2007.02.26

『フラガール』(李相日)

フラガール

炭坑ものに外れなし。

『ブラス!』『リトル・ダンサー』『わが谷は緑なりき』『遠い空の向こうに』、当ブログでも常連の炭坑もの、新たな名作がまた一つ。

日本アカデミー賞受賞記念に1000円で凱旋上映をやっていたので、劇場まで行って来ました。
1000円ということもあるでしょうが、超満員。

上記作品の感想を読んでいただければわかるように、どれもパターンは同じなんです。
今回も全く予想通りの展開。
でも、それがどうした!という王道の素晴らしさ。
そして、実話という説得力。

どの話も、一言で言えば“変化”。

お父さんも、おじいちゃんも、近所のおじさんも、誰もがみんな炭坑夫。
当然のように自らも炭坑夫。

今回は初めて主役が女性なので、実際に炭坑で働きはしませんが、“炭坑以外に何もない町の住人”であることに変わりはなく、それが“当たり前”の世界。

そこに現れた“変化”、ブラスバンドやロケットの代わりに、今回はフラダンス。

フラガール 蒼井優

早苗に「今まで生きてきた中で一番楽しかったです!」なんてクサい台詞喋らせるなよ、などの不満はあるものの、紀美子の踊りを目の当たりにした母親に一言も喋らせないなど、最低限の“節度”は保っています。

役者陣も素晴らしく、『遠い空の向こうに』のクリス・クーパー並に“頑固な旧世代”を演じきった富司純子。

フラガール 富司純子

“新”と“旧”の間で飄々と振る舞う豊川悦司。
蒼井優の兄というのは年齢的に苦しくないですか?(笑)

フラガール 豊川悦司

ラム・シューばりに笑いを誘うしずちゃん。トゥシューズが入らないシーンなど全編笑わせてくれますが、何より名前が小百合だし(笑)

フラガール 山崎静代

出てくるだけで美味しい寺島兄貴。

抜群のプロポーションによる踊りのかっこよさ(初めに一人で踊るシーン!)だけでなく、行き場のなさもしっかり滲ませ、銭湯の男湯に殴り込みに行くシーンでは劇場中の爆笑を誘うなど、圧倒的な存在感の松雪泰子。

フラガール 松雪泰子

しか~~~し。

これだけの演技をしておきながらもっていかれる松雪泰子に心底同情しますが、圧倒的に蒼井優が素晴らしい。
日本中の賞を総なめにするのも納得ですね。

フラガール 蒼井優

先ほどから何度も“説得力”という言葉を使ってますが、この映画に説得力が出るかどうかは、全ては蒼井優のフラダンスにかかっているわけですが、過去の作品で主人公が成し遂げたどのことよりも、この蒼井優のフラダンスが凄い。
バレエをやっていたようなので基本はあるでしょうが、やっぱりバレエとフラダンスでは違うところも少なくないと思うので。
彼女のフラダンスだけでも劇場に出かける価値あり。

ラストのステージのソロも圧巻ですが、母親の前で踊るシーンが絶品。
官能的ですらあります。

あと、この手の映画のいいところは、恋愛が絡んでこないところですね。

そして、最後に出る「平山まどかは、70歳を超えた今でも、かの地で踊りを教えている」(不正確でしょうがこんなニュアンス)というような字幕には思わず落涙。

『墨攻』のラストの字幕にもじ~んときましたが、泣けはしなかったので、この字幕にこれだけの力が込められるのも、松雪泰子の演技の素晴らしさでしょう。
田口トモロヲ氏の声で読まれ、続いて「ヘッドライト・テールライト」が流れようものなら、号泣する自信あります(笑)

そんな素晴らしい松雪泰子すら霞む蒼井優。
恥ずかしながら観るのは1本目ですが、1本目にして完落ち(笑)

