2005.11.17

“エンターテイメント”としての映画

前回ハリウッドにはうんざりということを書きましたが、ハリウッドへの期待も込めて、今回はこんな話を。
題材は、双葉十三郎氏とバリー・ウォン監督の言葉から。

まずその前に、以前『キル・ビル』の記事で、『ホワイトハンター ブラックハート』の中の、「映画を作るときは誰がそれを見るかなんて考えてはいけない。ただ作ればいいんだ。自分の作りたいものをな」という台詞を紹介しました。
そしてそれは、イーストウッドの思いでもあると。

自分の作りたいものを作る、これが許される監督はそう多くありません。

すでに名作・傑作を撮っており、名匠・巨匠と呼ばれているからこそ、資金のことを気にせずにこういうことができるわけです。
あのイーストウッドですら、『ミリオンダラー・ベイビー』では資金集めに相当苦労したようですが。

そして、才能のある人たちが作りたいものを作るわけですから、多くの場合それは素晴らしい作品になるわけです。

アキ・カウリスマキ、マイク・リー、ケン・ローチ、エミール・クストリッツァ、テオ・アンゲロプロス、ヴィクトル・エリセ、ジム・ジャームッシュなどなど、監督名だけで観に行くような監督たちはみんなそうです。

その一方で、ハリウッド大作を筆頭に、“エンターテイメント”としての映画があります。

そんなエンターテイメントとしての映画について、今も忘れられない言葉があります。

このブログでも何度か紹介しています、双葉十三郎氏の『外国映画ぼくの500本』という本。

雑誌『SCREEN』に掲載されていた例の「ぼくの採点表」から選りすぐった500本なわけですが、『市民ケーン』と『ストリート・オブ・ファイヤー』に同じ点をつけるということだけでも、双葉さんの映画への接し方が大好きです。

そして、この本の中に、涙が出るほど素晴らしい一節がありました。
それは、ウォルター・ヒル監督やジョン・バダム監督について触れた箇所です。

彼らは高度なプログラム・ピクチャー作家ともいうべき人たちで、黙々と娯楽映画を作り続けている。彼らは、ジム・ジャームッシュやヴィム・ベンダースのように、映画雑誌や一般誌の映画特集で決して論じられることがない。しかし普通のファンは見終わって、監督の誰かも知らず、「今日の映画けっこう面白かったね」とおしゃべりしながら席を立ってくれるのである。こういうプロたちもいる。
via: 外国映画ぼくの500本

この言葉にはほんとにガツンとやられました。
自分はそれまで、正直に言うと、先ほど並べた監督たちのような作品に比べ、娯楽作品を下に見ているようなところがありました。
もちろん観ないわけではなくて観ますし、大好きな作品もたくさんありますが。

ただ、前回書いたような惨状を思うと、またもや下に見たくもなりますが。
この言葉を書いた双葉氏ですら、CG全盛の最近のハリウッド映画にはうんざりしてるみたいですし…。

ここで話は急に香港に飛びますが、管理人も最近ずっとはまっている香港映画。

先ほど並べたような監督名だけで観に行く筆頭は、ウォン・カーウァイ監督でしょう。
管理人も大好きで、『愛の神、エロス』はまだ観れていませんが、それ以外は全部観ています。
どの作品も好きですが、中でも『恋する惑星』『楽園の瑕』『欲望の翼』の3本はたまらなく好きで、繰り返し繰り返し観ています。

一方、娯楽の頂点はもちろんバリー・ウォン監督。管理人はまだ少ししか観たことがありませんが。

最近バリー・ウォン監督のインタビューを読んだんですが、「ご自分の映画スタイルを一言で表現するとしたら?」という質問に、こう答えていらっしゃいました。

「私の映画のスタイルは、お客さんを楽しませ続けるものであること。自分が先に楽しむものじゃない、ということです」

さすがバリー・ウォン監督、一言で香港映画の素晴らしさを言い表しています。
これだから香港映画はやめられません。

外国映画ぼくの500本外国映画ぼくの500本 (文春新書)
双葉 十三郎



 

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*Comment

■>サンタパパ様

コメントありがとうございます。
なるほど、お客さんを相手にするという点で共通していると、より王晶作品に愛着がわかれるでしょうね(笑)

『超級學校霸王』、記事拝見しました。
面白すぎます!!何度も笑わせていただきました。
さすが『大英雄』と並んで、トホホ系松にランクインしているだけのことはありますね。
ぜひぜひ観てみたいです!
「べたなギャグを1つかませば寒いが、100万かませば英雄になる」、珠玉の名言ですね(笑)
micchii |  2005.11.21(月) 13:37 |  URL |  【コメント編集】

■>JB's様

いつもコメントありがとうございます!
『赤い河』、あのパンチには、そんな舞台裏があったんですね。感想はUPしていませんが、『赤い河』、大好きな映画です。

なるほど、芸術映画は感性とセンスだけでなんとかなりますが、おっしゃるように、エンターテイメント映画の方が、職人芸が要求されますよね。

ユエン・ウーピンがハリウッドで活躍したりしているのも、香港の方に一日の長があるんでしょうね。
ハリウッドに派手さでは負けても、“職人芸”を感じさせてくれるのは香港映画のアクションの方ですものね。
micchii |  2005.11.21(月) 13:27 |  URL |  【コメント編集】

「私の映画のスタイルは、お客さんを楽しませ続けるものであること。自分が先に楽しむものじゃない、ということです」
これは私も及ばずながら、音楽をやっている時に常に念頭に置いていることですね。私の場合は、「自分が楽しむ分、もっとお客さんを楽しませたい」ですけど。
だからきっと、私は王晶作品が好きなのに違いありません(笑)。
王晶プロデュース作品も随所に王晶らしさが垣間見れますが、王晶らしい作品のひとつとしてオススメは『超級學校霸王』(http://santapapa.exblog.jp/2693661)ですね。脱力系ギャグの応酬といい、なんでもアリといい。日本では発売できない(苦笑)映画ですが、向こうではDVDも出ているので機会があったら見てみてください。非常~~~にくだらないですが、私には非常~~~に面白い映画でした。
サンタパパ |  2005.11.21(月) 03:46 |  URL |  【コメント編集】

エンターテインメント映画を
撮るのも、観るのも年季がいります。

『赤い河』でH・ホークス監督はモンゴメリー・クリフトに
本当の殴り方をおしえてやったと自伝に書いてましたが、
パンチ一つで人物の性格がガラリと変わってしまう。

芸術映画は研ぎ澄まされたセリフが勝負。
エンターテインメント映画はこれ以上、
凝縮できないというアクションのバクハツが命。

そのアクションを
ちゃんとやれるか、撮れるか、編集できるか
というのは職人芸の世界でしょう。

その点、香港映画はアクション監督が
スタントから撮影、編集まで関与するだけに
安心して観てられます。
JB's |  2005.11.20(日) 10:00 |  URL |  【コメント編集】

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