2006.10.24

『ミスター・ノーボディ』(トニーノ・ヴァレリ)

ミスター・ノーボディ

「Who are you?」
「Nobody」

今回は、セルジオ・レオーネ第4弾『ミスター・ノーボディ』です。

製作・原案のレオーネ、監督は愛弟子トニーノ・ヴァレリに任せています。DVDのジャケットやレオーネの発言によると、冒頭の早撃ちやクライマックスの大決闘などはレオーネ自身が監督したとなってますが(インタビューでテレンス・ヒルもそう言ってましたが)、トニーノ・ヴァレリは真っ向から否定。
この作品以降の二人の仲は最悪なようです…。(詳しくはDVD収録のコラムに)
それでも、酒場でのグラス撃ちのシーンなど、一部シーンを撮影していることは間違いないようです。

それはさておき、『ワイルドバンチ』vsワイアット・アープという夢の対決が拝めるのがこの作品。

少し説明がいりますが、『ワイルドバンチ』といえばもちろんペキンパーの代表作ですが、“ワイルド・バンチ”というのは、実は実在した無法者集団。

そして、『荒野の決闘』でワイアット・アープを演じたのがヘンリー・フォンダ。

そのヘンリー・フォンダが扮するのが、西部一の早撃ちガンマン=ジャック・ボーレガード。
もういい歳なので、無法の世界を引退し、ヨーロッパで隠居しようと考えています。

そんな彼の前に現れたのが、陽気な風来坊のノーボディ(テレンス・ヒル)。
ノーボディはボーレガードを“伝説”のガンマンに仕立てるべく、150人の“ワイルド・バンチ”にたった一人で立ち向かうように仕向けます。
1対150です。

引退したいボーレガードは乗り気ではありませんが、結局ノーボディの思惑通り闘うはめに。
しかもそのノーボディは、目の前で高見の見物。

目の前に大平原が広がる線路脇で、老眼鏡をかけ、愛用の拳銃と二丁のライフルを手に、一人待ち構えるボーレガード。

地平線の彼方、かすかに聞こえる馬の足音が、少しずつ、少しずつ近づいてきます。

ミスター・ノーボディ ヘンリー・フォンダ

そして、ついに姿を現す“ワイルドバンチ”。地平線の彼方から横一列になって現れる150人の“ワイルドバンチ”、その様はまさに壮観。
バックには、エンニオ・モリコーネの泣きのメロディラインに痺れる「Mucchio Selvaggio」。

迫り来る“ワイルド・バンチ”を待つフォンダの後ろ姿を捉えながらカメラがクレーンで上がっていく長回しは、『ウエスタン』のクラウディア・カルディナーレ到着場面に匹敵する名場面。

1対1のベストバウトは、『ウエスタン』のヘンリー・フォンダvsチャールズ・ブロンソンだと思っていますが、こちらはなんといっても1対150です。

バックに流れる「Mucchio Selvaggio」のかっこよさも尋常ではなく、この決闘の前にも何度か“ワイルド・バンチ”が荒野を駆けるシーンがあって、その度にこの曲が流れるわけですが、何も起きなくていいから、ただこの曲をバックに馬を走らせる“ワイルドバンチ”を1時間でも観ていたい。

それくらい、“ワイルドバンチ”のビジュアル、150頭の馬の足音、舞い上がる砂埃、モリコーネの音楽、その奇跡的なコラボレーション。

そして、ただの風来坊ではなかったノーボディは、ボーレガードに負けず劣らずの早撃ち。
最後は、ついにこの両雄が相まみえることになります。

ミスター・ノーボディ ヘンリー・フォンダミスター・ノーボディ テレンス・ヒル

この映画ちょっとしたお遊びもきいていて、思わず笑ってしまうような早回しが使われていたり、『ウエスタン』の「復讐のバラード」のワンフレーズがそのまま使われていたり、ナホバ族の墓場の墓碑名の一つに“サムペキンパー”という名前が出てきます。(墓碑名にペキンパーの名前を使ったのは、レオーネの『ワイルドバンチ』への複雑な思いからのようです)

あと、からくり屋敷でノーボディが無法者と闘う時に、鏡を使ってノーボディが8人になるシーンがあるなど、銃を使わないアクションシーンはかなりアイデア満載。

他にも、冒頭の床屋のシーンは『ウエスタン』のオープニングを、フォンダとヒルの帽子の飛ばし合いは『夕陽のガンマン』を思い起こさせます。

ジャック・ボーレガードのこの名言にも触れないわけにはいきませんね。
「上着を着てない床屋はニセ者だ」
意味するところは観てのお楽しみ。

ヘンリー・フォンダは貫禄十分ですし、テレンス・ヒルのユーモラスな魅力も全開。
ですが、なんといってもクライマックスの1対150の大決闘。

NobodyはいつしかSomebodyとなり、そして伝説は引き継がれていく…。

あのジョン・ウーをして「最も好きなウエスタン」と言わしめた、マカロニウエスタン後期の名作。





[原題]Il mio nome e Nessuno
1973/イタリア・フランス・西ドイツ/115分
[監督]トニーノ・ヴァレリ
[製作]セルジオ・レオーネ他数名
[原案]セルジオ・レオーネ他数名
[音楽]エンニオ・モリコーネ
[出演]ヘンリー・フォンダ/テレンス・ヒル/レオ・ゴードン/ジェフリー・ルイス/R・G・アームストロング

→予告編 →他の映画の感想も読む

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*Comment

■>松さん

初めまして、コメントありがとうございます。

お正月から『ミスター・ノーボディ』!今年はいい一年になりそうですね。

そうなんですよね、いろいろありながらも、根っこにあるのは、憧れと、そして何よりも敬愛。
一人、また一人とワイルドバンチを撃つのを数えている時の、テレンス・ヒルのあの表情!

