2005.12.27

『愛の神、エロス~エロスの純愛・若き仕立屋の恋~』(ウォン・カーウァイ)

愛の神、エロス

「覚えてる?私達の出会いを」
「覚えてます」

「触れた手は?」
「覚えてます」

まだ見ぬあなたの、初めて聞いた声は男に抱かれる喘ぎ声だった。
そして、あなたの手がこの体に触れたあの瞬間、全ては始まった。
たった一度の触れ合いが、永遠の愛の始まりだった…。

若き仕立屋見習いへの、女からの助言。
「この感触を忘れないで。そうすれば、美しい服を作れる」
恍惚の時間…。


他の男に会うための服を仕立て、他の男と電話で話すのを傍らで聞き、それでも男は今日も女の部屋を訪れる。

愛の神、エロス チャン・チェン コン・リー

しかし、ある日女は男の前から姿を消す。


数年後の再会。

「また・・・服を作ってくれる?」

「採寸して」
「必要ありません。あなたの体型は知ってます。この手が覚えてます」

愛の神、エロス コン・リー チャン・チェン

背後から、女の体に手を滑らせる男。
肩、腕、腰…。
強く抱きしめる男。
涙を流す女。


他の男に抱かれる声を聞き、舞い戻った誰もいない仕立工房で、机に置かれた女のドレスに手を入れる男。

愛の神、エロス チャン・チェン


そして、最後の時。
「手じゃイヤ?」
蘇るあの日の感覚…。


元々は1930年代の上海を舞台に撮りたかったようですが、SARSの影響で断念し、結局は“いつもの”1960年代香港。

オープニング、闇夜に浮かび上がる電灯の灯りと雨音だけで、もう一気にウォン・カーウァイの世界に引き込まれます。

“想い”を描かせたらウォン・カーウァイは凄いですが、今回は、若き仕立屋の高級娼婦への想い。

オープニングの会話がラスト近くでまた繰り返されますが、オープニングでは画面に映っているのはチャン・チェンだけで、コン・リーは声だけ。

2回目は二人とも映ります。
凄いのは、声から想像していたコン・リーの姿と、実際に現れたコン・リーがほとんど違わなかったこと。
声だけで姿まで想像させたコン・リーは凄い。

そして、たった40分で女の一生を見せきりました。

見習いから一人前の仕立屋までを見事に演じきったチャン・チェンも素晴らしい。

コン・リーとチャン・チェンという完璧な配役を得て、まさにウォン・カーウァイの世界。

『2046』にはがっかりしましたが、『欲望の翼』『楽園の瑕』『花様年華』(『恋する惑星』はまた少し違うのでここでは除きます)の、あのウォン・カーウァイが帰ってきました。

この映画、オムニバス映画『愛の神、エロス』の中の一作で、他のソダーバーグとアントニオーニのには裸の女性が出てきますが、脱がないこの映画の方が遙かに官能的。

自分がウォン・カーウァイ監督の大ファンだということを差し置いても、3作品の中ではずば抜けてますね。


「余白や空白が多ければ多いほど、人間の想像力はかきたてられる」
~ウォン・カーウァイ~



[原題]愛神之手
2004/フランス・イタリア・ルクセンブルグ・アメリカ・中国/109分
[監督]ウォン・カーウァイ
[原案]ミケランジェロ・アントニオーニ
[撮影]クリストファー・ドイル
[美術・衣装]ウィリアム・チャン
[出演]コン・リー/チャン・チェン

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『欲望の翼』(ウォン・カーウァイ)
『恋する惑星』(ウォン・カーウァイ)
『楽園の瑕』(ウォン・カーウァイ)
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(ウォン・カーウァイ)
『グランド・マスター』(ウォン・カーウァイ)

 

TB(3) CM(9) EDIT

*Comment

■>テコさん

返事が遅くなり申し訳ありません、またまたコメントありがとうございます!
玄関に貼ってあるとは!いつも家に帰って来る度にこの視線が待っているわけですねw
他の2本は脱いでますが、脱いでない方が断然エロい、ウォン・カーウァイ、さすがです。
micchii |  2012.03.22(木) 23:49 |  URL |  【コメント編集】

