2006.03.13

『クリムゾン・タイド』(トニー・スコット)

クリムゾン・タイド

皆さんは、映画の中の名演説というと、どれを思い浮かべますか?

多くの方がそうだと思いますが、双璧は『独裁者』でのラストのチャップリンの演説と、『スミス都へ行く』でのジェームズ・スチュワートの議会での24時間ぶっ続けでの演説ですよね。

両作品とももちろん名作中の名作ですが、やっぱりこれでしょう!
というわけで今回は、ジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンが火花を散らした潜水艦映画『クリムゾン・タイド』です。

サスペンスなのでストーリーは省略。

いざ出航の時、降りしきる雨の中、ひさしの下に整列する乗組員たち。
そこへ、傘をさしたラムジー艦長(ジーン・ハックマン)が愛犬を連れ現れます。
「全員整列いたしました!」と艇長。

クリムゾン・タイド ジーン・ハックマン 犬

そしていよいよ、ラムジー艦長の名演説が始まります。
日本語字幕で書くとかっこよさが半減するので、長いですが原文で全て引用します。
まだましな吹き替えの日本語も下に付けます。



Ramsey: "Little ducks, there's trouble in Russia.
ラムジー「アヒルどもよ、ロシアでトラブルだ。
     So they called us.
     それで喚ばれた。 
     And we're going over there
     だから我々は行く。 
     and bringing the most lethal killing machine ever devised.
     ただし、最も凶悪な殺しのマシーンに乗ってだ。
     We're capable of launching more firepower,
     その気になれば、
     than has ever been released in the history of war.
     戦争の歴史を塗り替える程の、強力な兵器を発射できるのだ。
     For one purpose alone: to keep our country safe.
     目的はただ一つ、祖国を守るためだ。
     We constitute the front line and the last line of defense.
     我々は国防の最前線に就き、同時に最後の防衛線となる。
     I expect and demand your very best.
     諸君に望むことは、最善の努力だ。
     Anything less, you should have joined the Air Force."
     それができない者は、空軍に入ってもらいたい。」

(乗組員の間に笑いが起こる)
(ハンス・ジマーの音楽始まる)

Ramsey: "This might be our Commander-in-Chiefs Navy,
ラムジー「最高司令官は大統領であるが、
     but this is my boat.
     これは私の船だ。
     And all I ask is that you keep up with me.
     それに乗る以上は、私に従ってもらいたい。
     And if you can't
     それができない者は、
     that strange sensation you'll be feeling in the seat of your pants will be my boot in your ass!"
     ケツの辺りに刺激的な感覚を覚えるであろう、私の蹴りが入るからだ!」

(再び笑いが起こる)

Ramsey: "Mr. Cob?"
ラムジー「ミスター・コッブ!」
Cob: "Yes, sir!"
コッブ 「はい、艦長」  
Ramsey: "You're aware of the name of this ship, aren't you, Mr. Cob?"
ラムジー「この船の名前を知っておるか?」
Cob: "Very aware, sir!"
コッブ 「よく知っております!」
Ramsey: "It bears a proud name, dosen't it, Mr. Cob?"
ラムジー「それは誇り高い名前であるか?」
Cob: "Very proud, sir!"
コッブ 「誇り高い名前であります!」
Ramsey: "It represents fine people."
ラムジー「乗組員は優秀であるか?」
Cob: "Very fine people, sir!"
コッブ 「極めて優秀であります!」 
Ramsey: "Who live in a fine, outstanding state."
ラムジー「偉大なる国に住む者か?」
Cob: "Outstanding, sir!"
コッブ 「偉大なる国の者であります!」
Ramsey: "In the greatest country in the entire world."
ラムジー「そこは世界に冠たる国であるか?」
Cob: "In the entire world, sir!"
コッブ 「世界に冠たる国であります!」
Ramsey: "And what is that name, Mr. Cob?"
ラムジー「この船の名はなんだ?」
Cob: "Alabama, sir!"
コッブ 「アラバマであります!」
Ramsey: "And what do we say? "
ラムジー「気合いを入れろ!」
Ramsey & Cob: "Go 'Bama!"
ラムジーとコッブ「ゴー! バマ!」
All crew: "Roll tide!"
乗組員全員「ゴー! バマ!」
Ramsey: "Chief of the boat, dismiss the crew."
ラムジー「艇長、乗組員解散!」



見てわかるように、民主主義の理想だとか、人類愛の尊さだとか、そんな立派なことを話しているわけではありません。ただ乗組員を鼓舞するためのものです。
でも、何度聞いても鳥肌が立ちます…。

「空軍に入ってもらいたい」と「私の蹴りが入るからだ!」のところで乗組員から笑いが起きるのもいい。
絶対の上下関係にありながら、艦長の冗談に乗組員が笑うことができる、こんな些細なことが、ただ力で下の者を押さえつけているのではない、真の信頼関係を見事に表現。

