2002.10.25

No.55 This is スルーパス

今回の話題は、折り返しの第4節が行われたチャンピオンズリーグ1次リーグ。
見た試合は、サンシーロでの大一番、ACミランVSバイエルン・ミュンヘン。

デポルティボがランスに勝ってしまうと、バイエルンはここで負けたらその時点で終わり。チャンピオンズリーグの常連にして最低でも毎年ベスト8にはいっていたバイエルンですが、早くも追い詰められました。

追い詰められた時のバイエルンはほんとに凄まじく、よく言う“ゲルマン魂”なのかどうかはわかりませんが、数々の逆境を跳ね返してきたバイエルン、今回も立ち上がりからの死に物狂いの猛攻を期待して試合開始!

試合が開始して、あれっ!?勝つしかないバイエルン、なのに・・・。もちろん真剣にやってるに決まってるんですが、伝わってくるものがありません。

技術うんぬんを抜きにして、“何が何でも”という気迫というのは、見ているこっちにまで伝わってくるものです。いい意味でイッちゃってる状態です。例えばこの前書きましたベティスVSマドリーのあの死闘。あの試合のベティスの選手たちからは、見ているこっちまで熱くなるくらい、伝わってくるものがありました。

バイエルンの選手からはそれが伝わってきません。立ち上がりからなりふり構わぬ猛攻をしかけてくるかと思われましたが、サンシーロで先制されることの意味を知ってるといえばそれまでなんですが、1点取りにいくというよりも、先に取られたくないというそういう試合運びでした。

しかし、今シーズン1試合平均の得点で欧州最強を誇るミランの攻撃です、守って耐えられるものではありません。今のミラン相手に受けに回ったら一方的にボールを支配された末にインザーギの決定力の前に大量失点をくらうのがオチです。

案の定、ミランは開始わずか11分でセルジーニョが先制。セードルフの見事なパスから、これまた左足アウトサイドでの柔らなタッチの見事なシュートでした。

これでミランの一方的な展開かと思われましたが、エウベルが中央を凄まじいスピードでドリブルで駆け上がり、マルディーニをあっさり置き去りにするとシュート!ジーダがいつものように?前にこぼしたところにバラックが襲いかかります!
しかし、これはジーダが自らのミスから失点するわけにはいかないと何とかクリア。

前半23分、エウベルがまたもや中央を突破しDFをひきつけると、左サイドにいたタルナトにパス。
そして、パワー系キックならワールドクラスのタルナトの左足が火を吹きました。ロベルト・カルロスも顔負けの、文字通り“弾丸”シュートがミランのゴールネットに突き刺さりました!

この後、バイエルンは徐々にペースをつかみかけていきましたが、それでも遠目からシュートを放つだけで、ジーダを脅かすまでには至りませんでした。

後半、アンチェロッティ監督はイマイチ調子の悪いアンブロジーニに代えガットゥーゾを投入。このガットゥーゾの投入は大正解で、バイエルンの突破を抑えてミランが少しずつボールをキープできるようになっていきました。

そして、64分、前に『針の穴を通す男ルイ・コスタ』の時に書きましたが、ルイ・コスタの目がキラ☆っと光ったかわかりませんが、ルイ・コスタがペナルティーエリアやや手前で前を向いてボールをキープすると、彼の目には一本の細い道が見えたことでしょう。ボールは、その上を寸分の狂いもなく転がっていきました。タイトルの通り、『This is スルーパス』。

スルーパスというものが何たるかを知りたい方は、このルイ・コスタのパスをこそ見るべきでしょう。コース、速さ、タイミング、すべて完璧。これ以上のパスはありません。まさにパーフェクトでした。

そのパーフェクトなパスに走りこんだのが、今シーズンは神をも味方につけたかのようにゴールを量産するピッポことフィリッポ・インザーギ。彼に残された仕事はボールをただゴールに流し込むだけでした。

確かにインザーギのシュートも一流でした。セルジーニョと同じようにアウトサイドで柔らかく流し込むシュート。あれを強く打って外してしまうFWはいくらでもいますから、インザーギのシュートも十分に一流です。

しかし、インザーギレベルともなればあそこまでくれば外しません。ルイ・コスタのパスの時点ですでに勝負はついていました。

今はもう存在自体していないフィオレンティーナで、バティストゥータにゴールを量産させていたルイ・コスタ。ミランに期待を一心に浴びて移籍したものの怪我に泣き、W杯でも残念な結果に終わり、リバウド、セードルフが移籍してくることにより、放出リストにも挙がっていたルイ・コスタ。

しかし、そんなことをすべて過去のことにしてしまったかのように、今ルイ・コスタは全盛期の輝きを取り戻しています。

彼が前を向いてボールをキープしたら、パスの選択肢は無限にあります。その中から瞬時にして最高の選択をし、引かれた線の上を転がるように、ボールはパーフェクトなコースを転がります。

ルイ・コスタも出していてほんとに楽しいでしょうし、受けるインザーギもこれほど楽しいことはないでしょう。
きっと凡人にはわからない一筋の光が、彼等2人にはピッチの上に見えていることでしょう。ルイ・コスタとインザーギの2人を目で追っているだけで十二分に楽しめます。

屈強なDFラインにできる一瞬の隙を常に狙っているインザーギ、そんな彼の動きを常に視野に入れながら彼を最高に生かすパスコースを模索し続けるルイ・コスタ。

そんな2人の呼吸があった瞬間にはもうDFはどうすることもできません、すべてが手遅れです。
ルイ・コスタはもちろんDFが追いついてクリアできるようなやわなパスは出しませんし、気づいてから追いつけるほどインザーギのスピードは遅くはありません。

常に先手をとっているのはルイ・コスタとインザーギであって、後手を踏んだDFに残された道は、GKのミラクルセーブを祈ることくらいでしょう。

これを防ぐ手段は、インザーギが動こうとする場所をピンポイントでカバーすることくらいですが、これができるのはネスタ、カンナヴァーロ、マルディーニなどの超一流だけです。
マルディーニは限界説も囁かれていますが、確かにスピードの衰えは否めませんが、読みは相変わらず超一流です。

