2009.04.14

『レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦-』(ジョン・ウー)

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦-

「デブ助、また肩車してやる」

待ちに待った『レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦-』観てきました。

“未来への最終決戦”という勘弁してくれ…なサブタイトルにがっくりし、『レッドクリフ Part I』に続いてまたも登場するオープニングの“日本語による解説”に脱力し、それでも、ジョン・ウーならやってくれる!と、期待度はMAXに。

2時間半を費やした壮大な“前ふり”だったPart I、さあ、大スペクタルを見せてくれ!なわけですが、ここからさらに引っ張ります、約1時間半。

さすがは一番好きな西部劇に『ミスター・ノーボディ』を挙げるジョン・ウー、サム・ペキンパーと共に、セルジオ・レオーネの遺伝子もしっかりと受け継いでいるということでしょう。(『ミスター・ノーボディ』はトニーノ・ヴァレリの監督作ですが、レオーネの影響大。詳しくは感想を参照)

『ウエスタン』のブロンソンとヘンリー・フォンダの決闘。
ブロンソンが最初に立ち位置を決めてから、なんと6分引っ張ります。6分ですよ6分。
30秒でも、早く撃たんかい!と痺れてきますが、ありえない6分です。
しかも、レオーネが偉大なところは、その6分間、全く緊張感が途切れないこと。

ペキンパーから“スローモーションの美学”を受け継いだジョン・ウー、今回はレオーネから受け継いだ“引っ張りの美学”が炸裂。
2時間半前ふりをやったのに、さらに1時間半引っ張るとは(笑)

引っ張ったら引っ張った分だけ、炸裂した時の威力は増すというもの(必ずしもそうとは言えませんが)。

東南の風が吹いてからは、“お金かかってます”という大スペクタルが開始。
“連環の計”はどうした!龐統は登場すらしないじゃないか!黄蓋の「苦肉の計」はあっさり却下かい!と、三国志ファンとしては突っ込みどころも多々あるわけですが、“そんな細かいことはどうでもいいじゃん”という、ジョン・ウーの“オレ流三国志”をこれだけ派手にぶちかましてくれたら、もう好きにしてくれと言うしかありません。

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦- 火計

しかも、ドッカンドッカン派手なことをやっているようで、ジョン・ウー十八番の“男ならこれで泣け!”もちゃんと炸裂。

ここでようやく冒頭の台詞となりますが、尚香と孫叔材のエピソード。

普通に考えれば、孫権の妹である尚香が単身敵陣に乗り込むなど、いかに彼女がお転婆とはいえ、ありえません。
ですが、ありえるかありえないかは、ジョン・ウー映画では些細なこと。
燃えるか、泣けるか、その前では他の全ては百歩後退するのがジョン・ウー映画。

デブ助に気付いた孫叔材の表情が一瞬緩み、激戦の中、再び心通わせる二人。
その一瞬の隙に矢を射られる孫叔材。ただ彼を抱きしめることしかできないデブ助。
「デブ助、また肩車してやる」
“男ならこれで泣け!”なジョン・ウー節が炸裂した、全5時間の中で最高の名場面。

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦- ヴィッキー・チャオ

もう一つ、単身曹操の元に乗り込んだ小喬。曹操が彼女の点てたお茶を飲むシーン。ここも屈指の名場面。
Part Iではただのイメクラ好きのエロおやじだった曹操ですが、今回は違います。

小喬が時間稼ぎをしているなどということは、曹操ともあろう男、百も承知でしょう。
彼女のお茶に完全に心奪われているように見えながら、しっかりと風に揺れる蝋燭の火を見ています。ここを見逃してはいけません。

全てを承知で、それでも小喬の茶を飲まずにはいられなかった曹操。
曹操の圧倒的な孤独と、決して叶わない小喬への切ない想い。
ジョン・ウーにこんな演出ができるとは!

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦- リン・チーリン

あと、普通「赤壁の戦い」は曹操の水軍が燃えて終わりですが、その後の地上戦もしっかり描いているのが素晴らしい。
燃えるシチュエーションの一つ、攻城戦。
盾を使った城壁への迫り方、防御側の投石機などなど、見所十分。

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦- 攻城戦

さらに、中村獅童扮する甘興は今回も美味しいところをもっていき、趙雲に至っては、ブブカ顔負けの槍を使った棒高跳びまで。
ここでも、ありえるかありえないかではなく、どうやったら絵になるか、さすがジョン・ウー、わかってますね~。

レッドクリフ Part Ⅱ -未来への最終決戦- 中村獅童

赤壁の戦いといえば、これまた名場面の曹操と関羽のエピソードがあるわけですが、それは完全にカット。
このように、不満点もいろいろあるわけですが、それを補って余りある“男ならこれで泣け!”なジョン・ウー流三国志。

