2005.11.07

『シンシナティ・キッド』(ノーマン・ジュイソン)

シンシナティ・キッド

今日は11月7日。
映画ファンにとっては、特別な日ですよね。

1980年11月7日、不滅のスーパースター、スティーヴ・マックィーンが亡くなった日。

というわけで、『華麗なる賭け』『タワーリング・インフェルノ』に続いて、スティーヴ・マックィーン第3弾『シンシナティ・キッド』です。
監督は『華麗なる賭け』と同じノーマン・ジュイソン。

自他共に認める“スタッド・ポーカー”の名手キッド(マックィーン)。
彼の暮らすニュー・オリンズに、長年に渡ってこの世界の頂点に君臨する“ザ・マン”ことランシー(エドワード・G・ロビンソン)が現れる。
ついに訪れたNo.1への挑戦のチャンス、キッドの“ザ・マン”への挑戦が今始まろうとしていた…。

こう書くとポール・ニューマンの『ハスラー』と同じような感じですが、マックィーンファンの管理人の好みは断然こっち。

『大脱走』『荒野の七人』『ブリット』『ゲッタウェイ』などが、彼の“動”の魅力が炸裂した傑作であるのに対し、この作品は“静”の魅力を存分に楽しめる逸品。
アクションシーンなんかなくても、ただ街を歩くだけで、ただ煙草に火をつけるだけで、もうそれだけで絵になるかっこよさ。

ズームを多用したポーカーの場面の緊迫感、心を読み合う目での闘い、流れる一滴の汗、固唾を飲んで見守るギャラリー。

“ザ・マン”の術中にハマり、一人また一人とメンバーが減っていき、ついに二人きりになるキッドとランシー。

シンシナティ・キッド

自信に満ち溢れたマックィーンの目、マックィーンを正面から受けきるエドワード・G・ロビンソンの圧倒的な存在感。

女性陣も申し分なく、クリスチャン(チューズデイ・ウェルド)の可憐さ、メルバ(アン・マーグレット)の小悪魔的魅力。

クリスチャンはキッドの大一番の邪魔をしたくないので田舎に帰りますが、思いもかけずキッドが田舎を訪ねてきてくれた時の、驚きと喜びに溢れたあの笑顔。

両親に紹介するものの、キッドは名の知れたギャンブラー。
当然親はいい顔をせず、流れる冷たい空気。

クリスチャンがキッドに父親にトランプの手品を見せてあげてよと言っても、用があるからと席を外そうとする父親。
どうしてもと言われ、キッドが広げたトランプの中から1枚を引くと、一発で言い当てるキッド。
初めて笑顔を見せる父親。

凄いから母さんもやってもらいなよと妻を呼び寄せると、またもや一発で言い当てるキッド。
あからさまに冷たい態度をとっていた母親も、一緒になって笑います。

敬遠された理由がトランプなら、心をつかんだ理由もまたトランプ。
それ以外何もないキッドの人生を見事に表現しています。

メルバはキッドの親友シューター(カール・マルデン)の妻。
しかし、退屈な夫に満たされず、キッドを誘惑。
相手にしないキッドですが、ある時ぐっと抱き寄せてキス。
メルバが喜んだのも束の間、お尻を叩いて軽くあしらい去っていくキッド。
この時の、してやられたという表情が何とも言えず魅力的。

親友キッドからの信頼と顔役からの脅迫との間で揺れ動くシューターも見事。
誰よりも実力でキッドにランシーに勝って欲しいと願っていながら、脅迫されディーラーとしてキッドに手を貸すことに。

しかし、それをキッドに気づかれます。
自分の考えでやってるんじゃない、仕方ないんだ、わかってくれ。
結局、キッドにディーラーを外されてしまいます。
その時のキッドを見つめる目。

さらに、オープニングとエンディングで対をなす、キッドと少年とのコイン投げの賭け。
結果は書きませんが、キッドの境遇と心境を見事に映し出した屈指の名場面。

さらに極めつけは、エンディングに流れるレイ・チャールズの「The Cincinnati Kid」。
全般的にかっこいいですが、イントロから“He came with the name Cincinnati”という歌い始めにかけてが死ぬほどかっこいい。

このように、もう非の打ち所がない傑作なんですが、全てを台無しにしているのがラストシーン。
ノーマン・ジュイソン監督の音声解説によると、監督の反対を押しきってMGMのお偉方やプロデューサーが後から追加したとのこと。

監督もさぞ無念だったことでしょう。
監督に最終編集権がないことがほとんどのハリウッドでは、時としてこういう最悪なことが行われますが、よりにもよってマックィーンの傑作になんてことをしてくれたのか。
リドリー・スコット監督みたいに、“ディレクターズ・カット”を出してくれないかなぁ。

これでも十分に傑作ですが、マックィーンの顔にカメラが寄ってレイ・チャールズの歌が流れ出すというオリジナル・バージョンだったなら、文句なしの傑作になったことでしょう。

没後25周年、その輝きは失われるどころかますます増していくスティーヴ・マックィーン。
彼の命日に、この駄文を捧げます。



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[原題]The Cincinnati Kid
1965/アメリカ/103分
[監督]ノーマン・ジュイソン
[音楽]ラロ・シフリン
[主題歌]レイ・チャールズ
[出演]スティーヴ・マックィーン/エドワード・G・ロビンソン/カール・マルデン/チューズデイ・ウェルド/アン・マーグレット

→予告編 →他の映画の感想も読む

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*Comment

■>ken様

つまらない作品はどれだけいじってもかまいませんが、よりにもよってマックィーンの傑作に・・・。
ほんとに許せません!
micchii |  2006.03.15(水) 12:35 |  URL |  【コメント編集】

