2006.11.10

『突破口!』(ドン・シーゲル)

突破口!

今回は、ドン・シーゲル第3弾『突破口!』です。

いくらハリー・キャラハンが法を無視しているとはいえ、同じドン・シーゲルの『ダーティハリー』はあくまでも警官vs殺人鬼。
善vs悪の対決です。
ですが、この映画にいわゆる善はいません。

ニューメキシコの小さな銀行を襲った、夫婦と男二人の4人組。
大金など置いているはずのない小さな銀行だったが、奪った金はなんと75万ドルだった…。

話としてはよくある話で、実は金はマフィアの隠し金で、警察とマフィアの両方から追われるという話。
マッソーがロビンソンに言った「サツは甘いが組織はお前が死ぬまで追う」という一言が、警察とマフィアのことを一言で言い表していて印象的でした。

話としては目新しさはないものの(今ではそうですが、当時としては斬新なのかも)、キャストが魅力的。

突破口! ウォルター・マッソー アンディ・ロビンソン

オープニングの銀行強盗で男の一人が死に、その際負った傷が原因で間もなく妻も死にますが、残った二人のリーダー格にウォルター・マッソー。

トボけた笑いのコメディのイメージがありますが、そんなマッソーを犯罪者にもってきたのがキャスティングの勝利で、そのトボけた感じが、憎めない犯罪者役に見事にハマっています。
思わぬ大金が入っていても、飛び上がって喜ぶなんてこともありません。

若い相棒には、『ダーティハリー』の“さそり”ことアンディ・ロビンソン。
冷静なマッソーとは違い、こちらは思わぬ大金に大はしゃぎ。
短気で思慮のない彼に、まずは追っ手が忍び寄ることになります。

そんな二人から金を奪い返すため、マフィアが送った最強の殺し屋にジョー・ドン・ベイカー。
いかにも恐そうな見た目というわけではなく、見た目はむしろ甘いマスクなんですが、泣く子も黙る圧倒的な凄み。この殺し屋の存在感がとにかく強烈。

突破口! ジョー・ドン・ベイカー

マッソーに偽造パスポート作りを頼まれた女性の扱いなんかも巧いなぁ。
自分に頼みにくるということは、もちろんヤバい事情があるということ。
どれだけふっかけてもマッソーとしては払うしかないわけで、事情も聞かずただぼったくります。

それでいて、嗅ぎつけて現れたベイカーに逆らう理由も何もないので、あっさりとマッソーのことを話してしまいます。
この“慣れた”感じがいい。

最大の見せ場はなんといっても、クライマックスのマッソーとベイカーの一騎打ち。
軽飛行機で受け渡し場所に現れたマッソーと、車で待ち伏せるベイカー。
軽飛行機vs車の、地上でのド迫力のチェイス。
このシーンを当時劇場で観れた方が羨ましい!

音楽は盟友ラロ・シフリン。
ドン・シーゲル、『ダーティハリー』に続いてこんな凄いのを撮ってしまうところが凄い。

派手さはありませんが、乾いた空気と演出の抜群のキレ。ハリウッドには、こういうアクション映画を作ってほしいなぁ。

イーストウッドの師匠ドン・シーゲル監督会心の、犯罪アクション映画の大傑作。

必見!



[原題]Charley Varrick
1973/アメリカ/111分
[監督]ドン・シーゲル
[音楽]ラロ・シフリン
[出演]ウォルター・マッソー/ジョー・ドン・ベイカー/フェリシア・ファー/アンディ・ロビンソン/シェリー・ノース/ノーマン・フェル

→予告編 →他の映画の感想も読む

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『突破口!』のポスター集

 

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*Comment

■>映画初心者さん

コメント&ご質問ありがとうございます。
返信が遅くなり大変申し訳ありません。

大変興味深いご質問、リンク先の方のご回答も拝見しました。
その上で、自分なりに考えてみました。

話を犯罪アクションに限らず、もう少し大きなところから考えてみましたが、映画を観たり本を読んだりするのはなぜなのか。
それは、一言で言えば、「普段普通に生きているだけでは絶対に体験できないことを体験できる(体験できたような気になる)」からではないかなと。