その後ついに、というかやっとバイエルンの猛攻が始まりました。相変わらず鬼気迫るものは感じられませんでしたが、ジーダを脅かすには十分な攻撃でした。70分前後にはピサロ、クフォーがあわや同点という決定機を迎えましたが、共に惜しくも外れました。

バイエルンこの試合最大の決定機だったのは、75分前後に訪れたエウベルのヘディングシュート。惜しくもクロスバーを叩き、そこに確かピサロに代わって入ったサンタクルスだったと思いますが、クロスバーから跳ね返ってきたボールが彼の目の前に来ましたが、ジャストミートできずこのドフリーを決めることができませんでした。

その後も完全にバイエルンのペースでしたが、ミランはなんとか耐え抜いて試合はこのまま2-1で終了。死のグループで3番手と見られていたミランがなんと4連勝で早くも1次リーグ突破。文句なしの強さです。

バイエルンもここまでかと思われましたが、なんとランスが3-1でデポルティボに完勝。バレロンが離脱してから一気に調子が狂ったデポルティボ。各チームには代えのきかない選手というのがいるものです。デポルティボにバレロンの代わりはいません。彼が帰ってくるまでデポルティボは粘れるでしょうか。

ランスのおかげでバイエルンは首の皮1枚残りました。それでも、バイエルンは4試合を終わってわずかに勝ち点1、ランスにも勝ち点3差をつけられ最下位です、崖っぷちなことに変わりはありません。

さて、グループGの話をしたところで、ついでに2日目から他の組の結果について。

まずグループEでは小野の所属するフェイエノールトは一番大事だったディナモ・キエフとのアウェーゲームで0-2と完敗。ユーべとはアウェーでやるだけに苦しくなりました。

そのユーベは、ニューカッスルの意地の前にチャンピオンズリーグ初黒星。ニューカッスルも夢をつなぎました。
1位から最下位までの勝ち点差は4。すべてのチームに可能性が残っています。

続いてグループFでは、ようやく調子が出てきたレバークーゼンがマッカビ・ハイファを2-1で下し、勝ち点を6に伸ばし2位に浮上。
マンチェスターUはオリンピアコス相手に2点をリードするも、ファーガソンさすがに相手をなめたのか、ベッカムとギグスを下げチャドウィックとフォーチュンを投入。しかし、こういったなめた真似をすると大概バチが当たるものです。立て続けに2点を取られ同点に。

しかし、最後はスコールズが伝家の宝刀ミドルを叩き込みなんとか2-3で勝利。勝ち点を12に伸ばし、2次リーグ進出を決めました。
リーグ戦ではイマイチのマンUですが、チャンピオンズリーグでは4試合で14得点と大爆発しています。

続いてグループGは先ほど書きましたので、グループH。まずはクラブ・ブルージュがホームでガラタサライ相手に先制、いったん追いつかれたもののその後2点取って3-1で快勝。ガラタサライを抑えてなんと2位につけています。

今シーズンこそはと思わせながらも相変わらず寒い内容のバルセロナは、勝ち点3を取ったことがすべてという試合ながらも、ロコモティフ・モスクワを1-0で下し、こちらも4連勝。2次リーグ進出を早くも決めましたが、このままの内容では結果は見えています。

そして遡って1日目。

まずはグループAでは、なんとオーゼールがアウェーでアーセナルに勝利。2点を先行し、そのあとアーセナルの猛攻を受けながらもカヌの1点のみに反撃を抑え、なんとそのまま勝ってしまいました。ルーニーにプレミアリーグでの無敗神話を止められたアーセナル、ここらで少し一息といったところでしょうか。それでも、すでに勝ち点9をゲットしており何の問題もありません。

もう1試合は、ドルトムントがホームでPSVと1-1のドロー。ここで勝って勝ち点を9に伸ばしたかったドルトムントでしたが、勝ち点は7にとどまっています。それでも、ドルトムント2位抜けの可能性は高いでしょう。

続いてグループB。トップバレンシアはアイマール、ビセンテなど主力を休ませながらもアウェーでしっかりと勝ち点1をゲット。終了間際に追いつかれる悔やまれる内容でしたが、本気で粉砕しにいくならベストメンバーで挑んだでしょうし納得の勝ち点1、勝ち点を10に伸ばしています。

もう1試合は、リヴァプールがアウェーでスパルタク・モスクワを0-3で粉砕。しかも、オーウェンのハットトリックです!リヴァプールもなんとか2位抜けできそうです。

続いてグループC。ホームでマドリーと3-3で引き分けたAEKアテネ、今度はなんとサンチャゴ・ベルナベウで2-2の引き分け。4試合で4分。文句なしに一番しぶといチームはこのチームでしょう。

ローマはなんとオリンピコでゲンクにスコアレスドローとファンからもブーイングが飛ぶ最悪の試合をし、気がついてみたらローマとAEKアテネの勝ち点差はわずか1。ローマはこのしぶといAEKアテネを振り切れるでしょうか。

最後にグループDでは、インテルがアウェーでリヨンと3-3のドロー。リヨンの攻撃力は本物です。それにしても、インテルはとんでもない試合が続きます。3失点とはなんとかならないんでしょうか・・・。カンナヴァーロを遠征に連れていかなかったのが大きく響きました。

もう1試合アヤックスVSローゼンボリも1-1のドロー。この結果勝ち点7のリヨンがトップに立ち、勝ち点5のインテルとアヤックスが続き、最下位ローゼンボリも勝ち点3。

インテル圧勝と言われていたグループDでしたが、一番の激戦区となってしまいました。チャンピオンズリーグでは孤軍奮闘のクレスポがこの日も2得点と一人気を吐いていますが、どうもチャンピオンズリーグではスクデットに比べてモチベーションが低いような・・・。確かに寸前で逃したスクデット奪取が至上命令ですが、チャンピオンズリーグもせめてベスト8くらいにはいってほしいものです。