■監督にしては・・・

大分主題どうりで、ちょっとテレながらがん見チラシは額に入れて玄関に貼って?あるくらい好きです。チャンさんが美しい!もー最高。他の2本は今だ観てません。
テコ |  2012.03.21(水) 11:15 |  URL |  【コメント編集】

■>リーチェン様

コメントありがとうございます。
新年のご挨拶は、今からそちらのブログに伺ってさせていただきます。
micchii |  2006.01.05(木) 13:25 |  URL |  【コメント編集】

こちらからですが、あけましておめでとうございます&今年もよろしくお願いいたします。

DVDも購入されたんですね。素晴らしい!!!トリオロジーと言いながらもやはりカーウァイ監督の40分がとてもよかったです。

この作品は本当に反響が少なくて、ご覧になった方は少ないのかと思っていましたが、カーウァイファンなら、絶対にオススメですね。

リーチェン |  2006.01.04(水) 11:36 |  URL |  【コメント編集】

■>にじばぶ様

コメントありがとうございます。
早速ご覧になったんですね!

DVDに付いていた解説によると、このトリロジー企画の発案者であるプロデューサーたちが用意した多くの候補者リストの中から、アントニオーニがカーウァイとソダーバーグを選んだとあったので、アントニオーニにとっても、カーウァイは何か自分と相通じるものがあったんでしょうね。
数十分しか彼の作品を観てない自分が言うのもなんですが、二人は、物事を“感覚で捉える”ところが似ているなぁなんて思ったりしました。

「春光乍洩」の話は初めて知りました。
貴重な情報ありがとうございます!

そして、アントニオーニのを凡作と言っていただいて救われました。
もしこれを傑作と言われたら、この先アントニオーニ作品にチャレンジするのがつらくなったでしょうから・・・。
これが凡作なら、まだ希望は大いに残ってそうです(爆)
“少しだけアントニオーニ”という表現ウケました(笑)

ソダーバーグのは、知り合いかナンパかまでは観る人の解釈に委ねられてるでしょうが(たぶんナンパ)、どちらにせよ、ドクターがアプローチしていたのは通りを歩いている女性でしょうね。
紙飛行機などで注意を引くことに成功したので、下で待たせておいて、早くデートに行きたい、彼が仕事をさっさと切り上げて出て行ったのは、下にいる女性に会いに行ったんでしょうね。
micchii |  2005.12.29(木) 13:16 |  URL |  【コメント編集】

王監督の「ブエノスアイレス」の原題「春光乍洩」は、アントニオーニ監督の「欲望」の香港公開タイトルらしいです。それくらい彼に影響受けている王監督ですから、引き受けない訳ありません。

という記事を発見しました。
とても嬉しい話です^^
にじばぶ |  2005.12.28(水) 22:47 |  URL |  【コメント編集】

■アントニオーニ。

やっと観れました、『愛の神、エロス』。
おっしゃる様に、ウォン・カーウァイの短編にはしびれました!
あの頃のカーウァイが帰ってきたっていう感じで、嬉しいですね~。

しかし・・・
アントニオーニのは。。

確かに凡作の感は否めませんでしたが、男女がゆっくり歩くだけのシーンとか、男女の不毛な会話とか、画面から伝わってくる雰囲気とか、印象的な建造物とか、少しだけアントニオーニしてました。(笑)

いずれにしても、「カーウァイとアントニオーニ」が一本の映画で競演したという時点で、私には信じられないことです。
(アントニオーニとカーウァイが、カンヌ映画祭で会話をして、そこからこの作品が生まれたというエピソードが嬉しいじゃないですか!)

幸せな100分ちょっと・・・いや、ソダーバーグのは抜かすんで、80分ちょいですね。(爆)
ソダーバーグの作品で、ドクターが外に気を取られていますが、何に気をとられているのかが分かりませんでした。
あれはなんだったんでしょうか・・・
(敢えて何かは描かれていなかったんでしたっけ?!)
アントニオーニのみたいに雰囲気で魅せる作品というわけでもないので、意味が分からないとストレートに厳しいです。
退屈でした。
にじばぶ |  2005.12.28(水) 22:11 |  URL |  【コメント編集】

■>hi-chan様

こちらこそ、コメントありがとうございます。
R指定、大丈夫でしたか(笑)
これくらいは書かないとこの映画の魅力が伝わらないと思って、結構勇気出して書きました(笑)