映画だとその歴史はたかだか100年ちょっとですが、例えば、『ガリア戦記』を読めば、2000年前にカエサルが体験したことをまるで自分のことのように体験できるわけで、普段はそんなこと意識せずに当たり前のように本を読んでいますが、改めて考えてみるとこれってとてつもないことで、世界中のあらゆる場所、あらゆる時代を(想像上の未来まで含め)、簡単に体験できてしまう。

そして、それをさらに簡単に体験できるのが映画ではないかなと。もっと長い映画もありますが、平均すると2時間くらいですので、たった2時間で、家や映画館にいながら、あらゆる“体験”ができてしまう。

“勉強”なんていう堅苦しいものではなく、ジョン・フォードを通してフロンティアと呼ばれた時代のアメリカ西部を、アンゲロプロスを通してギリシャを、“体験”できてしまう。

前置きが長くなりましたが、おっしゃるように「犯罪をやれがテーマではない」「フィクションと現実を混同してはいけない」「しかし、表面的に見れば犯罪を礼賛してる」はもちろんその通りではありますが、先ほどの「普段普通に生きているだけでは絶対に体験できないことを体験できる(体験できたような気になる)」として考えると、良い悪いは別にして、強盗も脱獄も“体験”できてしまうわけです。

そして、挙げられていたような映画ではそれを“かっこよく”描いているわけですが、脱獄が駄目なことというのは当たり前として、自分が仮に死ぬまで出られない刑務所に入れられたとして、もし少しでも逃げ出すチャンスがあるなら、そのチャンスに賭けてみるか?
賭けてみたいとしても、間違いなくその根性も才能もないでしょう。

“権力への反抗”なんていうかっこいい理屈をつけなくても、捕まったら逃げるというのはもっと本能的なもので、自分がもしその立場に立っても、逃げたいとは思うでしょう。でも、まず間違いなくそれは不可能。
そして、“できない”からこそ、憧れてしまう。

よく「映画的カタルシス」なんていう言われ方をして、一言で言ってしまえばそういうことなのかもしれませんが、もう少し立ち止まって考えてみると、自分としてはそんな感じかなぁと思います。

ご質問の回答になっているかわかりませんが、自分なりに考えてみたのはこんな感じです。
micchii |  2020.03.24(火) 16:41 |  URL |  【コメント編集】

■犯罪映画の楽しみ方

この映画、面白かったです。エキストラの女性陣がエロい美女が多いのも印象的?でした。バーノンの窓から見たエロ親父に笑いました。

・・・ですが・・・、

レベルの低い質問をするのですが、こういう犯罪映画を心の底から楽しむにはどうすればいいんでしょうか?

同じような質問を下のブログの方にして、興味深い、参考になる意見をいただきました。

https://ameblo.jp/ohmss69/entry-12573966592.html

上記のブログでも、書いていますが、この作品のテーマが、「犯罪は素晴らしい、見ているお前らも犯罪を犯せ!」がテーマ性ではないことはわかりますし、しかし表面的に見れば犯罪を肯定し、見事に高跳びした彼らを祝福してますよね?
現実に強盗などの犯罪はやってはいけないし。

この作品以外にもゲッタウェイやサイレントパートナー、ザ・ドライバー、狂った野獣、暴走パニック大激突、脱獄ものですが「アルカトラズからの脱出」も表面的に見れば、強盗・脱獄を礼賛してますよね?

「犯罪をやれがテーマではない」「フィクションと現実を混同してはいけない」「「しかし、表面的に見れば犯罪を礼賛してる」・・・・、

すいません、自分でもレベルが低い質問をしてるのわかります。
しかし、それでも映画初心者ナタメ、こういう作品の真の見方、処理の仕方がわからず質問しました。

micchii さんの意見も聞きたいです。
映画初心者 |  2020.02.19(水) 17:01 |  URL |  【コメント編集】

■>クウガ555さん

コメントありがとうございます。
ほんとに大好きな映画で自分も何回も観ておりますが、年に2、3回というのはまた凄いですね!
『ゲッタウェイ』もいいですよね、ペキンパーもマックィーンも大好きなので、あの映画も何回も観ている大好きな映画です。
シーゲルもペキンパーももう新作は観れませんけど、シーゲルの弟子イーストウッドの新作がまだまだ観れるのは、よく考えると凄いことであり幸せなことですね。
micchii |  2013.07.18(木) 02:42 |  URL |  【コメント編集】