今回は何をおいてもルイ・コスタのスルーパス。パーフェクトでした・・・。

 

TB(0) CM(0) EDIT

2002.10.23

No.54 神様からのプレゼント

今回の話題は、6節にして早くもやってきたセリエAの大一番イタリアダービー、インテルVSユベントス、舞台はもちろんジュゼッペ・メアッツァ、通称サンシーロ。
セリエAのチームの中で、セリエBに降格したことのないたった2つのチームであるインテルとユベントス、ライバル意識は並大抵のものではありません。
しかも、インテルとしては、ユベントス戦はここ9試合勝ちがなし、つまりリーグ戦で5年あまり勝っていないのです。確か4分5敗か5分4敗だったと思います。

サンシーロで行われるということもあり、インテルとしては何がなんでも負けられない一戦。しかも、毎年この対戦は疑惑の判定(多くはユーべ有利)で物議を醸し出し、それに加え昨シーズンは最終節までインテルが首位だったにも関わらず最後の最後にユーべにスクデットを持っていかれたということもあり、インテルとしてはまさに“リベンジ”の一戦。
試合開始前には花火も上がり、雰囲気はすでに最高潮。同じサンシーロでの試合でも、下位チームとの試合と、ユーべ相手との試合ではスタジアムの雰囲気、もっといえば殺気が違います。

スタメンは、インテルがGKトルド、そして今日は3バックでの3-4-1-2で3バックはカンナバーロ、マテラッツィ、コルドバ、中盤はココ、アルメイダ、ディ・ビアージョ、サネッティ、そしてトップ下にレコバが入り、2トップはもちろんクレスポにヴィエリ。

対するユベントスは、トレゼゲ、モンテーロ、タッキナルディを欠くものの、GKブッフォンに、4-3-1-2で4バックはビリンデッリ、ユリアーノ、フェラーラ、テュラム、中盤は左からダービッツ、トゥドール、カモラネージ、そしてトップ下はネドベド、2トップはデル・ピエロにサラス。

レフリーはご存知コッリーナさん、役者は揃いました。

試合序盤は、完全にユベントスのペース、トゥドール、ネドベドが次々にシュートを放ったかと思えば、デル・ピエロのヒールパスから抜け出したテュラムの突進も何とかインテルは凌ぎきりました。

前半20分くらいまでは、ユベントスが猛攻。インテルは、いつものクーペルサッカーの如く、まずは守備を固めてカウンター狙い。
それでも、前線にはレコバ、ヴィエリ、クレスポという超がつく危険な3人が、ユーベのわずかの隙を常に狙っています。

20分過ぎからは、ユーベの一方的な展開というわけでもなくなり、試合は一進一退の展開に。
インテルも、完全なカウンター狙いから、少しずつ攻撃を組み立てられるようになりましたが、それでもゲームを一方的に支配するというところまではいたらず、前半はそのまま終了。

後半が始まると、またもやユーベがわずかに試合を優位に押し進め、そして迎えた52分、ゴール前でデル・ピエロの放った左足のパーフェクトなシュート。コースを狙った少しカーブのかかった素晴らしいボールであっただけでなく、スピードも威力も十分、ボールは間違いなくゴール右上隅を捉えていました。
サンシーロも、そしてインテリスタの管理人も「やられた!」と叫んだその瞬間、我等が守護神トルドが神懸り的なセーブでわずかに指の先に当てボールはわずかに上にそれました。これは完全な1点もので、トルドでなかったら入っていたでしょう。

連戦のため疲れが心配されていたデル・ピエロは、疲れどころかほんとに絶好調で、この後もデル・ピエロのシュートは何度もインテルゴールの枠を捉えていました。
さらに、ネドベド、サラスあたりも素晴らしいシュートを放っていましたが、得点は入らず。

一方的に攻められていたインテルでしたが、60分過ぎ、この試合初めてサネッティが右サイド深くえぐり素晴らしいクロスボール、ヴィエリが二アサイドに走りこみDF2人を引きつけたため、クレスポは完全なドフリー。
インテルに訪れたこの試合最初の決定機でした。しかし、クレスポのヘディングはクロスバーの上へ・・・。

黙っていないユーべも、デル・ピエロのラストパスからサラスがボレーで狙うもこちらもわずかにクロスバーの上。

この後も、基本的にはユーベが攻撃を繰り返すものの、インテルのカウンターの精度も徐々にあがっていきました。

そんな中、右サイドから信じられないスピードとキレでドリブルで駆け上がってきたカモラネージからゴール前のサラスへパーフェクトなパス。サラスは完全にフリー。またしてもサンシーロも管理人も「やられた!」と叫んだその瞬間、トルドがこの日2度目の神懸りセーブでこれをクリア!この日のトルドはほんとに神懸っていました。

そして、耐えに耐えてきたインテルに、その数分後またもや決定的なチャンスが。ユーベのオフサイドトラップの失敗に乗じてスルーパスに反応したヴィエリが完全にブッフォンと1対1。
しかし、トルドも世界的な守護神ですが、24歳にしてすでにセリエAで200試合以上のキャリアを誇り、そのトルドにポジションを与えることなく、アズーリでもカテナチオ(最近は崩壊していますが・・・)の最後の番人として君臨するブッフォン、ライバルトルドのスーパーセーブ連発に黙っているわけがありません。
ヴィエリがシュートを打たず左に抜きにかかったところを体を投げ出して見事セーブ、あの状態でPKを与えずヴィエリの突進を止められるキーパーは何人もいるものではありません。

しかし、ヴィエリとて“重戦車”の異名をとるだけのことはあり、あっさりブッフォンにボールを奪われるという無様な真似はしません、しっかり“置き土産”を残していきました。
ブッフォンはヴィエリからはボールを奪ったものの、その手からわずかにボールがこぼれそうになったのです。