チャン・チェン、特典映像の素の顔を見ると、かなり頑張ってると思いますが、おっしゃるように、ラストの表情はちょっと弱かったですかね。
でも、まだ若いですから、『殺人の追憶』のソン・ガンホのような顔力を期待するのは難しいですね。

ソダーバーグのは、お医者さんが患者そっちのけで外に夢中になってるところとかは面白かったんですけどね。
レビュー、楽しみにしています。

『2046』、おっしゃるようなトニーとコン・リーのキスシーンとか、終わった後缶にお金を入れるチャン・ツィイーとか、随所に好きなシーンはあるんですが、全体的に、“薄い”んですよね。
これは、上映時間の長さが原因じゃないかと思ってます。
『花様年華』までは、長くても100分だったのに、この映画だけ急に130分。
ウォン・カーウァイの映画って、狂おしいほどの想いが詰った濃密な時間が流れているのに、時間が長くなったことによって、ぎゅっと詰っていたものが、薄れてしまったのではないかと。
あと、ウォン・カーウァイって、凄く狭い世界を描いてると思うんですよ。それが、『2046』では一気に世界が広がっちゃって、それが好きという方ももちろんいるでしょうが、自分には何かが足りなかったですね。
逆に、『若き仕立屋の恋』は凄く凝縮されていて、これを待ってたんだ!って、“ウォン・カーウァイの世界”を堪能しました。

ウォン・カーウァイ作品は、『2046』以外はいつでも観れる状態なんですが、『2046』だけ持ってなかったところを(もう観ることはないと思って)、つい最近ヤフオクにスペシャルエディションが1000円で出ていたので、どうせなら全部揃えておくかと、思わず落札してしまいました。
観ることはあるんでしょうか・・・。

長々と失礼しました。
micchii |  2005.12.28(水) 14:54 |  URL |  【コメント編集】

■こんばんは。

もう1個のブログの方にコメントありがとうございました。
R指定のレビューですか?(笑)いやいや、いつも通り魅力的なレビューでしたよ。
私もレビューをどうしようかと迷ってましたが、micchiiさんのを読んだら、もう私は書かなくていいかな、と思ったりして。
コン・リーはもちろん、チャン・チェンの演技も良かったです。ただ、最後のチャン・チェンの表情は、あと一歩かな~と思いました。画面には気持ちが出てるんだけど、私の所までは届いて来ませんでした。オシイ!

>脱がないこの映画の方が遙かに官能的。
これには、同意です。
アントニオーニのは、よく分からなかった。ソバーダーグのは、あれはコメディ?別の意味で面白かったんですけど(笑)
ああ、でもやっぱりレビュー書こうかな…もちょっと迷う事にします。

「2046」不評ですねぇ(苦笑)。私は結構好きなんですケド。「花様年華」より好きです。映画の雰囲気も音楽も。トニーとコン・リーのキスシーン、何度観ても涙が出るんです (^^;
hi-chan |  2005.12.27(火) 22:01 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://micchii.blog4.fc2.com/tb.php/306-0d98e63e

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

『愛の神 エロス』’04・米・伊・仏・中

あらすじ「エロスの純愛~若き仕立屋の恋」1960年代の香港、高級娼婦のために服を縫い続ける仕立屋の一途な愛。「エロスの悪戯~ペンローズの悩み」1950年代の広告クリエーターは、精神分析医を訪ね夢の解析を依頼する。「エロスの誘惑~危険な道筋」真夏のイタリ..
2006/06/25(日) 19:25:48 | 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ

愛の神、エロス

ウォン・カーウァイ、スティーヴン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニーニ。かつてカンヌ映画祭を制した、名匠3監督による、愛とエロスをテーマにしたオムニバス映画。なんか「エロス」と聞くと、どうしてもいやらしい意味で捉えられがちだけど実は、....
2006/01/08(日) 19:39:15 | 映画とはずがたり

「愛の神、エロス」(04フランス、イタリア、ルクセンブルグ、アメリカ、中国)

~エロスの純愛~「仕立て屋の恋」でウォン・カーウァイが見せた無償の愛とは・・・
2006/01/04(水) 11:32:26 | Happy Together

▲PageTop

 | BLOGTOP |