今回も大満足でした。



[原題]赤壁:決戰天下
2009/アメリカ・中国・日本・台湾・韓国/144分
[監督]ジョン・ウー
[アクション監督]コリー・ユン
[音楽]岩代太郎
[出演]トニー・レオン/金城武/チャン・フォンイー/チャン・チェン/フー・ジュン/ヴィッキー・チャオ/中村獅童/リン・チーリン/ユウ・ヨン

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『レッドクリフ Part I』(ジョン・ウー)
トニー、『赤壁』を辞退。伝説の幕開け?
赤壁→・・・→タンゴ
偏差値30からの三国志!

TB(8) CM(8) EDIT

*Comment

■>Cardhuさん

すいません、返事遅れました。

1作目の「格好よければそれでいい」に比べれば燃えないのはその通りなんですが、ヴィッキーのくだりこそがジョン・ウー節だと思いますし、あれだけでも個人的には満足でした。

リン・チーリン、1作目は「邪魔だどけ」と思ってましたが(笑)、今回はよかったんじゃないですかね。
リン・チーリン自身がというより、あそこでお茶を飲まずに入られなかった曹操の孤独がですが(笑)

そういえば、アンディの三国志はどんな感じなんだろう・・・。
micchii |  2009.05.17(日) 11:38 |  URL |  【コメント編集】

■三国志ファンではないのですが…

ジョン・ウーファン(それほど熱烈ではないけれど)として
期待していた仕上がりではなく…それでも近年の歴史大作の
中では充分面白かったですが。
リン・チーリンに魅力を感じればだいぶ違ったのかも、笑

ヴィッキーのくだりは実は男女ということでずいぶん印象
が違いますが「潜入者と敵方との友情」という香港ノワー
ルお得意のシチュエーションなんですね、そういえば、笑
Cardhu |  2009.05.12(火) 17:23 |  URL |  【コメント編集】

■>けろにあさん

ヤフーのレビューでも☆一つの嵐で凄いことになってますが、わかってないですよね~。
『男たちの挽歌』観てから出直して来いと(笑)

小喬と曹操、なんと、大爆笑ですか。
曹操の切なさにウルウルきてた自分っていったい・・・。
言葉がわからないって怖いですね~(笑)
「子ども扱い」よりは、「今もって幼い頃のイメージを抱いたまま対応」だと思いたいです。
micchii |  2009.04.17(金) 14:34 |  URL |  【コメント編集】

■>春巻さん

無駄に長いとの批判もわかりますが(特にリン・チーリン関連)、引っ張りの美学が炸裂していると思うんですけどね~。

曹操、実際はかなり“できる男”ですので、パート1での扱いはおいおいでしたが、今回は泣かせてくれました。
“できる男”の面は相変わらず弱かったですが・・・。

孫叔材と尚香、ベタといえばそれまでですが、ベタ中のベタで泣かせるのがジョン・ウー節なわけで(笑)
micchii |  2009.04.17(金) 14:29 |  URL |  【コメント編集】

■>ハナユビさん

初めまして、コメントありがとうございます。

>投稿記事に、映画への愛が感じますなぁ。

“愛すべき映画たち”とのブログ名でやっておりますので、何よりの嬉しいお言葉ありがとうございます。

>作り手の意図をくめると、映画の楽しさ倍増。

三国志の熱烈なファンであればあるほど不評みたいですが、ジョン・ウーが重きを置いているところがわかってないですよね。
そこさえわかれば素直に楽しめるのに、もったいないですね~。
micchii |  2009.04.17(金) 14:22 |  URL |  【コメント編集】

■まさしく!

> “オレ流三国志”をこれだけ派手にぶちかましてくれたら、もう好きにしてくれと言うしかありません。
そうです、そうです、そうなのです!
それを楽しむ作品なわけで、ぐちゃぐちゃツッコミ入れるのはナンセンスですよね。

ところで、小喬が自害するそぶりをして曹操が止める場面、中国ではみんなが大爆笑でした。
中国語がまだよくわからない私は、なんで?なんで?ココ笑うところ?と焦り~。
あとで調べたら、なんでも、曹操の言ったコトバ(日本語字幕では「よせ」だそうですが)は、子供が騒いでいるときなどに言うコトバらしいんですね。直訳すると「騒ぐな」。
曹操は、小喬を子ども扱いしてた、もしくは、今もって幼い頃のイメージを抱いたまま対応してたってことになるんだと思います。
セリフのニュアンスで雰囲気変わりますよねぇ。
けろにあ |  2009.04.14(火) 23:35 |  URL |  【コメント編集】

■曹操に泣ける....

