2009.11.28

『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ)

イングロリアス・バスターズ

映画を愛する世界中の同士たちへ、タランティーノからの熱き想い、これが映画の力だ!
というわけで今回は、待ちに待ったタランティーノ最新作、『イングロリアス・バスターズ』です。

まだまだ公開が始まったばかりですので、なるべく内容には触れないように書きます。

何度か書いたことがありますが、傑作・名作というのとは違う、“映画への愛に溢れた”映画というのがあります。
映画の内容ではなく、監督の“映画”自体への愛。
そうめったにあるものではなく、当ブログでUP済なのは、オールタイムベスト『カイロの紫のバラ』を筆頭に、『ニュー・シネマ・パラダイス』『ラスト・ショー』と、たった3本だけ。
3本とも、“映画”の、“映画館”の果たす役割が、他の多くの映画とは別次元です。

タランティーノといえば、元々自分の大好きな映画を隠すことなくこれでもかと詰め込む、オマージュ(パクリとは違う)炸裂の監督ですが、今回はそれを超えて、映画そのものへの想いが炸裂。

主役の一人と言ってもいいショシャナは映画館の経営者。
そして、いろんなエピソードは彼女の映画館へと集約していき、コトは映画館で起きます。
映写室を見ると、アルフレードを思い出しますね。

イングロリアス・バスターズ メラニー・ロラン

予告編にもあったもろに『特攻大作戦』なシーンはありましたが、『地獄のバスターズ』はほとんど関係ないような…。

ですが、ブラピ以下バスターズは完全に脇役で、主役はどう見てもショシャナとランダ大佐。

ランダ大佐に扮したクリストフ・ヴァルツ、カンヌ国際映画祭ですでに男優賞を獲ってますが、ブラピなんかどうでもいいくらい、完全に彼の独壇場。
彼に尋問されたら、あのフランス人じゃなくたって泣きたくなりますよ。
しかも、ただの極悪人ではなく、誰よりもウィットに富んでいるところが素晴らしい。
脚本的な終盤のツイストも、彼だからこその説得力がありましたね。

イングロリアス・バスターズ クリストフ・ヴァルツ

他に役者的に特筆すべきなのはイーライ・ロス。
なんといっても、彼はユダヤ人ですからねぇ。○○を撃ちまくるあの表情には、演技を越えたものが。
彼にこの役をオファーしたタランティーノ、ほんとにいいやつだよなぁ。

さて、タランティーノ映画といえば、“会話”も大きな魅力の一つ。
とは言っても、本筋と何の関係もない会話が延々と繰り広げられたりするので、タランティーノ映画がダメという方はこの点がダメな方も少なくないようです。

自分は普段のそんなタランティーノ映画のどうでもいい会話も大好きですが、今回はどうでもいいどころか、完全に会話がメイン。

オープニングから、先ほども書いた相手が泣き出すほどのランダ大佐のトークが炸裂するわけですが、地下の居酒屋でのバスターズVSナチの将校の腹の探り合いの緊迫感は凄まじい。
会話だけであれだけの緊迫感を持続させるとは、“脚本家”としてのタランティーノの才能はまだまだ健在ですね~。

イングロリアス・バスターズ マイケル・ファスベンダー

ショシャナとランダ大佐の再会のシーンも凄い。
あそこでミルクを注文するとは!
流石はランダ大佐、思わずゾクゾクとしましたよ。

忘れてはならないのが、タランティーノ映画の魅力の一つ、サントラの素晴らしさ。
既存の音楽からこれは!というのを持ってくるセンスは、ウォン・カーウァイとタランティーノが双璧でしょう。

今回は先にサントラを買ってましたが、こうやって使ってきましたか。
オープニングクレジットからいきなりディミトリ・ティオムキンの「遙かなるアラモ」ですからね、いつの時代の映画なんだ(笑)

今回も大活躍のエンニオ・モリコーネからは、『ミスター・ノーボディ2』と同じ「エリーゼのために」使いの『復讐のガンマン』も。
パリのカフェのシーンに『荒野の1ドル銀貨』を使うなんて、タランティーノにしかできない芸当ですよね、しかも、むちゃくちゃ合ってるとこが凄い!

映像的には『特攻大作戦』をもってきながら、別のシーンですが、音楽では『戦略大作戦』を使うところなんかも憎すぎる!

一番インパクトがあったのはなんといってもデヴィッド・ボウイですね。
あそこで、あれを流しますか。

でも、今回のサントラで個人的に一番気に入ったのが、映画は未見ですが、『アロンサンファン/気高い兄弟』の「Rabbia E Tarantella」。
“燃え”と“泣き”が入った、かっこよすぎる1曲。これまたエンニオ・モリコーネ!やっぱりモリコーネは天才だよなぁ。
冒頭から「ONCE UPON A TIME・・・」と、レオーネやモリコーネへの愛情を隠そうともしないタランティーノも可愛過ぎる!

