2007.03.13

『ジャガーノート』(リチャード・レスター)

ジャガーノート

元祖、赤?青?

最近軟弱な映画が続いていたので(笑)、久々に痺れる映画を。
サスペンス映画の最高峰『ジャガーノート』です。

一言で言えば、処女航海に出た豪華客船に仕掛けられた7つの爆弾、タイムリミットは12時間、さて!?

というわけで、爆弾処理のスペシャリストであるファロン少佐が、部下を引き連れ大西洋のど真ん中を航海中の豪華客船ブリタニック号に派遣されます。

軍の飛行機からパラシュートで海に飛び込み、救命艇で船に移る手はずが、いきなり計画が狂い、海は大時化。
救命艇どころの騒ぎではなく、船から垂らしてもらった梯子に命からがらしがみつくのが精一杯。
この時点で、すでに部下の一人が海の藻屑と消えます。

ようやく船に乗り移っていざ爆弾処理開始となるわけですが、ドラム缶に仕掛けられたこの爆弾。
よくドラマや映画に出てくる時限爆弾などとは次元が違います。
専門的なことはさっぱりわかりませんが、素人目に見ても、その仕掛けの複雑さ、精巧さ、美しさ、一言で言うなら、芸術。

自らを“無敗のチャンピオン”と自負する爆弾処理のスペシャリストファロン少佐(たまに自ら歌う“Fallon is the champion~♪”という歌がいい感じ)、英雄は英雄を知る、その芸術的な仕掛けに舌を巻き、まるで待ち望んでいたかのように、好敵手との頭脳戦、心理戦に挑んでいくことになります。

しかし、そうはいっても、これはゲームでは、遊びではありません。
数ミリでも手元が狂ったり、間違った線を切断しようものなら、その瞬間お陀仏です。

無邪気な子供のほんの気まぐれが引き起こした想定外の事態に、乗組員や部下が瞬く間に犠牲に。

さらには、絶対の信頼を置く一番弟子も、犯人の巧妙な仕掛けにかかり爆弾の餌食となります。

この一番弟子の死は、ほんとなら自分が死ぬはずのところを運良く自分は助かっただけなので、“負けた”と悟り、一時任務を投げ出し酒に走ったりしますが、再び、犯人との頂上決戦へ。

この映画の凄さは、その“仕事”への徹底したこだわりで、例えば、板が6つのネジで止められているわけですが、素人目にはどのネジから外しても変わらない気がしますが、あるネジから外せば問題はないものの、あるネジから外せばそれだけで爆弾は爆発します。
しかも、一気に外してもだめで、まずは6つともを“ゆるめる”という過程が必要です。

しかも、カメラもその仕事ぶりにかじりつき、“ネジを半分ゆるめる”というたったそれだけの動きに、凡百のサスペンス映画が束になってもかなわない極上のサスペンスを生み出しています。

ジャガーノート リチャード・ハリス

起爆装置の線の一つを切るというのではありません。
その起爆装置にたどり着く遙か前の、外壁の板のネジの1つをわずかにゆるめるだけでこの緊張感。
核心に迫ってきた時の緊張感ときたら、想像を絶しています。

そして、最高峰の頭脳戦、心理戦を経て、ようやく辿り着いた最後の関門、これが、この後無数の映画で真似られることになる例のあれです。
赤?青?

しかも、この期に及んで、犯人との対話も加わり、直接の心理戦も加わって、緊張感はMAXに。
1200人の命がかかった、運命の決断。果たして最後に笑うのは…。

そんな極上のサスペンスを演じる役者たち。

オマー・シャリフ、アンソニー・ホプキンス(若い!)、イアン・ホルム、デヴィッド・ヘミングス、ジャック・ワトソンなど渋すぎる面々が脇を固めていますが、なんといっても主役のリチャード・ハリスが文句なしのかっこよさ。
『ワイルド・ギース』『ダンディー少佐』なんかも素晴らしいですが、これが最高傑作ではないでしょうか。

一つツボだったのは、軍の任務として来ていて、命を懸けた任務を遂行しているのに、軍服ではなくセーターなんですよね。
しかもそれが違和感どころか、むしろそれが素晴らしい!
どう素晴らしいかは言葉で説明するのは難しいので、実際にご覧になってみて下さい。

あと、爆弾処理チームだけでなく、船の乗務員や、乗客たち、それにロンドンで犯人を追う警察や、船の会社の専務など、脇にもしっかりドラマがあって、単なる一発ネタで終わらせていない素晴らしさがあるんですが、そこまで書き出すと凄く長くなるので、ここでは一点に絞って書きました。

一つだけ書くと、みんなの気を紛らせようと道化役の乗組員が船長の愛人とダンスをするんですが、もちろん他の客はそんな気分ではなく、白けて観ています。
それが、一組、また一組と、ダンスに加わっていくんですよね。このシーン、いいなぁ~。

この映画が作られてから30年以上経っているわけですが、同じ路線を狙った映画は無数にあれど、いまだこの壁は破られていないでしょう。
そういえば、『交渉人 真下正義』でも引用されてましたね。

元祖にして頂点。
凡百のサスペンス映画が束になってもかなわない、文句なしの大傑作。



[原題]Juggernaut
1974/イギリス/109分
[監督]リチャード・レスター
[出演]リチャード・ハリス/オマー・シャリフ/シャーリー・ナイト/アンソニー・ホプキンス/イアン・ホルム/デヴィッド・ヘミングス

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『ジャガーノート』DVD再発売!
『ワイルド・ギース』(アンドリュー・V・マクラグレン)
『ダンディー少佐』(サム・ペキンパー)

 

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*Comment

■>c.mamaさん

リチャード・ハリス、いつの間にか校長先生になってしまいましたが、この頃はほんとに渋いですよね。
この作品といい『ワイルド・ギース』といい、文句なしにかっこいいです。

ほんとに子供か?ですよね(笑)
以前、説明台詞はいらないというエントリーでも書いたんですが、観客のレベルが下がってきて、それに合わせて作り手のレベルも下がっきて(順序は逆かもしれませんが)、どんどん悪い方向にいってますよね・・・。
micchii |  2007.03.26(月) 14:34 |  URL |  【コメント編集】

リチャード・ハリスファンだった当時のことを思い出しました!彼は学者とか、何かのスペシャリストを演じさせたら抜群でしたね。
アンソニー・ホプキンスも好きでした~。「マジック」とか「オードリー・ローズ」とかいそいそと観に行ったものです。
今って、地味なネジのシーンをじっくり観ていられる観客が減ってきているんじゃないでしょうか?「スピード」のようなテンポで次から次へと派手なことが起きていないと飽きちゃというか・・・(子どもか?)
c.mama |  2007.03.24(土) 11:39 |  URL |  【コメント編集】

■>tonboriさん

TB&コメントありがとうございます。
ほんとに「かっこいいとはこういうことさ」ですよね。それにしても、改めて名コピーですね。
この渋さ、某ブラッカイマーに観せてあげたいですね(まあ一応観てはいるんでしょうが・・・)
micchii |  2007.03.16(金) 13:25 |  URL |  【コメント編集】

■カッコいいですよねー

『紅の豚』のキャッチコピーで『かっこいいとはこういうことさ』ってのがありましたけどそのコピーはそのままピッタリあてはまるよなあと思います。
イギリスらしい一見地味だけどリアルにおっかけていくその描写にはほんと脱帽です。
tonbori |  2007.03.13(火) 21:48 |  URL |  【コメント編集】

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