そのほんのわずかの隙を見逃さず襲い掛かったのが、こちらも世界的なストライカークレスポ、ブッフォンの手からわずかにこぼれたボールを奪い去るとそのまま無人のゴールにシュート、今度はサンシーロも管理人も「もらった!」と思いましたが、そこに立ちはだかったのはゴールポスト。
W杯でもなにかと活躍したゴールポストですが、ヴィエリ、ブッフォン、クレスポというワールドクラスの攻防の後に、無常にもクレスポの前に立ちはだかりました。

しかし、このシーンはまだ終わりません。ポストから跳ね返ってきたボールに走りこんできたのは、インテル攻撃陣のワールドクラスの最後の一人レコバ、こぼれてきたボールを拾うと左にドリブルで流れ左足で強烈なシュート、しかしこれは惜しくもゴール右に外れました。

耐えに耐えたインテルが、ついにやってきたこの試合最大の決定機に、ここぞとばかりにワールドクラスの3人が襲いかかり、そして一方のユベントスも、ゴールポストまでも味方につけた守護神ブッフォンが一人で立ちはだかりました。
ほんとにレベルの高い攻防に、サンシーロの歓声も一際大きく・・・。

前に、守備偏重のセリエAの試合より、魅力的な攻撃に溢れるリーガ・エスパニョーラの方が断然面白いと書きました。
確かに、多くの場合はその通りで、この前のベティスVSマドリーのように、ほんとに最高レベルの攻撃サッカーの応酬も文句なしに面白いです。

しかし、ただ守っているだけの試合は確かにつまらないですが、点が入らない試合がすべてつまらないというわけではありません。中には、点が入らなくても最高に楽しい試合もあります。
この試合はそういう試合の最たるもので、基本的にはお互いにミスを犯したくないため慎重になるあまり、守備に重きを置いていることは間違いありませんが、一端攻撃に移った時のスピードと、そしてしっかりシュートを枠にもっていくだけの技術、さらには時折見られるワールドクラスの攻防、入っても何の不思議もない素晴らしいシュートを、涼しい顔で信じられないセーブで防いでしまう両守護神、点は入らなくても、これほど面白い試合はありません。

スコアレスドローでも十分に面白かったんですが、この試合は、そのレベルの試合に終わりませんでした。
ドラマはここからでした。

右サイドで圧倒的なスピードとキレでココを圧倒していたカモラネージがインテルのペナルティエリア内に走りこみ、そこにダービッツからブラボ~なパスが通り、カモラネージはそのボールに対してダイレクトでゴールの方向に向かって鋭い切り返し!
そこで、ココが思わず足を引っ掛けてしまいました・・・。カモラネージが自分でつまずいたように見えなくもありませんでしたが、コッリーナさんの判定はPK。

インテルイレブンは猛然と抗議。過去のイタリアダービーでも、インテルは何度も疑惑の判定によるPKに泣かされています。それはデッレ・アルピ(ユベントスのホームスタジアム)でのことが多く、審判も世界一の審判であるコッリーナさんですし、サンシーロだからユーべ有利の疑惑の判定も今回はないだろうと思っていましたが、物議を醸し出す判定だったことは間違いありません。
しかし、毅然としていたコッリーナさんはさすがでした。

デル・ピエロのPKはトルドの逆をついたものの、なんとゴールバーにわずかに当たり入るという際どいもの。
さすがデル・ピエロ、役者の違いを見せつけ、ただ決めるだけではなく、ハラハラさせながら決めるというおまけ付き。
PKで左右どちらかの上隅に蹴ればキーパーはまず止められませんが、それは上に外したりバーに当てるというリスクも伴うもの。
この大一番で、しかも試合終了間際にそこに蹴りこんだデル・ピエロはさすがの一言でした。

このPKが決まったのが89分。サンシーロのお客さんもさすがに諦めたのか、次々と席を立ち始めました。それもわからなくはありません。
2度の完全な決定機を外し、89分に引導を渡される形でPKを決められてしまったのです。このまま0-1で敗れていたら、このPKの判定はかなりの物議を醸し出したことでしょう。

しかし、ロスタイム表示はなんと5分。何かを起こすには十分な時間です。
まず起こったのが乱闘。93分、モルフェオとコンテが共に一発退場。

そして、試合終了直前、インテルにコーナーキックのチャンス。これがラストプレーと見るや、トルドまでもがゴール前に上がっていきインテルは全員攻撃。

ゴール前に上がったボールに対しブッフォンがパンチングしにいきましたが、ブッフォンはキーパーチャージぎみの当たりを受けパンチングできず、ボールはトルドの体に当たってゴールの中にコロコロと・・・。
最後にヴィエリに当たっているようにも見えました。

記録はヴィエリのゴールとなりましたが、トルドは俺が決めたんだと大ハシャギ。まるで子供のような喜びようで、仲間もトルドの上に乗りかかるように喜びを爆発させました!

今度は、ブッフォンに対してのキーパーチャージではないかとユベントスイレブンが猛然と抗議。
しかし、判定は覆らず、試合はそのまま1-1のドロー。
確かにブッフォンには可哀相な判定に思えましたが、最後は、“負けるわけにはいかない”というインテルの執念が少しだけ上回った奇跡の同点劇でした。

試合後、「誰がゴールを決めたんですか?」と質問されたトルド、「俺だよ、俺が決めたんだ!」。
すかさず「映像ではヴィエリが決めたように見えるんですが・・・」とつっこまれるも、「映像は今回はいらないんだ。私です」と断言(笑)
ヴィエリが最後に触れたのかもしれませんが、トルドの体に当たってボールがゴールに吸い込まれたのは間違いなく、コーナーキックにキーパーが上がって行って決めてしまうという、そうは見られないことをこの大一番でやってのけたトルド、ただでさえ2度の決定機を神懸り的なセーブで防いでいたトルド、最後はまさに神を味方につけたゴールでした。

イタリア以外ならどこの国に行っても不動の守護神でありながら、ブッフォンがいるためにベンチに座っているしかないトルド、それでもめげずにチームのためにすべてを捧げてきたトルド、今日の同点ゴールは、そんな彼への、神様からのささやかなプレゼントだったのかもしれません。

 

TB(0) CM(0) EDIT

2002.10.22

No.53 ルーニー、アーセナルを止める!

