2007.02.13

『あるいは裏切りという名の犬』(オリヴィエ・マルシャル)

あるいは裏切りという名の犬

かつて親友だった

同じ女を愛した

今はただ敵と呼ぶのか…


元警察官の監督・脚本家が描く、実話に基づく(そのままの実話ではない)本場フランスのフィルム・ノワール、主演がダニエル・オートゥイユにジェラール・ドパルデューとくれば、これを観ずして何を観るというわけで、『ヴェラ・ドレイク』以来久々に、名演小劇場に行って来ました。

冒頭のキャッチコピー、いいですよね~。

次期警視庁長官の最短距離にいる二人の男。

権力への欲望はなく、部下を大切にし、仲間からの信頼が厚いレオ(ダニエル・オートゥイユ)。

権力への欲望を隠そうともせず、目的のためには手段を選ばないドニ(ジェラール・ドパルデュー)。

現長官が後継者に選んだのはレオだった。
それに納得がいかないドニは…。

あるいは裏切りという名の犬ダニエル・オートゥイユ ジェラール・ドパルデュー

こう書くと、黒社会から警察に舞台が変わっただけで、トーさんの『エレクション』?となりますが、もう一つ話が絡んできます。

かつて親友だった二人は同じ女を愛し、女は今はレオの妻。
いつしか二人は疎遠になり、警察内でも二人がそれぞれ率いるチームは犬猿の仲。

そんな過去を持つドニのレオに対する思い、これがもう一つの大きな軸に…。

ならなきゃいけないんですが、この部分が弱い。
少なくとも二人が親友だったと感じさせるものはないですし、ハリウッドみたいに説明過多になる必要は全くありませんが、ここが弱いために、いまいち深みに欠けます。
いつもは長すぎると文句を言ってますが、今回は110分なので、あと10分くらい使って掘り下げて欲しかった。

ただ、さっき書いたのだけ読むとレオが善人、ドニが悪人みたいですが、決してそんな単純ではないところはさすがで、レオの方もグレーゾーンに完全に足を踏み入れています。
そんな生き方が、思わぬ事態へと繋がっていくんですが…。

あと、主演の名優二人が素晴らしいのは言うまでもないとして、脇に至るまで、みんな役者が素晴らしい。

レオの知り合いの娼婦役でミレーヌ・ドモンジョが貫禄を見せつけ、レオの同僚エディ、部下のティティ、ドニの部下の女性エヴ、みんなほんとに上手い。

先ほどの掘り下げの弱さと、ラストへの感じがやや弱いので、傑作!とまではいきませんが、十分に面白く、何より雰囲気が素晴らしい。

冒頭の夜のシーンで見られる、濡れた舗道、浮かび上がる街灯の灯り、これだけでノワールとしての質は保証されたようなもの。
最近はこの“濡れた舗道”を美しく撮れる人がなかなかいないですからね。

ちなみにこの映画、レオ=ロバート・デニーロ、ドニ=ジョージ・クルーニーでリメイクが決まっています。
またひどいものができるんでしょうか。
どうせやるなら配役が反対だと思うんですが…。

最後に、原題の『36 Quai des Orfèvres』(オルフェーヴル河岸36)はパリ警視庁の番地名。
酷い邦題が多い昨今にあっては、久々に良い邦題ですね。



[原題]36 Quai des Orfèvres
2004/フランス/110分
[監督・脚本]オリヴィエ・マルシャル
[出演]ダニエル・オートゥイユ/ジェラール・ドパルデュー/アンドレ・デュソリエ/ヴァレリア・ゴリノ/ロシュディ・ゼム/ダニエル・デュヴァル/ミレーヌ・ドモンジョ/フランシス・ルノー/カトリーヌ・マルシャル/オリヴィエ・マルシャル

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『そして友よ、静かに死ね』(オリヴィエ・マルシャル)

 

TB(8) CM(6) EDIT

*Comment

■>fizz♪さん

TB&コメントありがとうございます。

主役の二人は今さら言うまでもなく巧いんですが、脇がみんな凄くよかったです。
さすがノワールの本場だけあって、みんな画面に映っているだけで様になるんですよね。

「女ならこれを観ろ!」、たぶんもうご覧になってらっしゃると思いますが、真っ先に浮かんだのは『グロリア』でした。
どんなにたくさんの映画を観ても、いまだに『グロリア』のジーナ・ローランズが最強です。
micchii |  2008.02.19(火) 17:53 |  URL |  【コメント編集】

■堪能しました!

