2011.07.30

『イップ・マン 序章』(ウィルソン・イップ)

イップ・マン 序章

『イップ・マン 葉問』を映画館で観たのが3月ですが、ようやく公開になったので、『イップ・マン 序章』観て来ました。
6月に発売されたBlu-rayツインパックももちろん買いましたが、どうしても最初は映画館で観たかったので、今日まで我慢していました。

というわけで、待ちに待った『イップ・マン 序章』です。

「パパが反撃しないから物が壊れるってママが怒ってる」のシーン最高、場内爆笑。
ウィルソン・イップは「切なさ」を描かせたら素晴らしい監督ですが、こういう緩急のセンスってこんなにありましたっけ?
一見シリアスなこういう香港映画で、ここまで映画館で笑いが起きるのも珍しい。

イップ・マン 序章 ドニー・イェン

もちろんドニーさんのアクションは強く美しく溜息ものですし、他の師匠や金山找や三浦との闘いも素晴らしいんですが、工場の工員たちが作業中に思わず型が出てしまったり、工場が襲われた時に女性の工員が詠春拳というより力技で薙ぎ倒していたり、そんなシーンの方が印象に残っていたりします。

川井憲次による極上のテーマ曲に合わせて工員たちが葉問と一緒に稽古するシーンなんて、ヘタしたらドニーさんの闘い以上に燃える(笑)
これが『イップ・マン 葉問』との違い。どちらがいいとかの問題ではなく、どちらも好き。

そして、脇役たちが皆素晴らしい。

先に『イップ・マン 葉問』を観ているので、いつサイモン・ヤムが…になるのかとずっと身構えていましたが、そんなシーンはなかったですね。
今回も出番少な目の彼ですが、『孫文の義士団』でもそうだったように、「別に他の人でも務まるけどこの人が演じると存在感と重みが違う」安定した演技。

イップ・マン 序章 サイモン・ヤム

ようやく葉問との関係がわかったルイス・ファン演じる金山找も美味しいキャラ。
まあいろいろ悪さもしていますが、彼は彼なりの信念に基づいて生きており、家具を「弁償する」のくだりなんかいいなあぁ。

イップ・マン 序章 ルイス・ファン

最初に書いたシーンもそうですが、葉問は「家具を壊さない」という条件下でしか闘うことすら許されず、壊した対戦相手も自ら弁償を申し出る、実は最強は葉問の奥さん(笑)
強い相手がいると聞けばすぐに手合わせしたい葉問ですが、いつも奥さんの顔色を伺い、外出すらままならない、ドニーさん可愛い(爆)

イップ・マン 序章 リン・ホン

日本から参加の池内博之ですが、アクションは全部自分ではやってないでしょうが、いい感じでしたね。
あの絶対的権力関係の上下にありながら、ちゃんと膝を折って食事を葉問に出した三浦、真に武道を愛する者だからこそ、巡り会えた達人への心からの敬意。

そこには日本軍も中国人もなく、あるのはただの二人の武道家。
名を聞かれ「ただの中国人」と答えた葉問と同じように、「ただの一武道家」として葉問と相対した三浦。
闘いを終えた彼の顔に浮かんでいたものは、それは観てのお楽しみということで。

イップ・マン 序章 池内博之

他では、ラム・カートンのキャラも美味しい。
警官として、いつも問題ばかり起こす武道家たちを最初は快く思っていなかったものの、次々に地元の武道家たちが金山找の道場破りに負けた後、葉問が地元の誇りを守ってくれたのが嬉しくてたまらない。

その後は日本軍の通訳となり、小物ぶりを発揮しますが、最後の誇りは失っておらず、命を賭けて葉問を守るようになる。
日本軍にボコボコにされて帰ってきても、俺のことなら大丈夫だからと、弱みも見せず、彼もまた詠春拳とは違う形で、一人の人間としてどんどん強くなっていく。