今回の主役は、エバートンのFWウェイン・ルーニー、10ヶ月に及んだアーセナルの無敗記録についに終止符が打たれました。

いつものごとく、試合開始早々先制したのはアーセナル、開始わずか8分でリュングベリが先制。これでまたいつものごとくアーセナルの大量得点が始まるのかと思っていましたが、アウェーでは最悪でもホームでは強さを見せるエバートンも負けていません。22分にラジンスキが豪快に決めて同点!

その後も、エバートンは王者アーセナルに真っ向勝負を挑み、前半終了間際にはラジンスキがペナルティエリア内でアシュリー・コールに倒されPKかと思われましたが、主審の笛は吹かれませんでした。

後半に入っても、エバートンは何度か決定的なシュートを放ちましたが、代表戦の失態の雪辱に燃えるシーマンがスーパーセーブ連発でアーセナルゴールを死守。
試合はこのまま引き分けで終わると思われましたが・・・。

試合終了直前、ロングボールが残り10分ほどで途中出場の前線のルーニーへ。これを高い位置の柔らかいトラップで見事足元にボールを沈めると、体を反転させ20メートルは軽くある位置から迷わずシュート。早くて美しい弾道を描いたそのボールは、ゴール左上に叩き込まれました!このスーパーなゴールには、英語の実況も「incredible!(信じられない!)」「unstoppable!(誰も止められない!)」「golden boots(黄金の足)」と、これでもかという言葉を並べていました。

このゴールは、いろんな意味で歴史的な一撃でした。まずは、アーセナルの無敗記録をついに30試合で止めたということ。いつかは止まるのが記録ですが、見ていて負ける気配すらなかったのが今シーズンのアーセナル。しかし、ついに止まりました。それでも、リュングベリのゴールで、連続試合ゴールは49試合といまだ更新中。

さらに、このゴールは、あのオーウェンの持っていた17歳と145日というプレミアリーグでの最年少ゴール記録を大幅に更新する16歳と360日でのゴール。規約によりチームとプロ契約を結べるのは17歳からのため立場は練習生で、週休もわずか80ポンド(約1万5800円)。こんなバイト代ほどの金額しかもらっていない選手が王者アーセナルの無敗記録を止める歴史的な一発を決めてしまうあたりが、母国の懐の深さか・・・。
それでも、24日の誕生日には週給1万ポンド(約197万8000円)の契約を結ぶと言われています。17といえば高2。お金は何に使うんでしょうか・・・。

それでも、前々から逸材と言われていた選手。FAユース杯ではオーウェンの最多得点記録にあと1ゴールと迫り、これまたオーウェンが持っていたプレミア最年少出場記録も大幅に更新していました。
これには、敵将ヴェンゲルも、「私がイングランドに来て以来、彼がもっとも大きな才能を持つ選手でしょう」「彼はFWが必要なものをすべて持っている」と絶賛。
しかし、早熟の天才がいろんなプレッシャーの前にそのまま表舞台から消えていった例も数知れません。あまりにもすごいことをやってのけてしまったルーニーに対して、「彼はまだピッチの中でも外でも成熟していません。我々は彼を守る必要があり、ファンがそれを理解してくれることを望んでいます」と、デイビッド・モイーズ監督も気配りを忘れませんでした。

体力的にも、まだ90分フル出場は難しいでしょうが、いろいろ騒ぐ周りに惑わされずに一歩一歩歩んでいけば、間違いなく将来のイングランド代表のエースでしょう。オーウェンが持つイングランド代表の最年少出場記録を更新する日も、そう遠い話ではないかもしれません。

若い才能が桧舞台に踊り出たその一方で、ニューカッスルのシアラーがプレミア通算300ゴールをついに達成!ブラックバーン時代には1試合平均1点弱というとんでもない決定力を誇っていたシアラーですが、まだまだ衰えるどころか相変わらずの決定力を見せつけてくれています。
チェルシーでは、これまた大ベテランのゾラが円熟のプレーでゴールを量産、こちらも止まりません。2人とも、若い者には負けるかと、円熟のテクニックだけでなく、“気持ち”が伝わってくるプレーを見せてくれています。

熱いプレミアリーグは続きます・・・。

 

TB(0) CM(0) EDIT

2002.10.17

No.52 自由の代償

ジーコジャパンの初戦ジャマイカ戦、ついにキックオフされました。
注目はなんといってもマスコミが『黄金のカルテット』と騒ぎ立てた中盤ですが、あまりにも本家に失礼なので、ここでは使いません。

それでも、この4人が同時にピッチに立ち、しかもある程度の決まり事はあるものの自由にプレーしていいなんて、トルシエ時代には考えられなかったこと。特に、トルシエ時代には左サイドで窮屈な仕事をさせられていた小野は、やっとその呪縛から解き放たれたかのように、ほんとに楽しそうに伸び伸びとプレーしていました。
小野が日本でもオランダでもファンの心を掴んで離さないのは、楽しそうにプレーしているそのことが見ている方にも一発で伝わってくるところ。しかし、トルシエ時代の彼にはそれが見られませんでした。昨日の楽しそうにプレーする小野をトルシエが見ていたとしたら、果たしてどう思ったでしょうか・・・。

得点も小野。自らのパスカットから、中田、高原と中央を突破し、最後は右サイドでフリーになっていた小野がゲット!W杯でのロナウジーニョ→リバウドを彷彿とさせる素晴らしいゴールでした。
あぁこれで、いろんなことに縛られたトルシエの時のサッカーから解き放たれて、自由に楽しいサッカーで、見ている方も、やっている方も最高のサッカーを見せてくれるのかぁとおおいにワクワクさせられましたが、ここからは“自由”の悪い面が顔を出し始めました。