『エレクション』は数倍怖かったですが、今作は人物たちから滲み出る人間味に切なくなりました。
主役の二人の渋さもさることながら、ティティやエヴも良かったですね!
妻たちにも目が行きました。
「男ならこれを観ろ!」ならぬ、「女ならこれを観ろ!」を探してみようと思いました(笑)
オススメがあればお願いしますm(_ _)m
fizz♪ |  2008.02.19(火) 02:59 |  URL |  【コメント編集】

■>とらねこ様

こちらこそTB&コメントありがとうございます。
デ・ニーロ、自分が製作ですし、レオ視点映画なのでこちらのが目立つと思ったのかもしれませんが、役者としておいしい役はドニの方ですよね。
どうせやるならデ・ニーロのドニが観てみたかったです。
micchii |  2007.02.16(金) 11:23 |  URL |  【コメント編集】

■>元・副会長様

こちらこそTB&コメントありがとうございます。
ほんとに他国ネタのハリウッドリメイクで成功したのは見たことがないですよね。
自国のリメイクもほとんどだめですが・・・。
邦題は、そのまま片仮名にしただけか、全然おかしなのかどっちかがほとんどなので、思わずニヤリとしました。
micchii |  2007.02.16(金) 11:19 |  URL |  【コメント編集】

■TBありがとうございました

初めまして。こんにちは。
ハリウッドリメイク、どうせやるなら配役が反対、私もそう思います。
年の差もありますしね。
製作がデ・ニーロってとこでこうなのでしょうけど・・・
とらねこ |  2007.02.14(水) 17:15 |  URL |  【コメント編集】

■トラックバックありがとうございました。

見解の異なる拙文にTBしていただき、どうもすいません(^^)。

またハリウッドでリメイクですか。ヨソの国のネタをハリウッドで再映画化して良かった試しはありませんので、私も期待していません(汗)。

>久々に良い邦題

同感です。配給会社にもセンスのいい人が残ってたんですね。

それでは、今後とも宜しくお願いします。
元・副会長 |  2007.02.14(水) 16:49 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://micchii.blog4.fc2.com/tb.php/513-63d0e32f

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

あるいは裏切りという名の犬

藍色の乾いた夜空に響く悲嘆の叫び。この幕開けシーンに背中がヒヤッとする。「かつて親友だった。 同じ女を愛した。今はただ敵と呼ぶのか。」の予告で既に十分誘われている後だから尚、効果100倍。しかも邦題の訴求力たるや稀に見る功績ではないだろうか。 いきなり...
2008/02/19(火) 02:48:54 | Have a movie-break !

あるいは裏切りという名の犬

--とりあえず更新できなかった日数分(10本以上!)をたらたら書いていきマース-- 「あるいは裏切りという名の犬」です。
2007/07/24(火) 10:37:37 | ○o。1日いっぽん映画三昧。o ○

あるいは裏切りという名の犬

コーザ・ノストラ のような、ニル・バイ・マウス のような雰囲気を感じつつ Harvey Keitel とか出てきそうだなと思いつつ観ましたが (。。。出ないけど)だいぶ難解でした スッキリするような、しないような。。。角川エンタテインメントあるいは裏
2007/06/24(日) 11:25:23 | Screen saver☆

あるいは裏切りという名の犬 (36 Quai des Orfevres)

監督 オリヴィエ・マルシャル 主演 ダニエル・オートゥイユ 2004年 フランス映画 110分 ドラマ 採点★★★★ 社会の仕組みをいまいち理解していないのか、仕事は大好きだが出世欲には著しく欠いてるわたくし。正当な評価として出世している分には全く文句はないのですが、
2007/06/11(月) 20:34:58 | Subterranean サブタレイニアン

「あるいは裏切りという名の犬」

とっぴなことを言うようだが、見ていて警察組織のとらえ方が「県警対組織暴力」(脚本・笠原和夫)に似ているな、と思った。演出タッチはフランス伝統のフィルム・ノワールに今風のヴァイオレンス描写を加えたものだが、普段だと犯罪者を演じる顔が警察に越してきたような感
2007/02/15(木) 01:54:35 | prisoner's BLOG

『あるいは裏切りという名の犬』を観たよ。

シェアブログminiに投稿※↑は〔ブログルポ〕へ投稿するために必要な表記です。 巧い邦題。思わせぶりなのに的確、だなんて。『あるいは裏切りという名の犬』原題:"36 QUAI DES ORFEVRES"2004年・フランス
2007/02/15(木) 00:50:30 | 【待宵夜話】++徒然夢想++

#11.あるいは裏切りという名の犬

オヤジのカッコ良さにシビレる、フレンチ・ノワールないぶし銀サスペンス。最近、映画上映時にすでにハリウッドリメイク決定!なんていうのをよく聞くようになりましたよね。この作品なんか、もうすでにキャストまで決まっていて、私が見に行った銀座テアトルでは、入り口に
2007/02/14(水) 17:16:51 | レザボアCATs

「あるいは裏切りという名の犬」

 (原題:36 QUAI DES ORFEVRES)パリのオルフェーブル河岸36番地にあるパリ警視庁に所属する2人の警視の確執を描くオリヴィエ・マルシャル監督作。 確かに雰囲気は良いのである。往年の“フレンチノワール”を思わせる暗鬱でやるせない展開。重く沈んだ画面。眉間にシ
2007/02/14(水) 16:45:48 | 元・副会長のCinema Days

▲PageTop

 | BLOGTOP |