最後に、イギリス人やアメリカ人は英語を話し、フランス人はフランス語を話し、ドイツ人はドイツ語を話す、この当たり前のことを当たり前にやるだけで、こうも違うのか。
4カ国語を自在に操るクリストフ・ヴァルツはその点でも凄過ぎる!

いつものように自分の大好きなものへの愛情を惜しげもなくさらけ出し、さらに映画自体への想いも炸裂させた、タランティーノ渾身の一作。
期待通りの、いや、期待以上の大満足な1本でした。





[原題]Inglourious Basterds
2009/アメリカ/153分
[監督・脚本]クエンティン・タランティーノ
[出演]ブラッド・ピット/メラニー・ロラン/クリストフ・ヴァルツ/マイケル・ファスベンダー/イーライ・ロス/ダイアン・クルーガー/レア・セドゥ/エンツォ・G・カステラッリ

→「Rabbia E Tarantella」 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
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TB(7) CM(18) EDIT

*Comment

■>よしぼうさん

下ネタ関係は禁止していますが、「殺」は特に何も指定してなかったはずなんですが、お手数をおかけして申し訳ありません。
ビデオ出てますか。
なんか去年WOWOWで放送されたみたいですが、たまにこういうのが放送されるので、WOWOWもできることなら加入したいんですけどね・・・。
ビデオが安く手に入るようならぜひ観てみようと思います。
micchii |  2011.01.15(土) 22:56 |  URL |  【コメント編集】

■『追想』その2

スパムと間違えられたのは、ここに投稿したコメントです。実は元のコメントは「殺」が多かったんです。
前稿では相手が6,7人と書きましたが、主人公が復讐のチャンスを待っている間に、敵の部隊の大部分が移動してしまいます。ご都合主義ですが・・・ただ、焼きころされたので、焼きころす点が首尾一貫しているし、チャンスを狙ってひとり、またひとりと倒していくところはなかなかです。日本版のビデオなら出ているので、機会があったら観てください。オススメですよ。
よしぼう |  2010.01.10(日) 21:51 |  URL |  【コメント編集】

■>よしぼうさん

自分もポッドキャスト聞きましたが、ドイツ版しかありませんか・・・。
『冒険者たち』が大好きな映画なので、ロベール・アンリコということでぜひ観てみたいですが。
でも確かに普通のオッサンの復讐ではちょっと見劣りしてしまうでしょうね(笑)
micchii |  2010.01.10(日) 16:27 |  URL |  【コメント編集】

■『追想』

町山さんが元ネタという、『追想』(ロベール・アンリコ)を観ました。ドイツ版DVDで、です。他国版がないので、ドイツではこういう反ナチス映画がいまだに観られているのかと、感心します。ナチスに家族を殺され、個人的な復讐に走る構成は類似しています。ただ、普通のオッサンの復讐なので、対決する相手が6、7人なのでショシャナの華麗な復讐に比べると見劣りします。この映画、しつこいくらい家族の思い出を繰り返すので、これらのシーンが、平凡な内容なのでしょうが、もう少し分かれば映画の印象が変わったようで少し残念です。本当にドイツ語がもう少し分かればなあ。
よしぼう |  2010.01.05(火) 22:45 |  URL |  【コメント編集】

■>リーチェンさん

明けましておめでとうございます。
そうなんですよね、今までの映画以上に“映画”が強調されていて、そこにぐっときましたよね。
ランダ大佐はほんとに圧倒的でしたね。アカデミー賞はたぶん助演でのノミネートでしょうが、主演男優賞確実ものの演技でしたね。
それでは、本年も宜しくお願い致します。
micchii |  2010.01.03(日) 17:38 |  URL |  【コメント編集】

■クライマックスが映画館!

micchiiさんのおっしゃる通り、クライマックスの舞台が映画館、映画を使って復讐したり、映写室でのシーンなどタランティーノ作品の中でも一番好きかもしれません。

ランダ大佐の抜け目なさと必殺仕事人ぶりもすごかったですね。絶妙の悪役ぶりでした。会話で腹をさぐりあうシーンはゾクゾクもの、これも楽しかったです!
リーチェン |  2009.12.31(木) 01:30 |  URL |  【コメント編集】

■>tonboriさん

自分は幸いにも本編を観てから観ましたが、これはやりすぎですよね(笑)
まあそれでも楽しめるのがタランティーノ映画ですが。
micchii |  2009.12.21(月) 23:57 |  URL |  【コメント編集】

■日本の予告編は

本当にネタバレしまくりですよねー。
それでもしっかり楽しめたので無問題でしたけどwww
tonbori |  2009.12.21(月) 22:57 |  URL |  【コメント編集】

■>春巻さん

ほんとにランダ大佐が素晴らしすぎますよね。
美味しいところは全部彼が持ってっちゃいましたね(笑)