■なるほど

ハリウッドではよくあることでしょうが、あのラストにはそういう事情があったのですね。
この映画のマックイーンは女の人にはだらしない?役柄だから、あの最後もありかな~と無理に納得させたんですけど、やっぱり少年とのエピソードで終わったほうがカッコよかったですよね。
ken |  2006.03.14(火) 11:21 |  URL |  【コメント編集】

■>Carolita様

追記ありがとうございます。
DVD買っちゃいますか!!自分は買うのは廉価版が出るまで待ってます(爆)
『ネバダ・スミス』も廉価版が出たので、これもきっと出るだろうと。
失神の模様がUPされるのを楽しみにしています!(笑)
micchii |  2005.11.20(日) 11:54 |  URL |  【コメント編集】

■あっ、

micchiiさん、お返事ありがとうございます。
そこで、一言、どうしても追記したくて。
ブブブッ、失神しますかっ!! さすがよくお分かりで(笑)
私、たぶん間違いなく即効で失神すると思いますっ(爆)
なので、倒れて返しにいけなかったら困るので、DVD買っちゃいます!
Carolita |  2005.11.20(日) 00:10 |  URL |  【コメント編集】

■>Carolita様

こちらにもコメントありがとうございます。
『ハスラー』の記事拝見していました。あちらもDVDも持っていて大好きな映画ではありますが、さすがのポール・ニューマンも、マックィーン相手では分が悪いようです(笑)
まぁこれは自分がマックィーン命というのもありますが、実際に共演した『タワーリング・インフェルノ』では、客観的に観ても、ポール・ニューマンは完全にかすんでましたからね。
ポール・ニューマンさえかすんでしまうマックィーンの存在感はずば抜けていると、『タワーリング・インフェルノ』を観た時思ってものでした。
ちなみに、ポール・ニューマンはなんといってもやっぱり『スティング』、あとは『暴力脱獄』が大好きです。
さて、『シンシナティ・キッド』、まだご覧になっていないとのこと、DVDレンタルも開始されましたし、今すぐレンタル屋さんに直行しましょう!!
ある意味『大脱走』なんかよりずっとかっこいい渋すぎるマックィーン、これは失神しますよ(笑)
micchii |  2005.11.17(木) 13:09 |  URL |  【コメント編集】

■こんばんは!

ご無沙汰していたCarolitaです(笑)
まぁ!マックィーンの命日だったのですね・・・。
私の中では、お言葉をお借りするなら“動”の印象が非常に強いのですが、
“静”のマックィーンの何気ないしぐさにシビレてしまうお気持ち、何だかわかる気がします。
これはまだ観ていないのですが、なるほど、ニューマンの『ハスラー』に対し、
マックィーンの『シンシナティ・キッド』。
同じ賭け師を演じても、きっと全く別の魅力を放っていたんですね。
2人は、やはり素晴らしいライバルだったとつくづく感じました。
実は、ちょっと前に『ハスラー』を見直して記事を書いたところだったので、
これは絶対観たいわぁ! 教えて下さってありがとう、micchiiさんっ。
そして、決して彼を忘れないことで、ご冥福をお祈りしたいと思います。
Carolita |  2005.11.16(水) 21:25 |  URL |  【コメント編集】

■>くらのすけ映画社様

コメントありがとうございます。
公開当時はまだ生まれてもいないですし、自分もスクリーンでは観たことがありません。
没後25周年ということで、特集上映なんかやってくれないですかねぇ・・・。
micchii |  2005.11.08(火) 12:26 |  URL |  【コメント編集】

■>samurai-kyousuke様

TB&コメントありがとうございます。
“猫背でポケットに手”、凄く絵になりますよね。
カサヴェテスの『アメリカの影』のベン・カールザースも渋かったです。
麻雀で負けた帰り道、確かにピッタリですね(笑)
micchii |  2005.11.08(火) 12:18 |  URL |  【コメント編集】

■マックィーン最高

この作品はテレビでしか見ていませんがほんとに大好きな映画です
くらのすけ映画社 |  2005.11.07(月) 20:01 |  URL |  【コメント編集】

■「ライフ・イズ・ビューティフル」

こんにちは。トラックバックありがとうございます。
この映画も良いですねー。一時期、この映画の影響で友達数人とスタッドポーカーにハマった事がありました。
レイ・チャールズの主題歌は渋いですね。口笛でこの曲を吹きながら、ちょっと猫背でポケットに手を突っ込んで歩けば、気分はマックィーンです。麻雀で負けた帰り道なんかピッタリです。(笑)
samurai-kyousuke |  2005.11.07(月) 12:25 |  URL |  【コメント編集】

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夜の大捜査線

夏の深夜。ミシシッピー。 町の資産家が殺された。 その頃、駅に一人の男が降り立つ。画面に姿は映し出されない。 一方、警官が不審者を探して巡回する。演じるのはウォーレン・オーツだから、やや胡散臭い。 露出狂の女の家の前で、そっとパトカーを止めたりする。 そして
2006/03/14(火) 11:22:57 | 鏡の誘惑

シンシナティ・キッド

今回はスティーブ・マックィーンがスタッドポーカーに命をかける凄腕ギャンブラーを演じた、1965年公開の「シンシナティ・キッド」について少し。マックィーンの"動"の魅力が炸裂する傑作が「大脱走」なら、彼の"静"の魅力に溢れた一本がこの映画です。
2005/11/07(月) 12:18:05 | samuraiの気になる映画

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