イップ・マン 序章 ラム・カートン

それに対し、事情は重々承知の葉問も多くを尋ねることはなく、ただ一言お礼を言うだけ。言葉はいらない。
さすがウィルソン・イップ、素晴らしい。

『イップ・マン 葉問』と違って“悪者”が日本人なので、確かにあっちほど素直に乗れない部分はありますが、それを差し引いても十分素晴らしく、最初の方に書いたような緩急のつけ方が今回は特にツボ。

待ちに待った公開なのに映画館は半分も埋まっていなかったと思いますが、これを映画館で観ずして何を観るというのでしょうか。
『導火線 FLASH POINT』ほどではありませんが、もちろんアクションが素晴らしい映画でもありますので、ぜひ映画館の大きなスクリーンで!

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[原題]葉問
2008/香港/106分
[監督]ウィルソン・イップ
[音楽]川井憲次
[アクション監督]サモ・ハン
[出演]ドニー・イェン/サイモン・ヤム/池内博之/リン・ホン/ルイス・ファン/ラム・カートン

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『イップ・マン 序章』のポスター集
『イップ・マン 葉問』(ウィルソン・イップ)
『イップ・マン 誕生』(ハーマン・ヤウ)
『イップ・マン 最終章』(ハーマン・ヤウ)

 

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*Comment

■>テコさん

こちらにもありがとうございます。

『捜査官X』が出会いで、次がこれでしたか!他にも色々素晴らしい役がありますが、やっぱりこの2本が今のところ一番の当たり役でしょうね~。

確かに抗日映画って言ってる方多かったですが、まあそう言う人がいるのもわからなくはないですが、そこだけ切り取るのは違いますよねぇ。
それに、「ただの一武道家」として葉問と相対した三浦と感想にも書きましたが、ちゃんと人間vs人間になってると思いますけどね。

何気にいろんなところに出没するトー組ですが、今回はラム・カートンが美味しい役でしたね。
普通の人間としては、共感できる部分も多いですし、でも、ここぞという時にはちゃんと漢になる!

公開が逆だったのはほんとに残念でした。後から観ると、そういう点では良い面もありますね。

それはそれでもらっとけ!にお茶吹きました(笑)
micchii |  2013.08.21(水) 23:36 |  URL |  【コメント編集】

■やっと出会えました★

ドニーさーーーーーん!
「捜査官X」で出会って(内容はちょっとお子様仕様にも思えましたがw)
でも、こういうの好きなんです!!!
これは、やはり「イップマン」観なければ、と固く決心して観ましたよー
ドニーさん、動きがキレッキレ!!
色んな方のレビュー読みましたが、抗日映画って言ってる方が多くて(どーでも
良い)そこは切り取らないでいいよーって思いました。実際同じ様な事はあったらしいですし。
トー監督組の活躍も本当に嬉しいですよね★
映画館では公開が逆だったのは残念ですね、あたしは順番に観れたので良かったし、序章の方が好きでした。
ラムさんここって所で男になりますし!やっぱり道場やぶりとか、悪い奴を倒す
倒す、倒す!最高ですよねー
でも葉問の方でヤムさんがあんな事になってるとは・・・
お腹空いてるのに、血の付いた米袋だけを握りしめたイップマン万歳(心ではそれはそれでもらっとけ!ってあたしの中のどぐされ精神が囁いてましたがw
テコ |  2013.08.21(水) 11:31 |  URL |  【コメント編集】

■>西尾幹事さん

ラム・カートンの「選択」ですが、同じ立場に立たされたら
実際には多くの人がああなりますよね。
しかも、普通はそのままで、彼みたいに「行動」を起こすことすらできないでしょうし。

ヤムヤム、確かに一時期のデ・ニーロ状態ですね(笑)
でも、おっしゃるように、ヤムヤムならどれだけでも出てきてほしいですが。
ウィルソン・イップ作品の不満があるとすれば、ラム・シューが出てこないところ(笑)
まあ雰囲気が合わないのはわかるんですが・・・。
micchii |  2011.08.01(月) 21:38 |  URL |  【コメント編集】