自由にパスを回すのはいいんですが、それまでなんです。いくら華麗にパスを回しても何の意味もないのがサッカー、サッカーは点を入れるスポーツです。しかし、中盤でパスが回っても、中盤と前線の2人の間には、大きな隔たりがあるように感じられました。

ジャマイカだからこそ中央を突破できましたが、相手のレベルが上がればあんなことは許してくれません。レベルの高い相手から点を取るには、まずはセットプレー。これは世界のトップレベルでも同じことが言えます。近年のサッカーでは、ガチガチに固めてスコアレスドローを狙おうと思えば、それなりのレベルのチームならみんな出来ます。そんな中、得点の大半はセットプレーからです。

流れの中では、まずは圧倒的な個人技。W杯の時にも書きましたが、あのアルゼンチンが圧倒的な攻撃力で攻め続けながらびくともしなかったスウェーデンの鉄壁の守備を破ったのは、たった1人の、アンリ・カマラの個人技でした。
これまたアルゼンチンの猛攻にもびくともしなかったファーディナンド率いるカテナチオ21世紀スペシャルを粉砕したのは、ロナウジーニョという稀有な才能でした。
このように、鉄壁の守備を破るのはまずは個人技、そして中でもドリブルです。いくら、鉄壁の守備を敷いても、1対1で抜かれてはそこに大きな穴が空いてしまうからです。

しかし、どのチームにもロナウジーニョがいるわけではありません。そうなると、アルゼンチンはなぜスウェーデンやイングランドから得点できなかったのでしょうか。ナイジェリア戦にしてもコーナーキックからですので、流れの中では取れてません。
それは、猛攻に見えて、実は中央からのゴリ押しに過ぎなかったからです。いくら中央から力に任せて攻めても、スウェーデンや、ファーディナンド、キャンベルと文字通りの壁が立ちはだかるイングランドの前では全部跳ね返されて終わりです。
一見猛攻に見えるだけで、守っているほうとしては、体力の消耗はするものの、0で抑えることはそう難しいことではありません。

それでは、アルゼンチンに足りなかったものは何なのか。それは、サイドからの攻撃です。セットプレーを封じられ、圧倒的な個人技を持たないチームが得点する最大の武器はサイド攻撃しかありません。
例えば、ネスタやカンナヴァーロなどワールドクラスのDFは正面からの1対1では無敵を誇ります。カンナヴァーロが正面からのハイボールに競り負けるのを見るのは難しいことですし、ネスタがあっさり1対1で抜かれるシーンを探すのも難しいでしょう。

そんな1対1で無敵を誇る彼等でも、サイドからのクロスボールに対して、味方との連携が乱れ、ちょっとしたポジショニングミスから失点してしまうということは、ない話ではありません。そこでは完全な1対1という勝負にいろんな要素が加わってくるのです。飛び出すかもしれないキーパーとの連携、味方DFとの連携、そしてオフサイドトラップをしかけるか否か、このように、いろんなことをDFに考えさえ、そしてミスを引き起こすのもサイドからのボールです。

世界の強豪チームは、強烈なサイド攻撃を持っています。
まずはマドリー、フィーゴ、ジダンの個人技だけでも十分に突破できるのに、後ろからミチェル・サルガド、ロベルト・カルロスが猛然と上がってきます。
お気に入りマンUにはご存知ベッカムにギグス。
最近よく取り上げていますベティスにはこれまたワールドクラスのサイドアタッカーであるホアキンとデニウソンが両サイドから猛然と襲い掛かります。
さらに、アーセナルには復帰目前のピレスに、今やアーセナルには欠かせない存在となったリュングベリ、そしてヴィルトールまでいます。
バルセロナには、こちらも今は出ていませんが、2、3人は軽く相手にできる左サイドのライン際の仕事人オーフェルマルス、右サイドにはスペインに帰ってきた右サイドの達人メンディエタ。
昨年チャンピオンズリーグで破竹の快進撃を続けたレヴァークーゼンでは、左ゼ・ロベルト、右シュナイダーがこれまた両サイドから猛然と攻めかかりました。

このように、チャンピオンズリーグ優勝を狙えるようなチームにはそれぞれワールドクラスのサイドアタッカーがいます。
そして、フィーゴがいい例ですが、味方は彼が1対1で必ず勝つと信じてゴール前に詰めてきます。フィーゴがサイドでの勝負に勝っていいクロスを上げてくれると信じられるからこそ、前線の2人はもちろんのこと、逆サイドのジダン、そしてカンビアッソあたりまでもがゴール前に雪崩れ込んで来れるのです。これは、フィーゴが1対1ではまず勝つということが前提になっています。
そして、サイドからの攻撃は実際に点が入るかどうかは別として、点が入りそうな“予感”は十二分に感じさせてくれます。先ほど書いたように、サイドからの攻撃に対してはDFはすることが多いため、何が起こるかわからないのです。正面からの攻撃にはハイボールは跳ね返せばいいですし、ドリブルでもワールドクラスのドリブラーでさえ今や正面突破は難しいでしょう。そして、DFラインの前でパスをいくら回されたところで怖くもなんともありません。

このように、サイド攻撃は圧倒的な個人技がないチームにとって、セットプレー以外で唯一といっていいほど得点に結びつくチャンスなんですが、昨日の日本は先ほどの、“怖くもなんともない”攻撃でした。パスは確かに回ります。しかし、それだけでした。

昨日の日本のフォーメーションは、わかりやすくしてしまえば4-2-2-2でしたが、同じフォーメーションなのはマドリーです。しかしこれが可能なのは、中盤の前2人フィーゴにジダンが、1人なら8割方、2人を相手にしても半分くらいの確率で勝てる圧倒的な突破力をもっているからであって、同じことを俊輔と中田に求めるには無理があります。彼等ももちろん日本の中ではずば抜けた才能の持ち主ですが、タイプの問題であって、サイドを個人で突破できるタイプではありません、特に俊輔はそうです。

