2006.06.14

『ラスト・シューティスト』(ドン・シーゲル)

ラスト・シューティスト

今回は、ジョン・ウェインの遺作として有名な、西部劇の名作『ラスト・シューティスト』です。

家々に電灯が灯るようになった1901年のネバダ州カーソン・シティーに、一人の老ガンマンが現れる…。

オープニングに、これまでのジョン・ウェイン作品の名場面が挿入されていて、当ブログでも書いた『リオ・ブラボー』のあまりにも有名なリッキー・ネルソンとのコンビプレイのシーンも出てきます。

ジョン・ウェインはこの町の旧知の医者に腰の痛みを診てもらうためにやってきたわけですが、末期の癌を宣告されてしまいます。

自らも、長年に渡る癌との闘病生活の末に、この3年後に亡くなったジョン・ウェイン。
古き良き西部が終わりを告げる1901年という設定に、闘病生活の体に鞭打って、最後の勇姿を刻みつけるため出演。
それだけでもうこみあげるものがあります。

ラスト・シューティスト ジョン・ウェイン

そんなジョン・ウェインの最期に、スターたちも寄り添います。

先ほどの医者にはジェームズ・スチュワート。
静かに最期の時を過ごそうと泊まることになった宿の、未亡人の宿主にはローレン・バコール。

老いたジョン・ウェインとジェームズ・スチュワートが静かに語るシーンはそれだけでもう絵になりますし、ローレン・バコールとちょっとしたデートに湖まで馬車で出かけるくだりでは、名手ブルース・サーティースの美しい映像が優しく二人を包みます。

ローレン・バコールの息子には、今やアカデミー賞監督となったロン・ハワードの若き日の姿。

静かに最期を迎えたいのに、かつて30人を殺した名ガンマンの登場に、町は騒がしくなります。

面倒が起きては困る保安官には早く死んでくれと言われ、殺して名を上げたい荒くれ者には命を狙われます。

刻一刻と近づく最期の時。
初めは彼を拒絶したローレン・バコールも心を開き、老いぼれと笑ったロン・ハワードも彼の正体を知った後は崇拝しています。

そして、始まったばかりのドライ・クリーニングでびっちりときめた一張羅を身にまとい、最後の決闘へと向かうジョン・ウェイン。
何も聞かずただ見送るローレン・バコール。

ラスト、人気のなくなった町の往来を捉えた俯瞰のカメラ。
一つの時代が終わりを告げたその瞬間。

『駅馬車』『黄色いリボン』『捜索者』『赤い河』『リオ・ブラボー』などなど、ジョン・フォードやハワード・ホークスと組み数々の傑作西部劇を残したジョン・ウェイン。

この10年以上も前にすでにヨーロッパでは『荒野の用心棒』が撮られ、アメリカでも7年前に『ワイルドバンチ』が古き良き西部劇を葬り去っています。

そんな中にあって、最後の勇姿を人々の目に焼きつけたジョン・ウェイン。
悲しいかな動きにかつてのキレはありませんが、存在感は何一つ変わっていません。
そこに立っているだけで十分という、スターの中のスター。

そして、ジョン・ウェイン亡き後、イーストウッドの傑作『ペイルライダー』がこの9年後、“最後の西部劇”『許されざる者』がそのさらに7年後。

2006年現在、西部劇を撮るならやはりイーストウッドをおいて他にはいないでしょう。
“最後の西部劇”などと言わず、ぜひもう1本撮って欲しいものです。

円熟の域に達した今のイーストウッドなら、ジョン・フォードの“枯淡の境地”と讃えられた『黄色いリボン』に負けないものを撮ってくれると思うんですが…。



[原題]The Shootist
1976/アメリカ/99分
[監督]ドン・シーゲル
[撮影]ブルース・サーティース
[出演]ジョン・ウェイン/ジェームズ・スチュワート/ローレン・バコール/ロン・ハワードシェリー・ノース/ジョン・キャラダイン/ヒュー・オブライアン

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『リオ・ブラボー』(ハワード・ホークス)
『黄色いリボン』(ジョン・フォード)
『ワイルドバンチ』(サム・ペキンパー)
『ペイルライダー』(クリント・イーストウッド)

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*Comment

■>samurai-kyousuke様

コメントありがとうございます。
ジョン・ウェイン、言われてみれば西部劇しか観てないような気がしてきました。西部劇自体もたいした本数観てませんが。
他のジャンルではどんな感じか、いろいろ観てみたいです。
オープニングの名場面の挿入は、ニクい演出でしたね。
micchii |  2006.06.21(水) 12:59 |  URL |  【コメント編集】

■>tonbori様

コメントありがとうございます。
ドン・シーゲルが監督というのはほんとに因縁を感じますよね。どういう経緯で彼が監督に決まったか気になるところです。
ラスト、ジョン・ウェインは背中から撃たれてますからね。これも象徴的でしたね。
micchii |  2006.06.21(水) 12:32 |  URL |  【コメント編集】

■やっぱり西部劇

ジョン・ウエイン、戦争映画、刑事もの等にも出演しておりますが、やっぱり西部劇ですね。
オープニングの数々の名場面を見るだけでジーンときてしまいます。
マックィーンの「ハンター」と並んで感慨深い映画ですねぇ~。
samurai-kyousuke |  2006.06.20(火) 18:08 |  URL |  【コメント編集】

■デュークの最後

西部劇の作法をコンクリートジャングルに持ち込んだドン・シーゲルによるジョン・ウェインのラスト・シューティング。
因縁を感じる一本ですよね。
特にラストの銃撃戦も古きよき時代への決別、いや哀悼を感じました。
tonbori |  2006.06.19(月) 21:24 |  URL |  【コメント編集】

■>5011様

コメントありがとうございます。
ほんとですよね、この映画の監督がドン・シーゲルというのは、不思議な縁ですよね。

公開当時、そんな感じだったんですか。それは嫌な思いがするでしょうね。今ここでコメント拝見しただけでもかなり嫌な気持ちになりましたから・・・。

イーストウッドも、この後『ペイルライダー』を撮るまでに9年も経ってますし、それぞれに、ジョン・ウェインへのいろんな思いがあるでしょうね。
micchii |  2006.06.19(月) 11:55 |  URL |  【コメント編集】

現実のジョン・ウェインと彼がスクリーンで演じた人物がダブるのはもちろんだけど、この映画だけを見ても静かな良い映画でした。
そして監督したのが古き良き西部劇を葬ったマカロニ・ウェスタンのスター、イーストウッドの盟友ドン・シーゲルというのも不思議な縁。

ローレン・バコールもロン・ハワードもジェームス・Sチュワート(「リバティ・バランスを射った男」で共演)、ジョン・キャラダイン(「駅馬車」で共演)も共演者はみな素晴らしい。
ジョン・ウェインが死ぬまでお蔵入りだった、というより死ぬのを待って公開した感じがあって、当時は嫌な気持ちになった映画でもありました。

5011 |  2006.06.17(土) 13:12 |  URL |  【コメント編集】

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