隣で聞いているデンゼル・ワシントンが浮かべる笑みもたまりません。
ハーバード出のエリートの新任副艦長の彼が、叩き上げのベテラン艦長がいかにして乗組員の心をつかんでいるのか、それを目の当たりにしたこの場面。
ふと浮かべたさりげない笑みで、見事にそれを表現しています。

クリムゾン・タイド デンゼル・ワシントン

バックに流れるのは、ハンス・ジマーの涙がちょちょぎれるくらいかっこいい旋律。
『グラディエーター』の音楽もかっこよかったですが、ハンス・ジマーの最高傑作はこの作品でしょう。

主役の二人以外で特筆すべきは、アラゴルンことヴィゴ・モーテンセン。
○○○○(一番肝心なネタばれなので伏せておきます)の命令を聞いて拳を握りしめる彼を観て泣かない男は男ではありません。

クリムゾン・タイド ヴィゴ・モーテンセン

デンゼル・ワシントンに○○(同じく伏せます)を譲り、煙草をふかしつつ艦の中を降りていく哀愁溢れるジーン・ハックマンに震えがこない男も男ではありません。

クリムゾン・タイド ジーン・ハックマン

ラストのジーン・ハックマンのユーモアに溢れた台詞はもうかっこよすぎますね。
この台詞次第ではこれまでの素晴らしさがパーになるところでしたが、パーになるどころか映画を一段高いところに引き上げています。

通信の途絶えた潜水艦内という密室で繰り広げられる息もつかせぬサスペンス、それをさらに盛り上げるハンス・ジマーの痺れる旋律、自らの仕事に誇りを持った男たちが下す、何百万の人々の命を左右する決断の数々、そんな中にあっても忘れないユーモア。

必見。



[原題]Crimson Tide
1995/アメリカ/115分
[監督]トニー・スコット
[脚本]マイケル・シファー/リチャード・ヘンリック/クエンティン・タランティーノ(リライト、クレジットなし)
[音楽]ハンス・ジマー
[出演]デンゼル・ワシントン/ジーン・ハックマン/マット・クレイヴン/ジョージ・ズンザ/ヴィゴ・モーテンセン/ジェームズ・ガンドルフィーニ

→予告編 →ラムジー艦長の演説 →他の映画の感想も読む

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TB(5) CM(14) EDIT

*Comment

■>鍵コメさん

初めまして、コメントありがとうございます。
記事拝見しました。
全然問題ありません、記事を紹介していただきありがとうございます!
わざわざご連絡までいただき恐縮です。
今後とも宜しくお願い致します。
micchii |  2013.02.27(水) 20:57 |  URL |  【コメント編集】

■管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2013.02.27(水) 00:43 |   |  【コメント編集】

■>よしぼうさん

ブラッカイマー、“代表作”であろう『パール・ハーバー』や『アルマゲドン』は観る気になれませんが、傑作『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』にも名前があったり、『コヨーテ・アグリー』もお気に入りの1本です。
海賊映画は、3本とも映画館で観ていますが、2、3本目はまああんなものでしょうが、1本目は悪くないと思います。

『ケイン号の叛乱』は名前だけは聞いたことがありましたが、同じような話でしたか。
艦長がハンフリー・ボガードで、リー・マーヴィンまで出てるとあっては、ぜひとも観てみたいです。
micchii |  2009.06.26(金) 13:58 |  URL |  【コメント編集】

■ブラッカイマー印!!

「男ならこれで泣け」のエントリ作で、これは未見でした。
なぜか。

プロデューサーが悪名高いジェリー・ブラッカイマー作品だからです。一連の海賊映画のプロデューサーといえばお分かりでしょうが、何の深みもない娯楽映画を量産する製作者です。(何をいまさら感も実はありましたが)

製作会議の様子が目に浮かぶようです。
「潜水艦であの名作映画やろうぜ」
「一度じゃ甘いから、何度か繰り返してハラハラさせようぜ」
「核戦争の危機とか出して危機感あおろうぜ」
あの名作は言うまでもない「ケイン号の叛乱」
ハンフリー・ボガードがノイローゼで虚言癖のあるイヤな艦長を熱演し、見かねた副長から船の指揮権を剥奪されるという作品です。

本当に半信半疑で見出した「クリムゾン・タイド」
しかし、トニー・スコット監督のたたみかけるような演出。
デンゼル・ワシントンとジーン・ハックマンの男の意地をかけた対決に、何度も同じこと(艦の指揮権、ミサイル発射権の奪い合い)をやっているはずなのに、結果も分かっているはずなのに、胸が熱くなり、手に汗を握り締めて見入ってました。

ブラッカイマーの高笑いが聞こえてきそうです。
でも、いいものはやはりいいですね。(最初とまるで違う)
よしぼう |  2009.06.23(火) 19:40 |  URL |  【コメント編集】