引っぱりの美学からいくと1時間半って史上最長じゃないでしょうか(前フリのPart 1もカウントしたらさらに恐ろしいことに!)。あれだけ引っ張られると、わー燃えろー!このままどんどん燃えちゃって!と観客の心にも火がつくというものですね!

ところで、曹操ですが、蝋燭の火、見てましたよねえ。「風向きが!」と怒りだすかなーと思ってたら、そこで茶を飲むとは、曹操、あんた…(泣)

孫叔材は尚香が仲良くなった時点で不吉な予感がしており、心の準備を整えておりました。彼は最後の最後まで素朴な青年でしたね(遠い目)
春巻 |  2009.04.14(火) 23:22 |  URL |  【コメント編集】

■はじままして…

ハナユビと言います。
レッドクリフで検索してきました。
投稿記事に、映画への愛が感じますなぁ。
いや、本当に細かい演出をしてますわ。
作り手の意図をくめると、映画の楽しさ倍増。
今回のパート2はいたるところに伏線がありますな。
もう一回見ると、違う八卦がありそうですわ。
とりあえず、足跡を付けさせていただきまっさ。
ペト。
ハナユビ |  2009.04.14(火) 20:17 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://micchii.blog4.fc2.com/tb.php/1037-97b60221

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

「レッドクリフ Part?-未来への最終決戦-」誰?こんな長いサブタイ付けたの!

[レッドクリフ] ブログ村キーワード  大ヒットした「Part ?」に続いて、いよいよ完結編の公開。「レッドクリフ Part?-未来への最終決戦-」(東宝東和/エイベックス・エンタテインメント)。しっかし、チラシのどこにもこんなサブタイ書いてなかったけどな~。  ...
2009/05/26(火) 20:38:24 | シネマ親父の“日々是妄言”

レッドクリフ PartII -未来への最終決戦-(2009年)

【コメント】★★★★★★★☆☆☆ 「赤壁の戦い」の「せ」の字も感じないままに、中途半端に終わった前作とは異なり、本作はまさに「赤壁の戦い」一色の映画となっている。...まぁ、当たり前と言えば当たり前。 そもそもが一本の映画にするはずが、長くなりすぎたので二?...
2009/05/09(土) 10:34:58 | シネマテーク

レッドクリフ part2

なが~~~い前フリに耐えた先に,見応えが待つ!  
2009/04/19(日) 12:30:38 | Akira\'s VOICE

レッドクリフ Part II 未来への最終決戦

曹操の荊州侵攻から赤壁の戦い前までを描いたジョン・ウー監督の 『レッドクリフ Part?』の続編。今作ではクライマックスの赤壁の戦いを 描く。西暦208年、曹操は同盟を組んだ劉備・孫権連合軍5万を討つために連合軍が 駐屯する赤壁の対岸に80万の軍勢と2000隻の戦艦を配..
2009/04/17(金) 23:49:40 | だらだら無気力ブログ

「レッドクリフ Part?未来への最終決戦」堂々の歴史大作、大画...

「レッドクリフ Part?未来への最終決戦」★★★★ トニー・レオン 、金城武 、チャン・フォンイー 、チャン・チェン 主演 ジョン・ウー 監督、2009年、144分 「兵の数では圧倒的不利な 赤壁の戦い、見応えのある決戦模様、 そして累々と広がる倒れた血まみ?...
2009/04/16(木) 07:45:17 | soramove

『赤壁 下:決戦天下(邦題:レッドクリフPART?-未来への最終決戦-)』(簡体字字幕&英語字幕)

先週の土曜日に見てきました『赤壁 下:決戦天下(邦題:レッドクリフPART?-未来への最終決戦-)』。 こちらでは今月8日から公開になっていて、...
2009/04/14(火) 23:38:24 | けろにあ・みだすのつぶやき

レッドクリフ Part II(赤壁)

そのうすら寒いサブタイトルは何とかならなかったのか、と文句たれながらも観ました。いいところと悪いところが混在。でも肝心の戦い場面は、ドゴォォーン!とぶちかましててよかったです。燃えてるわ、ガンガン燃えてるよ!船も砦も! 『レッドクリフ Part II(赤壁)...
2009/04/14(火) 23:00:21 | 春巻雑記帳

レッドクリフPART?有給鑑賞日

西暦2009年4月14日 有給取得っ! 烈烈 レッドクリフPART?を見たぞっ! 烈烈 第1作目、赤壁前哨戦を見ているオイラとしては、 とにかく見るべしっ!說 と、言いたいね~。漣 ※前回記事「レ..
2009/04/14(火) 20:16:47 | 1965’s盛り上がりの夜空に☆新

▲PageTop

 | BLOGTOP |