2005.05.27

『ダウン・バイ・ロー』(ジム・ジャームッシュ)

ダウン・バイ・ロー

今回は、『ブロークン・フラワーズ』カンヌ映画祭グランプリ受賞記念ということで、ジム・ジャームッシュ監督の1986年のこの愛すべき傑作を。

オープニング、街並みを捉える流れるようなロビー・ミューラーのカメラ、被さるトム・ウェイツの「Jockey Full of Bourbon」、これだけでもう十分に傑作でしょう。

それぞれはめられて刑務所に入れられた二人の男が刑務所で出会い、同じ部屋に後から来たのは片言の英語を話すイタリア人。
扮するのがジョン・ルーリー、トム・ウェイツ、ロベルト・ベニーニとくれば、面白くないわけがありません。

ダウン・バイ・ロー ジョン・ルーリー トム・ウェイツ ロベルト・ベニーニ

3人のやりとりだけでもいつまでも観ていたいぐらい愛すべきものですが、中でも一番の傑作は“I scream,you scream,we all scream,for ice cream”の合唱でしょう。一緒になって歌いたくてたまりません。

あっさりと脱獄に成功してからも、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と同じように、ストーリーなんてたいした意味はありません。

愛すべき人物を、その場の雰囲気を、そこに流れる空気を満喫する映画。

沼地を歩く3人、沈みゆくボートを眺める3人、刑務所の部屋と何ら変わることのない見つけた小屋のベッドの配置、ベニーニが話すお母さんとウサギの話、別行動を取った3人を順に捉えるカメラ、焚き火で一人うさぎを焼くベニーニの下に凍える二人が同時に現われる呼吸、“偵察”に行ったベニーニを遠くから眺める二人、ホイットマン、ベニーニの英語の手帳、ビリヤードの8番ボール、書き出したらキリがない愛すべき場面の数々。

ベニーニとニコレッタ・ブラスキが踊るのを二人が眺めているシーンのたまらないこと!

ダウン・バイ・ロー ロベルト・ベニーニ ニコレッタ・ブラスキ

それでもやはり一番の傑作は、映画史に残るラストシーンでしょう。

衝撃的なラストという映画では、今までに『スティング』『悪魔のような女』『情婦』『俺たちに明日はない』などを紹介しています。

ただ、そういうラストとは違って、一生忘れられない、心に残る愛すべきラストシーンというものもあります。
そういうラストシーンでは、個人的には間違いなく5本の指に入るこのラストシーン。

上着を交換し、握手すらしない二人、そしてジョン・ルーリーのこの一言、「お前が選べ、俺は反対に行く」。

ダウン・バイ・ロー 分かれ道

故淀川長治氏に「椅子から立ち上がることを忘れさせてしまうほどの見事さ」と言わしめた、極上のラストシーン。
自分があの場に立ったら、さてどっちへ行こうか、右か、左か、それとも…。



Apple Musicでサントラを聴く♪


[原題]Down by Law
1986/アメリカ・西ドイツ/107分
[監督・脚本]ジム・ジャームッシュ
[撮影]ロビー・ミューラー
[音楽]ジョン・ルーリー
[出演]ジョン・ルーリー/トム・ウェイツ/ロベルト・ベニーニ/ニコレッタ・ブラスキ

→予告編 →“I scream, you scream, we all scream for ice cream” →他の映画の感想も読む

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TB(7) CM(8) EDIT

*Comment

■>ゴーシュ様

コメントありがとうございます。
ジャケットのシーンはほんとにかっこいいですよね!
「ダブリンで待ち合わせしようぜ」なんて、素敵ですね~!いつかぜひ実現してくださいませ(笑)
トム・ウェイツ、ほんとにたまりませんよね。『コーヒー&シガレッツ』では久々に役者としてもいい味出してましたよね。
micchii |  2006.08.15(火) 15:27 |  URL |  【コメント編集】

■これを肴によく飲みました.

こんばんは. 学生の時によくあのジャケットを交換するシーンをネタにして飲んでましたね. 酔いが進むと,オレたち今度は日にちと時間を決めて,ダブリンで待ち合わせしよぜなんてよく言っていました.(笑)
「スモーク」といい,トム・ウェイツの曲はツボにハマルとたまりませんね!
ゴーシュ |  2006.08.12(土) 23:25 |  URL |  【コメント編集】

>minaco様
TB&コメントありがとうございます。
『ダウン・バイ・ロー』、ラストも極上ですが、オープニングもたまらないですよね。
トム・ウェイツの曲名はちょっとわかりません、すいません・・・。

話は変わりますが、ブログを拝見して、真っ先にマンUに反応。
最近の買収劇にはほんとに憂鬱になります。ロイ・キーンは監督になれないのかなぁ・・・。
何回観たかわからない“カンプノウの奇跡”のビデオでも引っ張り出してきて、感傷に浸ろうと思います・・・。

というわけでCLファイナルの記事にもTBさせていただきました。
micchii |  2005.06.04(土) 09:51 |  URL |  【コメント編集】

■トラバさせていただきました。

はじめまして。前にもトラバさせていただきましたが、ご挨拶が遅れてすみません。今回ロビー・ミュラーつながりということで・・。

大好きな映画です。オープニング・カットに言及して下さったのが嬉しいです。あのシーンで、もうやられた・・(このときのトム・ウェイツの曲名が思い出せないのですが、「rain dogs」に入っている曲ではなかったでしたっけ?)。

こちらで取り上げていらっしゃる映画のセレクト、結構ツボなんです。解説もわかりやすくてうなづけます。
また寄らせてもらおうと思います。
minaco. |  2005.06.02(木) 00:20 |  URL |  【コメント編集】

>yuring様
こちらこそTB&コメントありがとうございました。
この映画ほんとにたまりませんよね。3人がそこにいるだけでもう十分。
そしてあのラストシーン!
ジム・ジャームッシュ監督作品の中では一番好きです。他のも好きですが。

>のびぃ太様
コメントありがとうございます!
カンヌ受賞作、観られるといいいですよね。
でもその前に「コーヒー&シガレッツ」観に行かねば・・・。

>おかぽん様
いつもコメントありがとうございます!
「すれ違いのトホホ感」、座布団一枚!(笑)
カウリスマキとジャームッシュ、「ナイト・オン・ザ・プラネット」にマッティ・ペロンパーが出てきた時は笑いましたが、ジーナ・ローランズで始まってマッティ・ペロンパーで終わるとは、とんでもない作品ですよね!!
micchii |  2005.05.31(火) 12:35 |  URL |  【コメント編集】

■さすが

カウリスマキ好きはジャームッシュファンとかぶるのが正しい映画ファンですね。

ちなみにストパラもラストシーンも最高。この映画のラストと趣は違いますが、すれ違いのトホホ感が、人生を象徴させる名シーンですね。

おかぽん |  2005.05.28(土) 10:53 |  URL |  【コメント編集】

■ブロークン・フラワーズ

TB有難うございました。
カンヌ映画祭の受賞作品も日本で見られるようになると嬉しいですね。
のびぃ太 |  2005.05.27(金) 18:11 |  URL |  【コメント編集】

■ありがとうございました

はじめまして。
TBありがとうございました。
この映画スゴクスゴイ良いですよね。
私も大好きな映画です。
yuring |  2005.05.27(金) 13:57 |  URL |  【コメント編集】

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