■>イエローストーン様

こちらこそありがとうございます。
ジーン・ハックマン、完全にデンゼル・ワシントンを喰ってましたよね。
存在感がずば抜けてました。
トニー・スコット、『ドミノ』あたりを観ると、相変わらず、そんなにカメラを動かすなよ!とつっこみたくもなるんですが、なぜか「巨匠」になってしまったお兄さんよりは、“単純に面白いものを作る”という姿勢に好感が持てます。
micchii |  2006.10.31(火) 15:05 |  URL |  【コメント編集】

■コメント&TBありがとうございました

私の方へもコメント&TBありがとうございました。
ジーン・ハックマンいいですね。
あの演説も部下の心をつかむ、まさしく名演説ですね。デンゼル・ワシントンもいいのですが、私はジーン・ハックマンばかりに目がいってしまいがちでした。
でもトニー・スコットはずいぶんよくなりましたよね。
では、また。
イエローストーン |  2006.10.30(月) 13:39 |  URL |  【コメント編集】

■>bibi様

コメントありがとうございます。
ジーン・ハックマンが子犬を連れてくるのは、演説直前ですね。
あのシーン、腰から下くらいしか映らなくて、構図的にむちゃくちゃかっこよかったです!
立ち姿フェチですか(笑)
でも、ジーン・ハックマンも立っているだけで絵になりますよね。
チョウ・ユンファと並べるだけのものがありますね。
micchii |  2006.03.16(木) 11:46 |  URL |  【コメント編集】

■昔に劇場で観ました!

この演説シーンも覚えております。
迫力ありましたモン!ヴィゴ・モーテンセンも良かったし。でもなによりジーン・ハックマンが子犬(でてきたと思うのですが)を連れて来たときの絵が対照的で印象に残っています。そしてこの映画をみてジーン・ハックマンの立ち姿に惚れました。立ち姿フェチとしましては西のジーン・ハックマン、東のチョウ・ユンファと男の色気は立ち姿だと思う次第です。
bibi |  2006.03.15(水) 17:33 |  URL |  【コメント編集】

■>cardhu様

トニー・スコットに不安を覚えるというのもよくわかりますが(笑)、最近の大作路線のお兄さんより、この映画や『エネミー・オブ・アメリカ』のトニーの方が自分は好みです。
特にこの作品は文句なしに面白いですよ。ぜひ!
ニーノ・ロータやエンニオ・モリコーネが偉大なように、ハンス・ジマーも偉大です!!
micchii |  2006.03.15(水) 12:24 |  URL |  【コメント編集】

■>chibisaru様

TB&コメントありがとうございます。
ほんとにハラハラドキドキでしたよね。潜水艦ものはなんといっても密室空間ですし、一瞬の迷いが即命取りになりますし、面白くなる要素は揃ってますよね。
「貴様に味方したんじゃない、規則に従っただけだ」というジョージ・ズンザ扮する艇長の判断なんか痺れましたね。
micchii |  2006.03.15(水) 12:18 |  URL |  【コメント編集】

■>hi-chan

こちらにもコメントありがとうございます。
もう10年になりますね~。
“ハラハラドキドキ!”カテゴリーに入れようかと思ったんですが、やっぱり“男ならこれを観ろ!”だろと思い直し、こちらにしました。
でも、ほんとにハラハラドキドキですよね。
ヴィゴ・モーテンセン、かなりおいしい役ですよ!次回ご覧になる際にはぜひ注目してみて下さい。
少し前にもTVでやってましたよね。自分はDVDも持っていて、演説のシーンだけなら軽く100回は観ています(笑)
ちょっと自分自身に気合を入れたい時、たった数分でその役割を果たしてくれるので、重宝しています。
micchii |  2006.03.15(水) 12:08 |  URL |  【コメント編集】

 映画は未見(トニー・スコットに不安を覚えるもので…笑。でもこれはよさそうですね)ですが、サントラは愛聴しています!『ザ・ロック』とか『ピースメーカー』も似た路線で匹敵する素晴らしさ…ハンス・ジマーは偉大ですね。
cardhu |  2006.03.13(月) 20:58 |  URL |  【コメント編集】

■手に汗握る映画でしたね

こんにちは。
まさに手に汗握る男達の映画って感じでした
元々潜水艦モノってハラハラドキドキ感があって好きなのですが、これはそれにも増してあの通信が途絶えた時の乗組員たちの取った行動などとても素晴しかったです。また見直してみようかしら・・・(笑)
chibisaru |  2006.03.13(月) 19:49 |  URL |  【コメント編集】

■昔から・・・

これ、試写会で観ました。
もう10年くらい前じゃないですかね。10年前から試写会行ってたんだ、私(笑)
そして、ハラハラドキドキ、凄く面白かったのを覚えてます。詳しいストーリーは忘れちゃいましたが。
私って昔から、「男なら・・・」系が好きだったんですねぇ(^^;

そして、ヴィゴ・モーテンセンが出てたなんて!全然知らなかったですよ!!
時々TVで放映しますよね、この映画。
またやってくれないかな~
hi-chan |  2006.03.13(月) 15:32 |  URL |  【コメント編集】

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