この作品以降トニーノ・ヴァレリと師匠レオーネの仲はよくなかったみたいですが、いわゆる典型的なマカロニとはすでに違いますからね。
あくまでもリスペクトは失わず、それでも自らの味で敬愛する先達を乗り越えていく、確かにそれは作品にも表れているような気がしますね。
micchii |  2013.01.04(金) 21:29 |  URL |  【コメント編集】

■再会

はじめまして。
本作とは、十代の頃に吹き替えのテレビ版(柳生・広川版)を見て以来の再会。
先月購入しておいたソフトを、正月休み最後の本日に鑑賞しました。
憧れていた、老いて去りゆく者への敬愛を込めて若者が仕組んだ、1対150の決闘。
どこか淋しく、しかし胸躍る、まざに伝説が生まれた瞬間でした。
制作者の、マカロニというジャンルムービーや自分の師匠・先達への惜別の情と決意を込めた作品にも思えました。
松 |  2013.01.03(木) 15:59 |  URL |  【コメント編集】

■>よしぼうさん

これ、大好きなんですよね~。気に入っていただけて嬉しいです。

確かに、マカロニとも、かといって正統とも違う、独自の感じがありますよね。
全編に漂うコメディタッチが大きいと思いますが。

「怒りの荒野」は、悪くはないんですが、自分も期待していたほどではありませんでした。こっちのが断然好きですね。

150対1は、いざ撃つ前までが、ほんとに素晴らしいと思います。
micchii |  2009.07.21(火) 13:09 |  URL |  【コメント編集】

■サム・ペキンパーの墓

財布の都合とイマイチ興味が湧かなかったため、
後回しにしていた本作を、やっと鑑賞しました。
なるほど、確かに面白いですね。

でも、今まで見ていたマカロニとは異質ですね。
悪にやられて復讐では全くありませんね。
これはこれでありですが、
これも、レオーネとヴァレリの師弟共作のおかげでしょうか
最初、トニーノ・ヴァレリと聞いてイマイチだった「怒りの荒野」のあの調子かと、かまえていたのですが、いい意味で裏切ってくれました。

テレンス・ヒルの出演シーンはあわやコメディーかと疑ってしまいましたが、フォンダの渋さがそれを補ってあまりありますね。
最初サリヴァンとワイルドバンチの関係が分かりにくかったのですが、それにかかわりなくやはり燃えますね。
150対1とラストシーンは忘れがたい名シーンですね。


よしぼう |  2009.07.17(金) 23:50 |  URL |  【コメント編集】

■>ひろみったん様

初めまして、コメントありがとうございます。
なかなか反応の薄い映画へのコメントありがとうございます、凄く嬉しいです。
“ワイルドバンチのテーマ”最高ですよね。持っているCDのバージョンはなぜかテンポが遅くて微妙です・・・。
『怒りの荒野』、いつも行くGEOにDVDが置いてあるんですが、いつ行っても貸出中なんですよね(涙)
リンクありがとうございます、こちらからもリンクさせていただきました。
今後とも宜しくお願い致します。
micchii |  2006.11.10(金) 15:34 |  URL |  【コメント編集】

はじめまして!
『ミスター・ノーボディ』といえば、ご指摘通りあの“ワイルドバンチのテーマ”ですよね。個人的にはモリコーネ音楽の最高傑作の一つだと思います。
あと、監督のトニーノ・ヴァレリに関していうと、やはり『怒りの荒野』という作品はおすすめです!リー・ヴァン・クリーフの爺さんが『NY1997』なんて比にもならない、漢と漢の熱いドラマをみせてくれます。必見です。
また、勝手にリンクさせて頂いたことご容赦下さい
ひろみったん |  2006.11.10(金) 00:41 |  URL |  【コメント編集】

■>tonbori様

“マカロニと正統の贅沢なコラボレートでもあり正調マカロニでもある”、おっしゃる通りですね。
どちらかというとマカロニ色が勝っていると思いますが、ヘンリー・フォンダの存在が作品に格を与えていますよね。
テーマ音楽には触れませんでしたが、のほほんとしてこちらもお気に入りです、妙に耳に残りますよね(笑)
micchii |  2006.10.27(金) 13:24 |  URL |  【コメント編集】

■名無しの風来坊

これはひとをくった主人公ノーボディとダブル主演のヘンリー・フォンダというモノホンの西部劇スターを使ってのマカロニと正統の贅沢なコラボレートでもあり正調マカロニでもあるという(笑)
実はおいらも淀長さんの日曜洋画劇場で観て以来、好きな作品の一つです。
しかもこのテーマ音楽、耳にまた残るんだなあ(笑)
tonbori |  2006.10.26(木) 23:27 |  URL |  【コメント編集】

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マカロニ・ウェスタンの傑作「ミスター・ノーボティ」

邦題:ミスター・ノーボディ 原題:IL MIO NOME E NESSUNO 監督:トニーノ・バレリ 主演:ヘンリー・フォンダ、テレンス・ヒル 脚本:エルネスト・ガスタルディ 音楽:エンニオ・モリコーネ 製作年度:1974年 上映時間:115分 伝説の老ガンマン、ジャック・ポーレガー?...
2008/01/11(金) 07:00:27 | 毎月一日は映画サービスデーです

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