■トー組の活躍

にニヤついてしまいました。

「ラム・カートンの小物ぶり」(笑)。確かに小物でしたねぇ。でも、ああいう現実的な選択をするキャラクター(『ジュニア・ボナー』の成金兄貴のような)ってああいう描かれ方をしがちだし、現実でもそうですが、“実は、その考え方自体は別に悪いってわけじゃないよなぁ”といつも思ってしいます。

サイモン・ヤムは、『葉問』では出番の超少ないホームレスでしたが、今回は重要な役どころでしたね。「何観ても出てる」という、一時期のロバート・デ・ニーロ状態(笑)。香港映画好きで彼のことが好きじゃないという人は少ないだろうから、みんなウェルカムでしょう。
西尾幹事 |  2011.08.01(月) 08:35 |  URL |  【コメント編集】

■>鍵コメさん

こんにちは、いつもコメントありがとうございます。

結果的には2→1の順番でもまあよかったかなとは思いますが、やはり1→2の順番で観たかったですよね。
内容的にはこの1がすんなりと公開されなかったのは仕方ない面もあるとは思いますが・・・。

奥さんの描写いいですよね、「家具」のシーンはほんとに爆笑で、でもそこから徐々に理解していって、
おっしゃるように介抱のシーンが凄く良かった、何でも「台詞で」説明しちゃう映画が多い中、いいですよねああいうシーン。

先ほどいくつか拝見して、後ほどそちらにコメントもさせていただきますが、拙いなんてとんでもない、堂々と出して下さいよ!

「自分の好きな映画しか見ない」、まあ自分はそうでもない映画も観ていますが、このブログに書いているのは、数少ない例外を除いて、「好きな映画」だけです。
「愛すべき映画たち」で愛してない映画書くわけにはいかないですからね(笑)

今後とも宜しくお願い致します。
micchii |  2011.07.31(日) 11:39 |  URL |  【コメント編集】

■管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2011.07.31(日) 07:36 |   |  【コメント編集】

■>けろにあさん

早速ありがとうございます、TB&RTもありがとうございます!

トーさんの作品でもそうですが、ずっと張りつめているより、ふっといったん抜かれた方がより来るんですよね。
そして、十八番の切なさも十分でした。
ドニーさんのアクションは、もう手の動きを観ているだけで惚れ惚れしちゃいますね(笑)

そして、やっぱり割れんばかりの拍手喝采ですか!
なかなかそんな環境で観れる日本人はいないと思いますので、凄く貴重な鑑賞経験ですね。
自分も同じ立場だったらたぶん拍手しちゃうと思います(笑)

ほんとそうですよね、日本軍の描写が~だからとか、そんなんでスルーされるのはあまりにもったいない。
ほんとに一人でも多くの方にご覧になっていただきたいと思います。
micchii |  2011.07.30(土) 23:06 |  URL |  【コメント編集】

■たくさんの人に見てほしい

仰るように私も緩急のつけ方が見事な作品だと思いました。
物語部分はしっかり丁寧に、随所にアクションシーン、笑える演出、そして切なさも十分。
近年見た中で一番好きな作品です。

この作品を最初に見たのは2008年の年末だったかな?
上海プレミアで見たのですが、葉問が日本人をバッタバッタと倒すところは、会場全体割れんばかりの拍手喝采でした(^^;
アウェー感バリバリどころか、日本人客は私ひとりだったんじゃないかなぁ。
が、思わず私も一緒に拍手しちゃいました。
日本人が悪役でも、面白いものは面白い、素晴らしい作品は素晴らしいのですもの。
目くじら立てないで、純粋に楽しんで見て欲しいです。ひとりでも多くの方に。
けろにあ |  2011.07.30(土) 22:43 |  URL |  【コメント編集】

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