“炭坑ものに外れなし”の神話はまだまだ続きます。



2006/日本/120分
[監督]李相日
[出演]松雪泰子/豊川悦司/蒼井優/山崎静代/徳永えり/寺島進/高橋克実/岸部一徳/富司純子

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『ブラス!』(マーク・ハーマン)
『リトル・ダンサー』(スティーヴン・ダルドリー)
『わが谷は緑なりき』(ジョン・フォード)
『遠い空の向こうに』(ジョー・ジョンストン)

 

TB(6) CM(16) EDIT

*Comment

■>Carolitaさん

こちらにもありがとうございます。

>炭鉱の繁栄を支えていた人々には体を張って生きている
という実感とたくましさがあって、そこが物語の説得力に
つながっているのかなぁと思います。

おっしゃる通りですね。旧世代のその逞しさがあってこその説得力ですよね。
その点、富司純子はほんとに素晴らしかったですね!

Carolitaさんもバレエやダンスをやられてたんですか!
それだと、蒼井優がいかに頑張ったかもより伝わるものがあるでしょうね。
もう完全に恋をしております。写真集も何冊も買いましたし(笑)
micchii |  2009.06.15(月) 17:16 |  URL |  【コメント編集】

■いろんな“変化”

micchiiさん、こんにちは。
時代や人の心など、この作品にはいろんな“変化”が
いっぱい詰まっていましたね!
炭鉱の繁栄を支えていた人々には体を張って生きている
という実感とたくましさがあって、そこが物語の説得力に
つながっているのかなぁと思います。
蒼井優ちゃんのダンスは本当にすばらしかったですね!
わたしも昔バレエやダンスをかじっていたのですが、
彼女のフラには魂を感じました。
冨司純子くらいの年齢になった時、どんな女優さんに
なっているのかと鳥肌が立つほど楽しみです!
Carolita |  2009.06.14(日) 10:39 |  URL |  【コメント編集】

■>samurai-kyousukeさん

劇場に行くのって結構パワーがいりますが、DVDで観て、あぁ行っておけばよかったということ多いですよね・・・。
アクション超大作もですが、歌や踊りもやっぱり劇場がいいですね。
micchii |  2007.03.28(水) 13:09 |  URL |  【コメント編集】

■DVDでやっと観ました

遅ればせながらやっと観ました。
劇場で観賞すれば良かったです。
公開先に、いや後悔先に立たずでございました。
samurai-kyousuke |  2007.03.27(火) 17:41 |  URL |  【コメント編集】

■>JB'sさん

そちらに完落ちしてしまいましたか!
ストーブ片手の殴り込み、観てみたかったです(笑)

『タイガー&ドラゴン』、チョイ役だろうが何だろうが、「サイコーにカワイイ」と聞けば、観ないわけにはいきませんね~。
micchii |  2007.03.26(月) 14:38 |  URL |  【コメント編集】

昨日(3/23)DVDで観ました。緋牡丹お竜さまに完落ちw 
『遠い空の向こうに』のクリス・クーパーとは言いえて妙!
ラストは豊川悦司と並んで、ストーブ片手に殴り込みにいくのかと。

蒼井優ちゃんはねw TVドラマ『タイガー&ドラゴン』のバイトねーちゃん役がサイコーにカワイイんだぞ。チョイ役だけどね。
JB's |  2007.03.24(土) 15:17 |  URL |  【コメント編集】

■>space2600さん

レスが遅くなり申し訳ありません。
TBありがとうございます。こちらからもさせていただきますね。
micchii |  2007.03.12(月) 14:32 |  URL |  【コメント編集】

■映画三昧

さっき言い忘れました。
TBさせてください。
space2600 |  2007.03.07(水) 14:49 |  URL |  【コメント編集】

■>space2600さん

コメントありがとうございます。
そうなんですよね、松雪泰子もほんとに素晴らしい。彼女はこれで一皮向けた感がありますね。
炭鉱もの、おっしゃるように、郷愁を感じますよね。
旧と新の対比が上手く出るいい題材だと思います。
micchii |  2007.03.07(水) 14:13 |  URL |  【コメント編集】

