2004.07.28

『ケス』(ケン・ローチ)

ケス

今回は、もはや当ブログの常連となったイギリス映画から。イギリス映画ファンを自認しておきながら、この作品を紹介しないわけにはいきません。
日本での知名度はいまいちながらヨーロッパでは絶大なる評価を得ている名匠ケン・ローチ。彼の代表的傑作『ケス』の登場です。

日本公開は1996年でしたが、撮られたのはなんと1969年。
そのことにまずびっくり!まったく古さを感じさせません。

以来ずっと一貫して「底辺にいる人々の日常」を描いてきた彼ですが、この作品の主人公も、どこにでもいそうな15歳の少年と、そしてハヤブサ。
「ハヤブサは飼い慣らせない。人に服従しないから好きなんだ…」
とても印象的な少年の言葉です。

クラスでも落ちこぼれで、いつもひとりぼっちの彼。
唯一の友達はハヤブサでした。

ケス ケン・ローチ

国語の授業の時、先生に何か話をするように言われた彼は、ハヤブサの話を始めます。
この時の彼の表情はほんとに楽しそうで、キラキラと輝いています。
それまでの彼の表情とは全然違って、その少年にとってハヤブサの存在がいかに大きいかがよくわかる素敵なシーンです。

その他、体育の授業のサッカーのシーン、ハヤブサが飛び立つシーンなど、印象的なシーンがたくさんありました。

ケス ケン・ローチ サッカー

そして、ラスト。えっ!?突然の幕切れです。
決してハッピーな結末ではありません。

ハリウッド的な「読める」ハッピーエンドに慣れきっている方には、ちょっと受け入れがたい結末かもしれません。

しかし、たまにはこういうラストシーンもあっていいような気がします。
夢を見させるのが映画ですし、素敵なハッピーエンドももちろん大好きです。
先ほど「底辺にいる人々の日常」と書きましたが、そういった人々の暮らしがいつもハッピーエンドなわけはありません。現実はそんな甘いものではありません。

夢を見させるのが映画なら、人々の日常をありのままに切り取るのもまた映画。
そういう意味で、ケン・ローチほど現実に目を向け続けている監督はそうはいません。

現実をそのまま切り取っているからといって、ひたすら暗いかといったらそうでもありません。
人々に対する温かい眼差しと、ユーモアも忘れません。
『フル・モンティ』の時にイギリス映画の素晴らしさとして「悲哀とユーモアのバランス」という言葉を使いました。
その礎を作った一人は間違いなく彼だと思います。



[原題]Kes
1969/イギリス/112分
[監督]ケン・ローチ
[出演]デヴィッド・ブラッドレー/コリン・ウェランド/リン・ペリー

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『ケス』のポスター集
英映画業界人が選ぶイギリス映画ベスト100

 

TB(1) CM(4) EDIT

*Comment

■>ETCマンツーマン英会話さん

返信が遅くなり申し訳ありません、またまたコメントありがとうございます。

こんなお話をしているところに、ちょうどスコットランドの独立の話も盛り上がってきましたね。
もちろん言語だけではなく色々な要素がありますが、同じ英語なのに通じないというのも、独立の話に絡んで興味深いですね。
micchii |  2014.09.15(月) 11:10 |  URL |  【コメント編集】

micchiiさん、お返事ありがとうございます。

>リンク先の記事も拝見しましたが、確かにこれは難しいですねぇ。
アメリカ人などにとっては、個々の単語の発音以上に、イントネーションが変わってしまうことが、絶望的に理解不能になるようです。

>まだまだ一般的に広く観られているとは思えないので、もっと多くの人に観られたらなぁと思っています。
おっしゃるとおりですね。イギリスの階級社会の様子が、現在の日本の格差社会にも重なって来ているようにも感じます。
ETCマンツーマン英会話 |  2014.09.06(土) 12:45 |  URL |  【コメント編集】

■>ETCマンツーマン英会話さん

コメントありがとうございます。

『SWEET SIXTEEN』がカンヌ国際映画祭で上映された際に、英語の映画なのに英語の字幕が付いたと話題になっていましたが、英会話の先生でも字幕が必要とは、それは普通の人にはなおさらですね。
リンク先の記事も拝見しましたが、確かにこれは難しいですねぇ。

ケン・ローチ監督、『麦の穂をゆらす風』がカンヌでパルムドールを撮って以降は日本でも以前よりは名前が知られるようになったと思いますが、まだまだ一般的に広く観られているとは思えないので、もっと多くの人に観られたらなぁと思っています。
micchii |  2014.09.05(金) 18:11 |  URL |  【コメント編集】

■ケス

英会話の先生(スコットランド人)から、「英語がひとつではないことを体感したいならこの映画」と言って紹介されました。全編ヨークシャー訛りで、先生自身も字幕が必要な部分があるそうです。

>日本公開は1996年でしたが、撮られたのはなんと1969年。

30年後!?驚きですね。ケン・ローチ監督が著名になったことで日本での後悔が実現したのでしょうか。ヨークシャーには行ったことないのですが、なぜか映画の中のどの風景も懐かしく感じます。

素晴らしい映画、素晴らしい監督との出会いに感謝です。
ETCマンツーマン英会話 |  2014.09.03(水) 16:37 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://micchii.blog4.fc2.com/tb.php/21-ac6464f7

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

-

管理人の承認後に表示されます
2015/11/08(日) 02:42:12 |

▲PageTop

 | BLOGTOP |