残念ながら日本には世界に通用するサイドアタッカーは今のところいませんが、唯一その可能性を感じさせるのが三都主です。彼を使わない手はありません。
4バックなら4-2-3-1でダブルボランチに稲本、小野、3のところは右から中田、俊輔、三都主で、中田はFWに近い形でプレーをさせ、そのスペースはボランチがカバー、三都主はボールを持ったらまずは縦勝負、相手のレベルが上がっても5割くらいの確率で勝負になるでしょう。
そして、俊輔にはトップ下で自由にプレーをさせ、彼が前を向いたときには、高原、中田、三都主と、少なくとも3つの選択肢ができるようにするのです。

3バックなら3-5-2で、ダブルボランチは同じく稲本、小野。そしてトップ下は同じく俊輔で、サイドハーフは右市川、左三都主。2トップは高原と中田。今の日本には、悲しいかな高原以外に中田に勝るFWはいません。

このように、俊輔をトップ下のプレーに専念させ、三都主に左から果敢に1対1を仕掛けさせ、中田にはもっとシュートを打ってもらう、これが今の日本が得点を取るためには最善の策ではないかと思います。

そして、このチームにあって最重要人物は中田でも、小野でも、俊輔でもなく、間違いなく高原。1対1で勝てるFWがいないチームは勝てません。日本で唯一1対1で勝負を仕掛けていけるFWは高原です。アルゼンチンに行って、「FWは点を取らなければ何の価値もない」という当たり前の真実を身をもって体験してから、人が変わったように強引なまでに点を取りに行くようになった高原。これこそが、これまでの日本のFWに一番欠けていたものでした。
柳沢は「点を取るだけがFWの仕事ではない」と公言していますが、これは何百点も取っているストライカーが初めて口に出していい言葉であって、たいして点も取っていないのにそんなことを言っているようでは彼はそこまででしょう。
現に、W杯前のイタリアとの親善試合の頃は日本のエースは柳沢で決まりといったムードでしたが、今や高原と柳沢の間には歴然とした差があるように思えます。技術は柳沢の方があるかもしれませんが、相手にとって“怖い”のは圧倒的に高原です。

そういう意味で、昨日の高原にはもう少し強引さが欲しかった。確かに中盤がボールを回すことに終始してしまったため、彼が個人で勝負するような局面がなかなかなかったのも事実ですが、彼には、“黄金のカルテット”などと騒いでいるマスコミを黙らせ、スポーツ面の1面に“高原体ごと押し込む!”という見出しをつけさせるくらい、もっともっとわがままになってもらいたいです。

あと、一つ気になっているのは、ジーコが「練習のための召集はしない」と言っている点。先ほど書いたサイド攻撃の精度を上げるにはこのメンバーでの反復練習しかありません。ジャマイカだったからこそ個人技でなんとかなりましたが、相手のレベルが上がった時も、同じように練習もたいしてせず選手に任せるんでしょうか。それでは結果は見えています。
中田や俊輔が個人技で勝てない相手などざらにいます。そういう相手と向き合った時、対抗できるのは反復練習に基づいたチームプレーでのサイド攻撃しかありません。絶好調時のマンUを見ているとよくわかりますが、ベッカムやギグスがサイドでボールを持ったとき、前線の2人、そしてスコールズやキーンやバット、5、6人が連動して見事としかいいようがない動きをしています。これは特に中盤の連中は若い頃からずっと一緒にやってきたのが大きいですが、何千回、何万回と繰り返されて体に染み付いて動きだからこそ。そういう意味で、練習のための召集はしないと言っているジーコには多いに疑問です。
あのブラジルが予選で苦戦したのは、選手がみんなヨーロッパで活躍していて、チームとして練習する時間があまりにも短かったことが原因と言われています。彼等にはそれを補って余りある個人技があったわけですが、それがない日本に同じことはできません。

最後に、初戦、そしてチームとしての練習不足、俊輔を筆頭に欧州組のコンディション不足と、チームとしてのプレーがいまいちだったのは仕方ない面もありますが、個人個人にゴールに対する執念が感じられなかったのが一番残念でした。相変わらずペナルティエリアに入ってもパスを回しますが、なんで打たないんでしょうか・・・。親善試合だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが、年内はこれを含めて2試合しかないわけですし、もっと気持ちを前面に出した試合を見せてほしかったです。

 

TB(0) CM(0) EDIT

2002.10.09

No.51 世界最高峰の戦い

今回の話題は、ついにやってきた大注目の試合、第2節の残り47分ベティスvsマドリー。

残りをLIVEで放送する前に、まずは前半をVTRで放送しましたが、これについてはすでに結果もわかっていることなので長々とは書きませんが、一つだけ触れたいのは、当ブログでもFKが必見と紹介しましたマルコス・アスンソンがまたまた魅せてくれた必殺技について。

彼の必殺技は、言わずと知れたFK。「フォルハ・セカ」(ポルトガル語で“枯れ葉のように舞う”という意味)と呼ばれる魔球です。

しかし、今回の必殺技は「フォルハ・セカ」ではありません。右サイドから上がったセンタリングに飛び込んだアスンソン、体は前に投げ出しながらヒールでひっかけてのシュート、その名も「スコーピオン」。見た目がさそりに似ていることから命名されたというそのままの名前ですが、十分に“必殺技”と呼べるもの。「スカイラブ・ハリケーン」とまではいきませんが、十分に漫画レベルなアクロバティックな技。

繊細なボールタッチ、ワンタッチでの味方へのパスの供給、そして体を張った守備と、基本的なプレーでも最高級のレベルのアスンソンですが、FKといいこういうアクロバティックなプレーといい、ほんとに最高に楽しませてくれる選手です。何らかの形でこの試合を見ることのできる方は、ぜひ「スコーピオン」ご覧になってみてください。
「スコーピオン」については金子さんが紹介してくださっていましたが、そこですかさず「さそりといえば長州力」とおっしゃった倉敷さんはさすがでした(笑)