■井筒和幸監督が大絶賛している映画の一本

この突破口!は井筒監督は今でも年に2、3回は見るようです。(「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」ゲスト出演時に発言。)

自分もこの映画大好きです!
シーゲルの弟子であるサム・ペキンパー監督「ゲッタウェイ」も大好きです!(この映画も井筒監督絶賛でこれまた年に2、3回は見るとのことです。)
クウガ555 |  2013.07.17(水) 11:01 |  URL |  【コメント編集】

■>テコさん

奥さんの指から指輪を抜き取るシーンに触れられるとはさすがですね!
あそこ自分もむちゃくちゃ好きです。今読み返したら触れてませんでした(^^;
マッソー、ジャック・レモンとのコメディの印象が強いですが、『サブウェイ・パニック』『マシンガン・パニック』、そしてこの映画、渋い路線もたまりませんよね。
ドン・シーゲル監督の演出はもちろん最高です。
micchii |  2012.03.30(金) 21:06 |  URL |  【コメント編集】

■男!!

マッソーの意外にも渋い演技、奥さんの指から指輪を抜き取るシーン惚れます!段々と、ちょっととんでもない感じもあって、シーゲル監督の中でも好きな作品ですw
テコ |  2012.03.30(金) 10:31 |  URL |  【コメント編集】

■>黄石様

香港版DVDは買ったことがあっても米盤DVDはないんですが、そんなお粗末な仕様なんですね。
でも、米版は特典が凄いとも聞きますし、たまたまこの映画は運が悪かったんですかね・・・。
micchii |  2006.12.04(月) 12:22 |  URL |  【コメント編集】

■米盤DVDにはがっかりです。

USユニバーサル版DVD、なんと画面サイズはワイドではなくTVサイズ(Full Frame)でした。特典どころか予告編すら付けないというお粗末な仕様でがっかりで、同時に出たマッソーとジュリー・アンドリュースの共演した未公開作も同様の仕様・・・ただ出しましたというだけの誠意の感じられないものです。(それでも観られるだけでもましと自分を納得させています)
劇中でアンディ・ロビンソンが見せるのつなぎにブーツというファッションに憧れておりました。
黄石 |  2006.12.02(土) 22:36 |  URL |  【コメント編集】

■>めとろん様

お久しぶりです、「突破口!」に反応していただいて嬉しいです。
最近は原題をただカタカナにしただけのつまらない邦題ばかりですが、この「突破口!」は素晴らしいですよね。でも、ほんとにどっからどうしたらこうなるのか(笑)

宮部女史の言葉は見事ですね。
それにしても、ジョー・ドン・ベイカーとアンディ・ロビンソンが並ぶと濃いですよね(笑)
なかなかTVシリーズにまでは手が回りませんが、機会があればぜひ「刑事ロニー・クレイブン」観てみたいと思います。
micchii |  2006.11.15(水) 10:38 |  URL |  【コメント編集】

■タイトルセンスも抜群!

こんばんは、めとろんです。

「突破口!」に反応してしまいました(笑)まず、このタイトルが素晴しい。原題はマッソー扮する主人公の名前という、味もソッケもないシンプルなもの。それをどっからどうしたら、「突破口!」になるのか。…でも、今となっては「突破口!」以外考えられない作品なんですよね~。

出演の、マッソーに加え、ジョー・ドン・ベイカーとアンディ・ロビンソンの"濃~い"面々。同じくマッソー主演の「サブウェイ・パニック」を、かの宮部みゆき女史が「追う方も追われる方も、これほどカッコ良くない強奪ものというのは珍しい」と評されていましたが、まさしくこの「突破口!」にも当て嵌まる名文句のもうな気がします。
特に、ジョー・ドン・ベイカー!
彼が出演したイギリスの超傑作TVシリーズ"EDGE OF DARKNESS "(「刑事ロニー・クレイブン」)の狂気の演技も記憶に新しい。
あ~、また見直したくなってきました!

めとろん |  2006.11.10(金) 19:03 |  URL |  【コメント編集】

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