2006.01.20

『地球で最後のふたり』(ペンエーグ・ラッタナルアーン)

地球で最後のふたり

今回は、素敵な恋をしよう!(まだまだ募集中です!)に投稿していただいた中から、にじばぶ様ご推薦、『地球で最後のふたり』です。
にじばぶ様、ありがとうございます!

→にじばぶ様の記事はこちら

片や気になっていた女性、片や妹、目の前で同じ女性の死を目撃した男と女。
言葉も満足に通じない二人が、徐々に心を通わせていく…。

バックに流れるのは、女の日本語の勉強のためのカセットテープ。
交互に流れる日本語とタイ語、言葉の通じない二人に代わって、とりとめもない会話がひたすら流れます。

それでも、片言の英語と、わずかに知っている日本語とタイ語で、少しずつコミュニケーションを取る二人。

一人の時はいつも自殺のことしか考えていない男と、妹を失った孤独に泣く女。
笑顔を忘れた二人が、一緒にいることによって、少しずつ笑みを見せるようになっていきます。

散々に散らかった部屋を片づけ、一緒に麺を食べ、ダンスダンスレボリューションを競い、くだらない映画(ドラマ?)を観る。

何一つ特別なことは起きない、淡々と過ぎていく日々。

地球で最後のふたり

女が灰皿代わりにグラスを机に置いているものの、灰はその上に落ちてなく、そっとグラスをずらす男。
そんな何でもないやりとりが、どこまでも愛おしい。

ゆっくりと流れる時間の中、クリストファー・ドイルのカメラは、かけがえのない瞬間を切り取っていく。
かすかに聞こえる、パタヤーの海の波の音も心地よい。

しかし、女はかねてからの予定通り、日本(大阪)に旅立つことに。

しばらくは戻ることもないと思っていた日本、しかし男は何も言わず女を空港で待たせると、パスポートを取りに家へと急ぐ。
しかし…。

この先は観てのお楽しみとしておきますが、ラストシーンの余韻は特筆もの。


そして、滞在時間はわずかでしたが、管理人自身もパタヤーに行ったことがあるので、この映画の中に流れる空気は、頭でなく肌で感じることができました。

これを観ると、ウォン・カーウァイ作品における、クリストファー・ドイルの重要性を再認識せざるを得ませんね。
ウォン・カーウァイ作品の世界の一翼を担うのは魅力的な台詞とナレーションの数々ですが、“雰囲気”を作り出しているのはクリストファー・ドイルだと、この作品を観て改めてそう思いました。


それにしても、突然の三池監督の登場以外は(監督、この映画で「青海苔」はないでしょ「青海苔」は!)、ほんとに何も起きない話。

しかし、これは『あの夏、いちばん静かな海。』でもそうでしたが、何も起きないからこそ、何でもないことがこんなにも愛おしい。
隣に座り、共に食べ、笑い、海を眺めてくれる人がいる。
それがどんなに幸せなことか。

パタヤーの海の波の音は、忘れてしまいそうな大切なものを、そっとこの胸に運んでくれます。



[原題]Ruang rak noi nid mahasan
2003/タイ・日本・オランダ・フランス・シンガポール/107分
[監督]ペンエーグ・ラッタナルアーン
[撮影]クリストファー・ドイル
[出演]浅野忠信/シニター・ブンヤサック/ライラ・ブンヤサック

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『あの夏、いちばん静かな海。』(北野武)

 

TB(6) CM(12) EDIT

*Comment

■>keiko様

こちらこそTB&コメントありがとうございます。
凄く淡々とした映画なので、それが肌に合わないとダメかもしれませんね^^;
おっしゃるように、浅野忠信はいい体してましたね。
micchii |  2006.01.23(月) 13:35 |  URL |  【コメント編集】

■>楽蜻庵別館 みのり様

コメントありがとうございます。
他にもTBがうまくいかないという方がいらっしゃいましたが、FC2だめですね・・・。
お手数をおかけして申し訳ありません。
micchii |  2006.01.23(月) 13:14 |  URL |  【コメント編集】

■>nofx100 (廣瀬研一映画感想文)様

こちらこそコメントありがとうございます。
北野映画、感じさせますよね。引き算の美学、日本とタイ、アジアに共通する感覚でしょうか。
micchii |  2006.01.23(月) 13:04 |  URL |  【コメント編集】

■>オカピー様

コメントありがとうございます。
TBできずに申し訳ありません・・・。
映画10000本ご覧になっているとは凄すぎます!!
micchii |  2006.01.23(月) 13:00 |  URL |  【コメント編集】

■>orang-u様

コメントありがとうございます。

>通じる日本で分かり合えない居心地の悪さより初めから通じない孤独を採った方が良いと思えます。しかしその孤独を癒すのは通じない人との少しの共通点を見る瞬間です。

見事にこの映画のポイントを突いてらっしゃいますね。
その瞬間を見事に描いていましたよね。

時々とおっしゃるということは、何度かタイに行かれているんですね。
自分は一度行ったことがあるだけなので、ぜひもう一度行きたいと思っています。
micchii |  2006.01.23(月) 12:54 |  URL |  【コメント編集】