地下のシーンは、久々に台詞の応酬で痺れました。
ばれたのは、言葉は練習しても、あそこまでは思い至らなかったんですね。

"映画好き"っぽい若者ですが、彼女とショシャナのシーンにはかなりカットされた部分があるらしく、それがあればもっと深まったのかもしれませんが、あれだけではただの「空気読め」ですよね・・・。
micchii |  2009.12.05(土) 17:42 |  URL |  【コメント編集】

■>welica37さん

タラちゃんのレオーネやマカロニウエスタンへの思い入れははんぱじゃないので、一度ぜひウエスタンに挑戦してほしいですよね。
「殺しが静かにやって来る」「情無用のジャンゴ」まで入ってくると、一筋縄ではいかなくて面白そうですね!
micchii |  2009.12.05(土) 17:35 |  URL |  【コメント編集】

■>むぅさん

こちらこそお久しぶりです。
むぅさんもタランティーノお好きでしたか!
でしたら、この映画、映画館に行かない手はないですよ!!

「アンタがコレを好きかどうかは知らん。でも俺はコレが好きなんだあぁぁぁ~!!」 というの、凄くよくわかります。
そこがタランティーノの愛すべきところですよね。

本筋と何の関係もない会話、あれがダメな方も少なくないみたいですが、あれがいいんですよね!
micchii |  2009.12.05(土) 17:24 |  URL |  【コメント編集】

■>よしぼうさん

ディカプリオは巧い役者だと思いますが、今回の役は無理ですねよね・・・。
完全にクリストフ・ヴァルツでもっている映画なので、彼なしではこの映画はありえなかったでしょうね。
ディカプリオならもっとヒットしたとは思いますが。
micchii |  2009.12.05(土) 17:10 |  URL |  【コメント編集】

■ランダ大佐ステキ!

ランダ大佐のキャラがすばらしすぎる!しかも多言語ペラペラなうえに、パイプはシャーロック・ホームズ・パイプだし、なんでしょうね、あの人...。

地下の居酒屋シーンもハラハラしどおしでした。まさか、アレでバレるとは思いませんでしたよ。

それにしても、私はあの"映画好き"っぽい若者に無性にイライラしました。なんだよ、いい人かと思わせといて、やっぱりただのプライド高い野郎じゃないか!と。「空気読め」という言葉は嫌いなんですが、彼に対してだけは、「お前...空気読めよ...」と心の中でつぶやいてしまったわたくしです。
春巻 |  2009.12.01(火) 00:16 |  URL |  【コメント編集】

■次回作は

タラちゃんの次回作は、ウェスタンに挑戦してほしいです。
 元ネタは、「続夕陽のガンマン」や「怒りの荒野」などなど。 できれば個人的には「殺しが静かにやって来る」や「盲目ガンマン」「情無用のジャンゴ」なども面白いですね。
welica37 |  2009.11.30(月) 20:42 |  URL |  【コメント編集】

■タラちゃん大好き!(笑)

お久しぶりです。
これ、やっぱり観に行こうと思います。micchiiさんのレビュー、やっぱり上手いなぁ~!
タランティーノの映画って、ホントに毎回「愛」で溢れてますよね。
「アンタがコレを好きかどうかは知らん。でも俺はコレが好きなんだあぁぁぁ~!!」
っていう叫びが気持ちいいほど潔く溢れてる。
で、私はそういう映画が好きです。

>本筋と何の関係もない会話が延々と繰り広げられたりする
コレも大好きなポイントですっ!
むぅ |  2009.11.30(月) 00:15 |  URL |  【コメント編集】

■ちょっと小耳にはさんだのですが・・・

タランティーンはあるインタビューで、
ランダ大佐の役を、あのレオナルド・デカプリオが志望していたことを明かしています。”名優”に会って”説得”されてしまうことが怖くて、オファーをタランティーノは断ったそうです。
もちろんこんなオファーを受けていたら、今ほどの”傑作”にはならなかったでしょうが、”怖いもの見たさ”と、もっとヒットしたかも・・・
なんて考えてもいます。
よしぼう |  2009.11.29(日) 21:55 |  URL |  【コメント編集】

■>よしぼうさん

確かにイーストウッドが出てきてもおかしくない雰囲気がありましたよね。
○○を使ってナチスを倒すというのはかなりのツボでした。
ヒロインの最後は、絵的にも素晴らしかったですね!
micchii |  2009.11.29(日) 15:45 |  URL |  【コメント編集】

■映画への愛

いろいろツボはありますが、
「遙かなるアラモ」のあと映画がはじまると、まるで○○○○映画みたい。(イーストウッド御大がでてきそう。)
なところや、映画愛のあまり○○を使ってナチスを滅亡させるとかいろいろありますね。あと、ヒロインの最期の計算された演出もあげたいところです。
よしぼう |  2009.11.29(日) 01:03 |  URL |  【コメント編集】

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