■こんにちは~

フラガール、面白かったですね。
蒼井優もよかったけど、松雪泰子の熱血教師も演技賞ものでした。
なんか炭坑ものって、時代の流れに押し流された過去の産物で、郷愁を感じるんですよね。
頑張ってる人を応援する映画は勇気付けられます。
space2600 |  2007.03.07(水) 11:24 |  URL |  【コメント編集】

■>anyさん

TB&コメントありがとうございます。
どんな理由でもいいですが、再上映は嬉しいですよね。
自分も日本アカデミー賞のおかげで劇場で観れてほんとによかったです。
評判どおりの、ほんとに素晴らしい映画でした。
俳優はみんなよかったですが、なんといっても蒼井優、完全に恋に落ちました(笑)
自分もつっこまずにはいられませんでしたが、豊悦と兄妹っていうのは、さすがに苦しいですよね(笑)
『スタンドアップ』、ありがとうございます。
なかなか炭坑もの情報は少ないので・・・。
ぜひぜひチェックしてみます!
micchii |  2007.03.05(月) 12:52 |  URL |  【コメント編集】

■炭坑もの

micchiiさん、こんばんは♪
TBさせていただきました!

キネマ旬報のBEST5を再上映ということで、
1位の『フラガール』をやっと観る事ができました!
泣いて笑って、素晴らしい作品に感動☆
俳優陣の演技も本当にうまかったぁ~
そして何といっても、蒼井優ちゃんのフラダンスは圧巻でしたね!
micchiiさん、そういえば...
私の好きな映画『スタンドアップ』も炭坑ものでした。
any |  2007.03.04(日) 22:43 |  URL |  【コメント編集】

■>beraboさん

TB&コメントありがとうございます。
そのうちカテゴリーでも作ろうかと思うぐらい、ほんとに炭鉱ものには外れがないです。
他にあとどれくらいの作品があるかはわかりませんが・・・。
小包を届けにきた富司純子が何も言わずに出て行くシーン、あれしかないですよね。
あそこで一言でも喋ったら台無しです。
micchii |  2007.02.27(火) 12:37 |  URL |  【コメント編集】

■>hi-chan

炭鉱もの、今まで観たのはどれもほんとに素晴らしかったですよ。
まあ基本はどれも同じなので、ある意味外れがないのは当然なんですが・・・。

なるほど、体重のかけ方が逆なんですね。
最初の方は逆にわざと下手に踊るのが大変だろうなぁと思ったら、それならほんとにうまくできなかったところもあるんでしょうね。
一芸だけでも役が限られてしまいますが、肝心の演技もしっかりしてますし、これからがほんとに楽しみです!
micchii |  2007.02.27(火) 12:34 |  URL |  【コメント編集】

■おじゃまします

“炭坑ものに外れなし”
なるほど名言ですね。
TBさせていただきました。
また、寄らせてください。


berabo |  2007.02.27(火) 00:11 |  URL |  【コメント編集】

■なるほど~

炭鉱ものに外れなし、ですか。
特に気にして観たことはありませんが、「遠い空の向こうに」はとても良かったので、他のも見てみようかな。

蒼井優ちゃんのフラダンスは素晴らしかったですね。思わず涙ぐんでしまいましたし。
フラダンスとバレエでは、体重のかけ方が逆なので、最初は戸惑ったとインタビューか何かで読みました。でも素養があるのとないのとでは違うでしょうね。何か得意なものがあるというのは、役者をやる上で大きな武器ですね。
hi-chan |  2007.02.26(月) 15:54 |  URL |  【コメント編集】

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【 フラガール 】

◆監 督   ・・・ 李相日◆脚 本   ・・・ 李相日/羽原大介 ◆音 楽   ・・・ ジェイク・シマブクロ◆CAST   ・・・ 松雪泰子/蒼井優/豊川悦司/岸辺一徳/富司純子/山崎静代/           池津祥子/
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