■>にじばぶ様

コメントありがとうございます。
“脚きり”は楽々突破ですよ(笑)

>「合格発表の時に、掲示板で自分の番号を発見し、それを家族に報告する為に、電話ボックスまで走る」時の様な緊張

面白い例えですね。でもわかる気がします。

好き過ぎてどこが好きかわからないというのはありますよね。
自分も最初に『恋する惑星』をUPした時そうでした。ただ好きなシーンを羅列しただけでしたから。
この前ようやく数年ぶりに本格的に書き直しましたが。

この映画は、やっぱりタイに行ったことがあるというのがかなり大きいと思います。
あの“湿度と空気の肌触り”は、ほんとに体験した者にしかわからないですからね。

三池監督のシーン、賛成派いるんですか?(爆)

この映画、にじばぶさんにお薦めしていただかなければたぶんずっと観ることもなかったと思いますので、ほんとに感謝しています。
ありがとうございました。
micchii |  2006.01.23(月) 12:48 |  URL |  【コメント編集】

■TBありがとうございます。

私はあまり好きでないタイプの映画でしたが
映像的にはよかったのかも。。
keiko |  2006.01.22(日) 02:12 |  URL |  【コメント編集】

micchiiさん、TBありがとうございます。
こちらからもTBさせていただいたのですが、上手くいきません。 またしばらくしてから試してみます。
楽蜻庵別館 みのり |  2006.01.20(金) 23:11 |  URL |  【コメント編集】

■トラックバックありがとうございました。

はじめまして。
感想の中で「あの夏、いちばん静かな海」を引き合いに出していらっしゃいますが、私も観ていて北野映画の雰囲気を感じていました。とても優しさを感じる映画でしたね。
micchiiさん、TBありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
nofx100 (廣瀬研一映画感想文) |  2006.01.20(金) 18:39 |  URL |  【コメント編集】

■TB有難うございました。

FC2とは相性が悪く、TB返しが出来ません。悪しからず。
オカピー |  2006.01.20(金) 16:54 |  URL |  【コメント編集】

■通じない国

私もタイには時々行きます。(パタヤにも立ち寄ります)タイは通じない国ですが、そこにいて心地良いのは初めから通じないと分かっているからです。通じる日本で分かり合えない居心地の悪さより初めから通じない孤独を採った方が良いと思えます。しかしその孤独を癒すのは通じない人との少しの共通点を見る瞬間です。なかなか面白い視点で作られた映画ですね。
orang-u |  2006.01.20(金) 14:06 |  URL |  【コメント編集】

■ブログで一番緊張したひととき。

ひゃ~。
こ、こんなにもよそ様のブログを読んでいて緊張したことはありません。

「自分のイチオシ映画が他人のブログにUPされた」というのが、ここまで緊張した理由では決してございません。
他でもない、ミッチーさんのブログであったからです。(笑)

ミッチーさんのブログは、「気に入った作品のレビューしかUPされない」という“脚きり”があります。
これをクリアーしたことは、私のブログへの書き込みで知りました。
その時、まるで「困難なモノに合格した際の興奮の様なもの」が、どっと押し寄せたのです。
このページへ飛んでくる、ほんの1,2秒の間、たまらなく緊張しました。(笑)

いってみれば、「合格発表の時に、掲示板で自分の番号を発見し、それを家族に報告する為に、電話ボックスまで走る」時の様な緊張という感じでしょうか。

そして、何よりミッチーさんの書くレビューは詳細であることが魅力です。
自分はこの作品をあまりにも好き過ぎて、一体どこが好きなんだか分からない状態なのです。
なので、こうして第三者にその素晴らしい部分を書いて頂くことは、興味津々ですし、うきうきしてしまいます。

「この先は観てのお楽しみとしておきますが、ラストシーンの余韻は特筆もの。」

この部分を読んだ際には、鳥肌が立ちました。
また観たくなりました。
ありがとうございます。(笑)

「そして、滞在時間はわずかでしたが、管理人自身もパタヤーに行ったことがあるので、この映画の中に流れる空気は、頭でなく肌で感じることができました。」

私もパタヤではありませんが、タイには滞在したことがあるので、すごく分かります!
あの、タイの湿度と空気の肌触りは、まさしく頭でなく肌で感じられると魅力が倍増すると思います。

もちろんドイルの映像も最高でしたよね!
これに関しては、お互いドイル好きなので、ここで詳しく書かなくても通じると思いますので、割愛させて頂きます。(笑)

残念なのは、三池監督のシーンですね。(苦笑)
これは賛否両論もあるでしょうが、私は「いらない派」です。
三池監督は嫌いなどころか大好きな監督さんですが、この作品には必要なかったと思います。
この作品に流れる空気と不協和音を起こしていました。(笑)

私の大好きな作品を、ここまで早く観ていただけてとても感動しました!
ありがとうございました<m(__)m>

にじばぶ |  2006.01.20(金) 14:03 |  URL |  【コメント編集】

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