にじばぶ |  2007.04.10(火) 00:31 |  URL |  【コメント編集】

■aki

私はこれでアラン・ドロンに落ちました。やっぱり尋常じゃないんですね。最初にちゃんと見たのがこれだったので、どの作品より印象に残っているのですが、micchiiiさんも傑作とお墨付きを頂けたので嬉しいです。天然アイシャドウとかが釘付けになって、いろんな作品を見ましたが、原点回帰で好きな作品です。久しぶりにアラン・ドロンの映画を見たくなりました。『冒険者たち』みたいなのも好きですし、『黒いチューリップ』みたいなアイドル映画も好きなんですよ。うわー記憶が蘇ります。映画って凄いですね~。
aki |  2007.04.08(日) 23:15 |  URL |  【コメント編集】

micchiiさん、こんばんは。
>テレビの音を消してサイレント映画として観たとしても、何一つ不自由することはない
とのことですが、全くおっしゃるとおりですよね。そして、これはメルヴィルの意図的な演出だったようにも思います。

>1967年当時のアラン・ドロンをトーさんに・・・
わたしとしては勉強不足で、まだまだトー監督についてはmicchiiさんにお教えいただかなければならないことばかりですが、わたしもそう思いますよ。それにしても、ふたりの接点が現在、現実にあることが凄いことだと思っちゃいます。
両者にとっての代表作の一本、もしかすると映画史的な意味でも価値のある作品になるかもしれませんね。
トー一家にドロン御大が加わるなんて、ワクワクしてきます。最新情報が手に入ったら、記事更新お願いしますね。
ほんとにすごいよ。
では、では。
トム(Tom5k) |  2007.04.07(土) 21:29 |  URL |  【コメント編集】

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