そして、いよいよリアルタイムでの残り時間。試合に入る前に、いろんな意味でおいおいっていうことがいくつか。
まずは、前回と審判が違うということ。前半と後半で審判が違うなんてことがあっていいわけがありませんが、前回の審判はどうやら怪我をしていてどうしようもないようです。
そして、ピッチの上にはロナウドが…。前回の時にはベンチにすら入っていなかったわけで、明らかに反則のように思われますが、スペインはここらへんはいい加減なようで何の問題もないようです(笑)

いよいよレフリーボールで試合再開。
いきなり、ベティスがゴール前やや距離があるところでFKのチャンス。キッカーはもちろんマルコス・アスンソン。アスンソン、直接狙うと見せかけて一端グラウンダーで前線の味方にパス、そして味方が優しくリターンしたところを強烈なシュート!惜しくも右に外れました。

しかし、マドリーも負けていません。直後に一気に攻め込むとジダンがフリーでこれまた強烈なシュート!
しかし、これはベティスの守護神プラッツがアンビリーバボーなセーブでわずかに手に当て、ボールはバーを直撃。

あっという間に2分が経過し、前半は終了。たった2分にも関わらずお互いに決定機を作ってしまいました。早くも最高の試合になる予感は十分。
何しろ、47分しか試合時間がないわけで、体力のことを考えなくていいからか、お互いに普段と勢いがまったく違います。プレスのかけ方、ボールへのアタックの勢い、こんなの90分やったら体がいくつあっても足りないというレベルの動きをお互いにやるわけですから、見ているほうとしてはこれほど楽しい試合はありません。

そのままハーフタイムを取ることなく、すぐにサイドを入れ替えて後半がスタート。
後半立ち上がりは、マドリーが猛攻。ベティスは相変わらず前線から素晴らしいプレッシャーをかけるものの、マドリーのテクニックの方がわずかに上回り、並みのチームならあっという間にボールを奪われそうなプレッシャーにも関わらず、余裕とまではいかないものの普通にボールを回してしまいます。

後半6分、ゴール前でベティスDFが重なってしまったところをラウールが難なく決めてマドリーが同点に追いつきました。
その後、プラッツが判断ミスで飛び出してしまったところをロナウドが浮かして無人のゴールにシュートしましたが、これは惜しくも右に外れてしまいました。

しかし、マドリーが押していたのも後半の最初の10分くらいで、凄まじかったのはここからでした。
なんと、マドリーが自陣から出られないのです。あのマドリーが自陣に釘付けで、完全にサンドバック状態。

イエロを中心とした最終ラインが体を張って守っていたため決定的なチャンスをたくさん与えていたというわけではありませんが、跳ね返すだけで精一杯で、跳ね返してもすぐベティスの鬼のような前線からのプレスの前に、こぼれ球をことごとく奪われて結局相手陣に入れないのです。

マドリーの方が調子が悪いとか、決してそんなことはありません。フィーゴを欠き右サイドの攻撃が機能していなかったことを除けばマドリーの出来も素晴らしいものでした。ほとんどダイレクト、遅くてもワンタッチ、ツータッチで回す見事としかいいようがないパスワーク、そして局面局面でも最高レベルの個人技、世界最強の名に恥じないプレーをしています。

そのマドリー相手に互角の打ち合いをするだけでも凄いことなのに、敵陣に釘付けにしてしまうベティスは紛れもなく本物です。
守備陣だけは不安で、さすがにジダン、ロナウド、ラウールあたりにワンタッチでつながれると冷やりとさせられるものがありましたが、それもたまにの話で、後半15分あたりからは圧倒的なベティスのペース。
それでも、それだけ押されながらも無失点に抑えるマドリーもさすがです。

そして、今シーズンこれまで無敵を誇っていたホアキンがついに止まりました。この前ホアキンvsロベルト・カルロスが最注目と書きましたが、今日に関して言えばロベルト・カルロスの完勝でしょう。それでも、DF面でホアキンに縦への突破を許さなかったという意味での勝利であり、彼自身がホアキンを止めるのに忙しくていつものような果敢なオーバーラップが影を潜めてしまったという意味では、ホアキンも完敗というわけでもありません。ただ、局面でのウイングホアキンvsサイドバックロベルト・カルロスという対決という点ではロベカル完勝でした。

しかし、ベティスも一方的に攻めながらも決定機はなかなか作れず、そんな中でも惜しかったのは後半30分くらいに、アルフォンソがゴール前での素晴らしい切り返しから放ったシュート、これはイエロの体を張った守備の前に惜しくも右に外れました。

結果は、1-1のドロー。それにしても、普通最初飛ばしてもどこかでペースが落ち着くものなんですが、両チームとも47分間アクセル全開で壮絶な闘い。解説の金子さんは、「このレベルのチームが45分間でやるからこそ見れるスペシャルな試合」とおっしゃっていましたが、めったに見れないものを見せてもらいました。

90分の試合ではあのペースではとてもじゃないけどもたないので、45分だからこそお互いにあのペースで走り続けられたという試合。ワールドカップ決勝どころか、チャンピオンズリーグファイナルよりもレベルは高かったでしょう。

守備偏重の時代を経て、攻撃サッカーへと世界の潮流が変わっているこの時期において、ロナウドまで加え世界最強の攻撃陣を誇るマドリーと、あのバルセロナを3-0で一蹴してしまったこちらも超攻撃型のベティス。世界最高峰の超攻撃的サッカーの応酬でした。

間違いなく今シーズンのこれまでのベストゲーム。シーズンが終わってもベストゲームかもしれません。というより、今シーズンはおろか近年のベストゲームでしょう。

ちなみに、この試合のボール支配率はベティス56%、マドリー44%。マドリーに44%しかボールを持たせないチームが、世界にあと何チームあるでしょうか…。ベティス本物です。

 

TB(0) CM(0) EDIT
 | BLOGTOP |  NEXT