2004.07.12

『アンダーグラウンド』(エミール・クストリッツァ)

アンダーグラウンド

1995年度のカンヌ映画祭パルム・ドール(最高賞)受賞作。
カンヌ受賞作はほんとに錚々たる作品が並び、大好きな作品も多いですが、その中でも特に大好きな1本です。

第二次大戦中のベオグラード、武器商人のマルコは、地下室に避難民たちをかくまい、武器などを製造させ巨万の富を築く。
戦争が終わり平和が訪れた後も、彼らにそのことを教えず、ずっと地下に閉じ込め続ける。
しかし、何も知らない彼らは、今まで通りの毎日を過ごす…。

このように、時代背景や物語ははっきりいって暗いですが、暗さを微塵も感じさせず、悲しみや憎しみを、笑いと一度聞いたら二度と忘れられないあの独特の音楽と、そして圧倒的なパワーで吹き飛ばす!

その圧倒的なエネルギーのおかげか、171分をまったく長く感じさせません。
自分は2時間を超える映画は普段は一歩引いてしまいますが、これはほんとに苦になりませんでした。

ただ、体力を要するのもまた事実。この圧倒的なパワーについていくには、それなりに疲れます。
といっても、長くてだれるとかそういうのとは違い、171分ひたすらそのエネルギーに引っ張られていきます。

そして、この映画にはすべてがあります。笑えて、泣けて、突き放されて、そして考えさせられて…。

アンダーグラウンド クストリッツァ

この泣けるというのも、他の映画のような、感動して泣けるというのとは少し違います。
可笑しくて、哀しくて、気がついたら涙が止まりません。

グサッとくる台詞にも事欠きません。
「赦してくれ」「赦すけど、絶対に忘れない」、たった一言ずつのマルコとクロのこの会話。
しかし、そこには50年の年月の重みがあります。このシーンはきます…。

さらに、「僕らは痛みと悲しみと喜びをもって子供たちに、こう話します。“昔、ある所に国があった・・・”」。
普段平和な日本に暮らしている自分たちに、自らの住む『国』があるのは実は当たり前のことではないんだというのを、これまた直球で心に投げかけてきます。
そして、ついに“ユーゴスラビア”という名前が地球上から消え去ったのです。

とどめはこの言葉。「この物語に終わりはない」。
今の世界の情勢を見ていると、恐ろしいくらいに説得力のある一言でした。

最後に、カンヌでパルム・ドールを受賞したものの、あまりの賛否両論の嵐に、「映画なんてもう止めた」と言い残して放浪の旅に出てしまったクストリッツァ監督でしたが、数年後開き直った彼は『黒猫・白猫』でまたまた魅せてくれました。
これからも衝撃作を撮り続けて欲しいです。

2011.12.11 リバイバル上映鑑賞時の感想
映画館では15年ぶり。宙を舞う花嫁、戦車に乗り込む猿、生まれて初めて見る月、50年経っても続いている戦争、2回も殺されるフランツ。炸裂するイマジネーション、押し寄せる感情の波、“この物語に終わりはない”の言葉通りいつまでも鳴り止まない音楽。圧倒的。大傑作。

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[原題]Underground
1995/フランス・ドイツ・ハンガリー/171分
[監督]エミール・クストリッツァ
[出演]ミキ・マイノロヴィッチ/ラザル・リストフスキー/ミリャナ・ヤコビチ

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『七人の侍』と『アンダーグラウンド』
『アンダーグラウンド』Blu-ray発売!

 

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*Comment

■>ディープインパクトさん

初めまして、TB&コメントありがとうございます。
起きてることだけならかなり悲惨ですし、暗くしようと思えばどこまでも暗くできる話ですが、それがここまで笑えるのは凄いですよね。
しかも、笑えるだけでなく、ちゃんと考えさせられる映画でもある。ほんとに大傑作だと思います。
リンクこちらからも貼らせていただきました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
micchii |  2013.09.26(木) 23:46 |  URL |  【コメント編集】

■初めまして

 この映画は大好きです。悲惨な事が起こっているのに、ちょっと愉快な人ばかり出てきて楽しかったです。
 それともう一つお願いしたいことがありまして、私は『ザ・競馬予想(儲かるかも?)』とういうブログを運営していますが、今では競馬の予想は全く的中せずに映画の記事が多くなっています。よって相互リンクの方をよろしくお願いします。
ディープインパクト |  2013.09.25(水) 15:37 |  URL |  【コメント編集】

>おかぽん様
自分もこの映画を最初に観た時の衝撃は凄いものがありました。
劇場で2回観て、DVDでも何回か観ていますが、サントラまで持ってます(笑)
確かにうかつには記事にできない凄い作品ですよね。
アップされるのを楽しみにしています。
micchii |  2005.03.16(水) 18:46 |  URL |  【コメント編集】

■この映画について

は、なんだかうまく言葉にできないほどの衝撃を受けた作品です。ミッチー(?)さんのコメントを参考に、再度見返してみたいと思います。

なんかうろ覚えのままでは、うかつに記事にできない作品ですよね!じっくり鑑賞した後、自分で整理して記事にしてみます。


おかぽん |  2005.03.15(火) 21:15 |  URL |  【コメント編集】

>zefiro04様
訪問&コメントありがとうございます!
『黒猫・白猫』の“ヘンテコな踊り”もそうですが、クストリッツァ監督の映画は音楽も素晴らしいですよね。
彼の映画『SUPER8』で登場した彼も参加するノー・スモーキング・オーケストラというバンドの、『UNZA UNZA TIME』というアルバムを買ったんですが、このアルバムが部屋に流れている限り暗い気分とは縁がないというくらい素晴らしい一枚です(笑)
1つ目のコメント削除しておきました。
micchii(管理人) |  2005.03.08(火) 22:06 |  URL |  【コメント編集】

■私もこの映画にシビレました。

こんにちはっ。ほんと、この映画は傑作でありました。「人間」を描ききっていたと思いますです。「まだ」という人には「是非っ!」と一押しでオススメしたい一本であります。「黒猫・白猫」も観ましたよ~。この映画のデコボコな友情と、ヘンテコな踊りも良かったでッス。また来ます!追伸・上のコメント、タイトル入れる前に反映されてしまって、消し方分からずです。。すいません。消去していただけるとうれしいです。
zefiro04 |  2005.03.08(火) 08:19 |  URL |  【コメント編集】

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2016/02/06(土) 00:53:41 |

映画 アンダーグラウンド(1995) 悲惨な事が起こっているのに笑えます

 俺が中学生だった時の世界地図を見ているとユーゴスラビアという国が載っているのだが、今ではすっかり跡形も無く様々な国に分裂してしまっている。  第二次世界大戦においてはナチスに蹂躙されてしまい、冷戦時代のチトー大統領の独裁政権を経て、彼が亡き後は民族及...
2013/09/25(水) 15:38:45 | ザ・競馬予想(儲かるかも?)

人生は素晴らしい.

-エミール・クストリッツァ監督-原題「CRNA MACKA, BELI MACOR」邦題「 黒猫・白猫 」1999.8 日本公開 ユーゴスラビア(仏/独) 130min カラー/Aビスタニャニがニャンでも愛で突っ走るのよ … この完全無欠な本作のコピー.「 ストリート・オブ・ファイヤー 」を見ながら踊る
2006/10/05(木) 18:43:23 | 15夜通信

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